ラーメンマン、バッファローマン…その犠牲は未来につながる! 漫画「キン肉マン」超人たちの美しき敗北劇

海川 まこと 海川 まこと

「負けの美学」「判官びいき」など、昔から日本では勝負に負けた側に光を当てる言葉があります。漫画『キン肉マン』(作:キン肉マン)でも、敗北が明らかになったとしてもあきらめずに最後まで戦った超人たちがいます。

特に「負けの美学」が感じられた戦いといえば、コミックス8巻「魔性のリング!! の巻」より描かれたラーメンマン対ウォーズマンの試合でしょう。ファイティングコンピューターと呼ばれるウォーズマンは、頭の中にある技の攻略法を使ってラーメンマンの攻撃を封じます。

攻撃を封じられたラーメンマンは、ウォーズマンに右腕や左足をへし折られ、ダウンを奪われてしまうのです。そして勝つことは難しいと考えたラーメンマンは、なんとウォーズマンを道連れにしようと立ち上がります。しかし奮戦空しく、ウォーズマンのスクリュードライバーの前に敗北を喫するのでした。

読者からは「ボロボロになってもウォーズマンに立ち向かったラーメンマンに感動した」「次戦でウォーズマンと戦うキン肉マンのために援護射撃役に徹したラーメンマンを尊敬しています」といった声があがっていました。

この試合でラーメンマンを倒したウォーズマンも、後に「負けの美学」を見せた超人のひとりです。コミックス11巻「超人強度!! の巻」で、7人の悪魔超人のリーダーであるバッファローマンと対戦したウォーズマン。彼は次々に技を繰り出しますが、自身の超人強度100万パワーを大きく上回る1000万パワーを保持するバッファローマンには通用しません。

最後の力を振り絞ったウォーズマンは、いつもは片手で使用しているベア・クローを両手に出し、1200万パワーの威力を持つスクリュードライバーを放ちます。この最後の大技は避けられてしまうものの、2本あるバッファローマンのロングホーンの1本を折ることに成功します。

その後、ウォーズマンはバッファローマンに敗北してしまいますが、この時にロングホーンを1本折ったことで、後の試合でキン肉マンは九死に一生を得ることになります。当時リアルタイムでコミックスを読んでいた筆者は「ウォーズマンの死は無駄ではなかった」と感動しました。

この「負けの美学」は、まるで連鎖するかのようにバッファローマンも見せてくれました。それは、コミックス16巻「不滅の魂!! の巻」で、新必殺技・キン肉ドライバーの特訓に行くキン肉マンに代わり、バッファローマンが悪魔将軍と戦った時のことです。

実は体を持っていないため痛みを感じることのない悪魔将軍は、バッファローマンがどれだけ技を繰り出してもダウンする気配がありません。逆に悪魔将軍の猛攻を受けて敗北したバッファローマンは、瀕死の重体となります。

しかも、その後キン肉マンと悪魔将軍の対戦時、一命をとりとめ回復したバッファローマンは、悪魔将軍を倒すために捨て身の行動をとります。体を持たない悪魔将軍にバッファローマンが自身の体を与えた結果、悪魔将軍は技を脱出するために体を柔らかくすることができなくなり、キン肉マンは必殺技であるキン肉ドライバーで悪魔将軍を倒すことができたのです。

バッファローマンの献身的な姿勢に「悪魔将軍の中に入ってキン肉ドライバーの犠牲になったバッファローマンに泣ける」「バッファローマンのおかげで2人の戦いは名勝負になった」などの声が読者からあがっていました。

ラーメンマンやウォーズマン、バッファローマンの戦い以外にも、『キン肉マン』では、後の勝利につながるような価値ある敗北が度々描かれています。2024年7月から放送されるアニメ新シリーズでも新たな「負けの美学」が描かれるのが楽しみです。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース