本日5月25日に第3回が放送される「土曜ドラマ」『パーセント』(NHK総合)は、「これまでに観たことのないバリアフリードラマ」として注目を集めている。
ローカルテレビ局「Pテレ」が打ち出した「多様性月間」の一環で新作ドラマのプロデューサーに抜擢され、悩み、もがきながら奮闘する若手局員・吉澤未来(伊藤万理華)の成長を描く本作。未来は、車椅子に乗った高校生・宮島ハル(和合由依)と出会い、彼女の存在感に惚れこんで、ドラマへの主演を熱望する。はじめは「障害を利用されるのは嫌や」と拒否していたハルだったが、自らが所属する「劇団S」の俳優仲間もドラマに起用することを条件に、出演を決意する。
ハル役には、東京2020パラリンピック開会式で「片翼の小さな飛行機」を演じた和合由依を抜擢。ハルをはじめ、障害のある登場人物は当事者である俳優が演じている。彼らは全てオーディションで選ばれたのだという。
「未来役にはこの人しかいない」と、プロデューサーから主演をオファーされた伊藤万理華と、オーディションでハル役を勝ち取った和合由依。2人の俳優の魅力を、本作を企画したプロデューサーの南野彩子さんと、制作統括の櫻井賢さんに語ってもらった。
「〇〇愛」が画面の外まであふれてくる。俳優・伊藤万理華の魅力
主人公・未来役については、南野プロデューサーが伊藤万理華の演技に惚れこみ、直々にオファーしたという。
プロデューサー・南野彩子さん(以降、南野) 私は、『お耳に合いましたら。』(テレビ東京/2021)や映画『サマーフィルムにのって』(2021)で伊藤万理華さんのお芝居を拝見して、「好きなもの」を語っているときのお芝居が本当に素敵な俳優さんだと思いました。「好き」の対象への愛情や熱量が、画面やスクリーンの外まであふれてくるようで。『パーセント』の未来はなんでも一生懸命に頑張る人で、「勢い」と「愛情」が大事なキャラクター。伊藤さんに演じていただけたなら、未来の思いが「生身の人間の感情」として伝わるのではないかと、オファーをさせていただきました。
制作統括・櫻井賢さん(以降、櫻井) 僕がまず伊藤さんに対して抱いたのは、「嘘のつけない俳優さん」という印象でした。伊藤さんはテクニックを超えたところで、全身全霊で、未来という役を「生きて」くださいました。だからこそ、今を生きる未来と同世代の人たちの「心の機微」みたいなものが画面からとても強く伝わって、観る人が心をパッと解放させられるような映像になっているのだと思います。
「いったい人生何回目なの?」和合由依の圧倒的な存在感
一方、ハル役をオーディションで勝ち取った和合由依は、今回が演技初挑戦となる。ハルや「劇団S」のメンバーは全て、オーディションを経て脚本の大池容子さんがスタッフとともにイメージを膨らませて造形し、個性あふれる登場人物が誕生した。
南野 和合由依さんが東京パラリンピックの開会式に出演されたとき、私はいち視聴者として観ていて、漠然とですが、「いい俳優さんになりそう…!」と思ったんです。オーディションに和合さんがいらしたとき、自己紹介から心を掴まれてしまいました。私を含めスタッフも、脚本の大池さんも「全員が和合由依に惹かれていた」という状態でした。和合さんが「その場にいる人たちをなんとか楽しませよう」と話してくださるなかで、チャーミングな人間性が伝わってきましたし、お芝居にもとても惹かれました。ずっと見ていられるし、とにかく目が離せない。第1回で未来がハルに出会ったときの衝撃と同じような感じで、私も和合さんを見て「この人とドラマを作りたい!」と思いました。
櫻井 圧倒的な力強さがありました。僕はいろんなところで和合さんについて語るときに言っているのですが、「いったい人生何回目なの?」という印象でした。周囲への気遣いもありながら、壁をポンと乗り越えてきてくれるし、人への接し方が素晴らしい。ハルという役を演じるにあたっては、関西弁も覚えてもらわなければならなかったのですが、センスと吸収力が抜群で。「すごい人に出会ってしまった」という思いです。
第3回からはいよいよドラマの撮影が始まり、障害のある俳優を演者として迎えた現場で起こる様々なアクシデントや、スタッフと俳優の葛藤が描かれる。伊藤と和合の熱演にも注目しながら、物語の行末を見守りたい。
◇ ◇
「土曜ドラマ」『パーセント』
〈全4回〉
毎週土曜日 よる10時~ NHK総合
毎週土曜日 午前9時25分~ BSP4K
〈再放送〉翌週水曜日 午前0時35分~ NHK総合