「星空保護区」の山の上に港? 保健師として長年福祉に関わってきた母とデザイナーの娘が古民家カフェを開いた理由

山陽新聞社 山陽新聞社

 人と物と文化が出会う山の上の港に―。「星空保護区」に認定されている岡山県井原市美星町地区に築125年の古民家を改装したカフェがある。長年保健師として福祉に関わってきた高尾茂子さん(67)と長女でデザイン業の栞さん(34)が切り盛りする「PORT(ポート) THREE(スリー)」(同市美星町三山)。それぞれの経験を持ち寄ったくつろぎの空間で客をもてなしている。

 高い天井に堂々とした太い梁(はり)や柱。中央には同県津山市産山桜の板をつなげた長さ3メートルの大きなテーブルが据えられている。小上がりの座板や外壁の腰板には古民家の蔵に長年保管されていた松材を使用。落ち着いた雰囲気の中で、訪れた人たちがゆったりと語らう。

 店をデザインした栞さんが「古いものや地元のものを生かしながら、洗練された居心地の良さにこだわった」と教えてくれた。

 茂子さんは介護保険制度が始まる前から30年にわたり福祉の第一線で働き、さらに関西福祉大と吉備国際大で計13年間、後進を指導した。「人がその人らしく幸せに生きていくとは何か」を考え続ける中で「どんな人でも来られる居場所づくり」が長年の夢になった。

 昨年3月の定年退職を機に、夫の芳男さん(73)の生家(木造平屋120平方メートル)を改修してカフェを開くことに。カフェの仕事の経験がある栞さん、津山市阿波地区で地域おこし協力隊を務めていた栞さんの夫も加わることになった。

 家族ぐるみで描いていた構想はしかし、突然変更を余儀なくされる。協力隊の任期終了後、カフェをメインで運営しながら地域で新しい活動を始めようとしていた栞さんの夫・光昭さんが昨年11月末、くも膜下出血のため42歳で急逝したためだ。

 週3、4回営業し、窯焼きピザを売りにするスタイルを目指していたが、スイーツとドリンクを土、日曜のみ提供する形に変えた。周囲の助けも得ながら今年3月末、オープンにこぎつけた。接客や管理は茂子さん、スコーンやケーキ、エスプレッソなどは栞さんが担う。

 「ありのままの田舎の暮らしの傍らで老若男女が触れ合い、地域の文化が育まれていく場にしたい」と茂子さん。栞さんも「地域内外から面白い人が集まり、地元に新しい風を吹かせる場所にしたい」と話す。

 今後は地域を盛り上げるイベントも開いていく予定。ゆっくりと“にぎわう港”に育てていくつもりだ。

 営業は土、日曜(不定休あり)の午前11時~午後5時。問い合わせや詳細はインスタグラム(@port.three)。

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