2024年に入り、京阪ホールディングスは九条への中之島線延伸の決定を見送る方針で固めていることが判明しました。中之島線は都心にある路線ながら、利用客数が少ないことでよく話題に取り上げられます。中之島線延伸が達成されなければ、このまま潰えてしまうのでしょうか。いえ、まだ新線「なにわ筋線」との接続が残っています。一体、どのような効果が期待できるのでしょうか。
大阪都心を走りながらガラガラな中之島線
中之島線は天満橋~中之島間約3キロの路線です。2008年に開業した若い路線で、中之島へのアクセスを確保するために敷設されました。しかし、中之島再開発の遅れなどにより、利用客数は低迷の一途をたどっています。
中之島線計4駅(なにわ橋駅・大江橋駅・渡辺橋駅・中之島駅)の1日あたり乗降人員(2022年)は計22000人しかありません。最も乗降人員が少ない駅はなにわ橋駅となり、約2300人という都心では考えられないような数値です。
九条延伸のメリットは
そんな中之島線ですが、起死回生になるかもしれない延伸計画があります。それが冒頭で述べた九条駅への延伸です。九条駅は中之島駅から南西方向に約2キロ地点にあり、大阪メトロ中央線・阪神なんば線が乗り入れます。
九条駅延伸は万博後の夢洲でのIR(統合型リゾート)計画を視野に入れています。大阪メトロ中央線は2025年1月に夢洲への延伸が決定済み。九条駅で中央線と接続することにより、京阪沿線・大阪都心から夢洲への足を確保するという狙いです。
しかし、京阪は採算性などから延伸可否の決定を見送ることに。大阪府とIR事業者が結んだ実施協定において条件が整わない場合に事業者側が違約金なしで撤退できる「解除権」の期限が2026年9月末に延長されたことも、今回の決定に影響を与えました。
中之島を拠点にビジネス&京都観光
中之島線にとって明るい話題といえば、新線「なにわ筋線」との接続です。「なにわ筋線」は大阪駅(うめきたエリア)とJR難波駅、南海新今宮駅を結ぶ路線で、2031年春の完成を目指して建設が進んでいます。「なにわ筋線」が完成すると、大阪・キタ~関西空港間の所要時間が短縮されます。中之島線とは中之島駅(仮称)で接続する予定です。
現在、京阪沿線から関西空港へのアクセスは決して快適とはいえません。鉄道ですと、天満橋駅から大阪メトロ谷町線・JR阪和線経由、北浜駅から大阪メトロ堺筋線・南海線経由などが考えられます。枚方市駅から前者ですと天王寺駅から特急「はるか」利用で約80分、後者は約90分を要します。
「なにわ筋線」は大阪~関西空港間を40分程度で結ぶ予定です。枚方市駅から中之島駅まで優等列車が運行するとし、両駅間の所要時間を30分程度と仮定すると、枚方市駅から関西空港駅まで70分程度といったところでしょうか。所要時間の短縮もさることながら、乗換え回数が1回(予定)で済みます。
また、「なにわ筋線」・中之島線経由により、京阪は関西空港から京都へ向かう訪日観光客を取り込めます。現状、訪日観光客が鉄道で関西空港から京都へ向かうには乗り換え不要なJR特急「はるか」一択です。
中之島ルートだと、いろいろな観光パターンが考えられます。現在、中之島では再開発が進み、2025年には高級ホテル「リーガロイヤルホテル(大阪)」が大規模改修を経てリニューアルオープンする予定です。
今年中には中之島未来医療国際拠点がオープン。また、中之島には国際会議場も有することから、平日は中之島周辺でビジネス、土日は京都観光といった関西空港・京都に直結する強みを活かした中之島滞在プランも考えられます。
また、関西空港から京阪沿線の伏見・宇治へもアクセスしやすくなります。伏見は日本酒、宇治はお茶の文化で有名なところ。京阪では両地域と連携して食文化を楽しむ観光「ガストロノミーツーリズム」の造成に努めるとしています。
また、京都府南部の八幡市には石清水八幡宮があり、歴史遺産を利用した観光開発計画があります。「なにわ筋線」・中之島線ルートの開発は新たな京都を知ってもらう重要なルートになることでしょう。
京阪沿線に限らず、関西私鉄沿線では人口減少が進むことが予想され、国内外の人々に沿線の魅力を伝えることが大切になります。今後の中之島線は多様な人々を京阪沿線へ導く重要なミッションが課せられることでしょう。これからのV字回復に期待したいものです。