俳優沼田曜一さん(1924~2006)をご存じだろうか。ホラー映画「リング」などで不気味な役を演じる一方、“現代の語り部”と称された人物だ。生誕100年を迎える19日から、ゆかりの地、湯原温泉ミュージアム(岡山県真庭市湯原温泉)にその生きざまを紹介する常設展示コーナーがお目見えする。
本名は美甘正晴。大阪府生まれだが、祖父がいた旧湯原村に本籍地を置いた。戦後映画界に入り、戦争映画「日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声」で注目されて以降は多くの作品で悪役を演じた。旅先で知った民話に興味を持ち、1970年代からは全国で民話を語り聞かせる公演活動に精を出した。
湯原地域では旧町職員だった浜子尊行さん(74)が手紙を出したのをきっかけに83、88年、地元公演が実現。昨年開かれた沼田さんを顕彰する「生き様展」が好評で、生誕100年を機に湯原観光協会がミュージアム2階に展示コーナーを新設することにした。
出演作品の年表、ポスター、出演作のワンシーンや語り公演の写真、手記などの資料約50点を展示する。メインを飾るのは、原爆の悲劇を伝える広島の民話を沼田さんが朗読用に再構築した「おこりじぞう」の映像上映。朗読を基に生まれた絵本をスライド上映しながら、力強い独自の語りを流す。
監修する浜子さんは「民話の世界を広げ、戦争の悲惨さも訴えた沼田さんの生きざまを大勢の人に知ってもらいたい」と期待する。
午前10時~午後6時(入館は同5時まで)。一般200円、中学生以下無料。火曜休館。同ミュージアム(0867―62―2526)。