鹿児島県内のとある場所に、キャリーが置いてありました。そこには、こんな張り紙が…。
「本当に申し訳ありません。
どうかよろしくお願いします。
メス 6歳
避妊済 チップなし」
キャリーの中を見ると1匹のキジ三毛猫が入っていました。猫の遺棄です。地元で保護活動をしているボランティアが発見し、同じ保護活動仲間の「猫日向 親分」さん(@nekohinata_oyabin)のところに連絡したといいます。
「私が唯一、一緒に活動しているボランティアさんから連絡がありました。私がレスキューした子を譲渡会に連れて行く譲渡担当の方です。ある動物関係のお店の前にキャリーごと猫が置き去りになっていたとのこと。時間は不明ですが、おそらくお店の閉まっている夜中から朝方にかけて置かれたものと思われます。私に連絡が来た時点でお店の方が警察に届けていて、警察に猫は移動していました。ただ、張り紙があったため、落とし物という判断ではなく“遺棄”ということで仲間のボランティアに引き渡ししていただきました」
自宅にお迎えした当初、全く触れられる状態ではなかった猫だったが…
そのまま猫は病院へ。獣医が診たところ、健康状態は問題ありませんでした。ワクチン接種やウィルスチェックなどを済ませて病院に1泊した後、親分さんが自宅へ連れて帰りました。
「病院に1泊入院をさせて迎えに行ったんですが、猫はぶち切れていました。ずっとうなっているのと手が出るため、全く触れられる状態ではなかったです。なので、病院では洗濯網に入れてキャリーに移して帰宅する形を取りました。店の前に置いてあった時間も長かっただろうし、キャリーにずっと入ったままで助けられたと思ったらある場所へ行き、病院に連れて行かれ、いろいろと検査をさせられうちにくる…“イベント”目白押しで、猫も怒るはずです。
こういう場合、普通はかわいそうだとか怒りもあるのかもしれませんが。私は全くありません。落ちてたからもらっただけ。『飼えなくなったんか。んじゃ、いただき♡』と思いました。怒るのは疲れるし、そんな怒りで支配されるよりも、この子に向き合うパワーにしたい。それだけです」
親分さんの自宅に猫をお迎えして数日経過。当初は顔を見るだけでうなっていましたが、ご飯を食べている時は触らせてくれるように。猫は少しずつ親分さんに心を許し始めてきたといいます。
「とても愛されていた子だろうなと感じます。6歳にしては見た目も若いですし、体型もちょうど良く毛並みも良いです。ただ他の猫や知らない人に対しては時間がかかるタイプのように感じました。おそらくですが、本来は人懐っこい子だと思います」
保護ボランティア「遺棄は犯罪。でも飼い主は本当は一緒にいたかったと信じたい」
そんな少し慎重派の猫は、「ざます」ちゃんと名付けられました。張り紙とともに置き去りになったざますちゃんとの出会い。親分さんはこう感じたそうです。
「遺棄は本来なら悪です。犯罪です。ただ、遺棄しなければならなかった理由はそれぞれにあると思います。遺棄された場所、そこに願いを託した張り紙があった子に関しては、苦渋の決断なはず。否定的な意見も多いですが、実際に自分がその立場になったらどうするのかなんて分かりません。ざますの飼い主さんは本当は一緒にいたかった。そう信じたいです。そうであれば、自分の出した決断を飼い主さんは一生背負っていくことになりますし、苦しむと思います。それで充分だと思うので、私は落ちていたからもらった、ということにしました。
おそらくですが、今の時期はどこに相談しても引き取りはしてくれないかと。困った時に頼れる場所がない世の中に問題があると思っています。人の目につくところに、そして張り紙を貼って置く。遺棄ですが、そこには飼い主さんのざますへの最後の愛があると私は感じました」
今後、ざますちゃんの様子を見ながら里親募集をする予定です。また親分さんは個人で猫の保護活動をしているボランティア。主に保健所からの保護や、他のボランティアが引き取れない時にレスキューをしているとのこと。今は負傷の猫を保護することが多いとか。おうちにお迎えした「ふらぼぁ」ちゃんは、保護時にカラスに襲われて下あごが骨折しご飯を自力で食べられず、親分さんがシリンジでご飯を食べさせているそうです。
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キャリーごと遺棄されたざますちゃんについて「福ねこハウス」さんがInstagramに投稿し、たくさんのコメントが寄せられるなど話題になりました。
「この炎天下に置き去りなんて… 捨てられていい命なんて無いですよね」
「貰うわ♡最高!!ざます、世界一幸せになるんだぞ!!」
「ざますちゃん、これからの猫生は幸せ満開まちがいなし」
「人間って最低な生き物だ!!でも、家族に迎えてくれる人も居て少し安心」
「良い方に拾われて良かった」