独居高齢者が死亡
2017年4月、関東地方某所で、高齢の一人暮らしの女性が部屋で孤独死した。愛護団体NPO法人ねこけん(以下、ねこけん)の代表はメンバーと共に取り残された4匹の猫のレスキューに向かった。女性の姪から依頼があったという。
「亡くなられた方は大の動物好きで、以前より捨て犬や飼育放棄の犬猫を引き取っては、天寿を全うするまで慈しみ大切な家族として暮らして来られました。お独りで亡くなられ、さぞかし残された猫達の事が気がかりだったことでしょう。」
部屋が荒れているかもしれない。そう考えた代表は、部屋の掃除のことも考えて、数人のメンバーに呼びかけた。
「相当な覚悟をして室内へ入ったのですが、既に業者さんが一度整理に入られていたので、部屋は比較的片付いていました。」
室内には、歴代の飼い猫と犬の写真やポスターであふれ、動物への愛情の強い人だったことがよく分かった。
「飼育の記録」が途切れないように
亡くなられた方が、最初に保護した犬から、最後に一緒に暮らしていた4匹の猫まで、全員のことを綴っていた飼育の記録もあった。心に伝わって来る愛情の記録。
代表はメンバーに「この方が飼っていた犬や猫達は、とても幸せだったね。亡くなられた方に、安心して今までの子達と天国で暮らしてもらうために、4匹の猫達を早く捕まえよう!」と言った。捕物帳が始まるかと思いきや、4匹の猫たちはあっさり保護できた。3匹の猫は人馴れしておらず、1匹は慣れていた。
ただ、問題はそこからだった。
「この子の不妊去勢手術を終えた後、どうしたらよいか…亡くなられた方のお身内も、ご親戚も、姪御さんも、受け入れる事ができないという事情がありました。姪御さんが、一日おきに猫のお世話に通っておられましたが、部屋を明け渡すのも、大家さんのご厚意で伸ばして頂いている状態でした。遅くとも5月の頭には引き払わなければならなかったのです。」
しかし、ねこけんの保護場所も満杯で、更に保護の順番を待っている人も多数いた。メンバーたちはレスキューに入ることが決まった時に、代表が猫を現場に置いておかないことが分かっていた。メンバーのATさんが3匹、シェルターで1匹預かることになったという。
大切に大切に育てられていた猫たち。飼い主である家族を失い、大好きな人が冷たくなっていく姿を目の当たりにしてきたのだろう。
「ねえ、起きて抱っこして。優しく名前を呼んで。いつもと同じように…4匹の猫達は、毎日毎日そう願いながら動かない飼い主さんに寄り添い過ごしていたのでしょう。この子達は、大切な家族を失い、寂しく、不安の中、生きていました。」
女性は自分の死後、猫たちの行き先をどうするのか決めていなかった。ある程度の年齢になったら、人間の方が先に逝くことがあるかもしれない。飼わないという選択肢もあるが、もし飼うのであればペットが生きていけるよう準備を整えておく必要がある。
ねこけんは、愛情のこもった「飼育の記録」が途切れる事がないように、4匹の猫の新たな猫生を育むことにした。