大好きな飼い主と無念の別れ 閉ざされていた心を開いた「あえて構わない」という優しさ 預かり家庭で奇跡が起きた

松田 義人 松田 義人

8歳になるまで一人暮らしの女性に飼育されていたトイプードルの血が入るオスのミックス犬・くう。女性が実家の事情で犬を世話することができなくなり、くうは保護団体アイドッグ・レスキュー隊に引き取られることになりました。

突然飼い主と別れなければならなくなったくうは、預かりボランティアの家庭に迎えられても、なかなか心を開くことができませんでした。新しい環境に強い警戒心を抱き、初めて会う預かりボランティアさんに対しても威嚇するばかり。目が合うと「ウゥッ!」と咽喉を鳴らし、何度も威嚇してきました。

「あえて構わない」という戦略

預かりボランティアさんは、飼い主と離れ不安を抱えるくうの気持ちを理解し、「あえて構わない」という戦略を取りました。くうはその様子を遠巻きに観察しながら、少しずつ近づいてくるようになりました。そして、いつの間にか預かりボランティアさんが座っているソファの横に、静かに腰を下ろすようになりました。

ボランティアさんの表情をつぶさに確認し、「この人は大丈夫かな」と様子をうかがうくう。「くうがまさに一歩を踏み出そうとしている」と感じたボランティアさんが目を合わせると再び「ウゥッ!」と威嚇。しかし、「本当は甘えたいが、まだ信用できない」というくうの感情が痛々しくも伝わってきました。

預かり家庭での「駆け引き」が続くうちに、やがてくうは心を開き始めました。最初の警戒心はどこへやら、今では預かりボランティアさんの膝の上で「なでて」と甘えるようにまでなったのです。外出から戻るとうれしさのあまり、尻尾をブンブン振りながら突進してしまうことも増えました。

散歩先で初めて会う人間や他の犬に対しては、依然として警戒心を示し、ワンワンと吠えたり、距離を置く姿勢も見せます。また、くうは大きな音も苦手で、風が強い日には「ウゥッ!」と威嚇してしまうことがありました。ビビリで人見知りな性格はまだ健在です。

奇跡の変化

くうが預かり家庭に来て2カ月が経過したころ、ある変化がありました。初めての来客があった時、ボランティアさんは「くうが騒ぐのではないか」と不安を感じていました。ところが、くうは初めて見る人に対してもすぐに吠えを止め、その人の足元をクンクンと嗅ぎ、ごあいさつする様子を見せました。最終的には、その来客に「なでて」とまで要求するほどになっていました。

くうがここまで心を開けるようになったのは、預かりボランティアさんの献身的なサポートの賜物でしょう。くうがいつか幸せな第二の犬生をつかむことを願わずにはいられません。

保護団体アイドッグ・レスキュー隊
https://aidog.jpn.com/

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