エアコンの室外機の上に「濡れタオルをかけると節電になる」という噂をみなさん聞いたことはありますか。近年SNSで話題になっていたそうですが、ダイキン工業株式会社(大阪市北区)の検証によると、正しいとは言えないようです。
同社は「室外機に濡れタオル」など、最近話題になっていたり、誤解されたりしやすい4つの「エアコンの節電術」について、具体的な節電効果を検証するレポートを公開しました。
調査は、2023年7~8月の期間に1つの住宅を使用し実施されました。なお、天気や気温などの条件が近い複数の日に実施したもので、厳密な同条件での比較ではありません。調査結果はあくまで今回の条件に基づくものであり、住宅やエアコン、気候によって結果は変わるとしています。
【検証1:エアコン冷房の風量設定は「弱」と「自動」でどちらが節電?】
エアコン冷房の風量設定「弱(設定温度26℃)」と「自動(同27℃)」それぞれで、日中11時間(8:00~19:00)つけっぱなしにして消費電力量を計測し、1ヵ月あたりの電気料金の違いを調査しました。
その結果、消費電力量は風量「弱」が3.85kWh、「自動」が2.79kWhとなり、風量「自動」のほうが約3割少なく、1か月換算では、風量「自動」は「水平」と比べて電気代が「約990円」少なくなりました。
この理由として同社は、「風量『弱』にすると、室内機の中にある冷たくなった熱交換器を通過する空気の量が減り、部屋の中を涼しくするのに時間がかかるからです。そのため、風量『自動』に比べて風量『弱』のほうが、圧縮機(※3)の運転にかかる負荷が増加し、より多くの電気を使ってしまうことになります」と説明しています。
(※3)圧縮機:室外機の中にあるエアコンの心臓部とも言える部品。エアコンの消費電力の約8割は圧縮機で使われている。
【検証2:エアコン冷房の風向設定は「ななめ下」と「水平」でどちらが節電?】
エアコン冷房の風向設定「ななめ下(設定温度26℃)」と「水平(同27℃)」それぞれで、日中11時間(8:00~19:00)つけっぱなしにして消費電力量を計測し、1ヵ月あたりの電気料金の違いを調査しました。
その結果、消費電力量は「ななめ下」が3.76kWh、「水平」が2.77kWhで風向「水平」のほうが約3割少なく、1か月換算では風向「水平」は「ななめ下」と比べて電気代が「約930円」少なくなりました。
この理由として同社は、「風向を『ななめ下』にすると床付近に冷たい空気がたまる一方で、天井付近には暖気がたまります。一般的なエアコンは、高い位置にある室内機内部の温度センサーで室温を判断するため、天井に暖気がたまっていると、エアコンはさらに部屋を涼しくしようと必要以上に運転してしまいます。風向を『水平』にすると、冷たい風が天井付近から床方向に自然に下りていくので、余計な電力消費を抑えながら、部屋全体を涼しくすることができます」と説明しています。
【検証3:設定温度を「1℃下げる」のと風量設定を「強」にするのとではどちらが節電?】
エアコン冷房を使っていても暑く感じることがある真夏の日中(13時~15時)、設定温度を26℃から25℃へ1℃下げるのと、風量設定を「強(設定温度28℃」にするのとでは、どちらが節電になるのか、消費電力量を計測し電気料金の違いを調査しました。
その結果、消費電力量は設定温度を「1℃下げる」と1.13kWh、風量「強」にすると0.52kWhとなり、風量「強」は、設定温度を「1℃下げる」場合と比べて約半分になりました。
この理由として同社は、「設定温度を下げたとき、エアコンは室内の空気中からより多くの熱を集めるため、圧縮機の運転を強めます。一方、風量を『強』にすると室内機のファンの音が大きくなり、電気をたくさん使っているように感じますが、ファンが使う電力は、圧縮機が消費する電力と比べるとわずかです。人の体感温度は、室温だけでなく、湿度や気流によっても変化するため、室温を下げる代わりに風量を強くすることで体感温度が下がり、涼しく感じられます」と説明しています。
【検証4:室外機に濡れタオルは、「あり」と「なし」でどちらが節電?】
近年SNSで話題となっている 、エアコンの室外機の上に濡れタオルを設置すると節電になるという噂を検証しました。室外機の上の濡れタオル「あり(設定温度26℃」と「なし(同27℃)」それぞれで、日中11時間(8:00~19:00)つけっぱなしにして消費電力量を計測し、1ヵ月あたりの電気料金の違いを調査しました。
その結果、消費電力量は室外機の上の濡れタオル「あり」が3.87kWh、「なし」が2.77kWhで、濡れタオル「なし」のほうが約3割少なく、1カ月換算では、濡れタオル「なし」は「あり」と比べて電気代が「約1020円」少なくなりました。
この理由として同社は、「濡れタオルが室外機側面の吸込口や吹出口の一部に垂れ下がり、空気の通り道をふさいでしまったためと考えられます。エアコンは、室外機の吸込口や吹出口の空気の流れを妨げられると運転効率が落ち、その分余計に電力を使うため、室外機の上に置いたタオルが乾いて室外機側面に大きく垂れ下がると、吸込口や吹出口のより多くの範囲をふさいでしまい、さらに効率が低下してしまうので、注意が必要です」説明。
そのうえで、「室外機周辺の空気の温度や、室外機の側面や背面にある熱交換器の温度が下がれば、効率的な運転につながります。そのため、室外機に日陰を作ったり、室外機周辺に打ち水をしたりすると節電効果が期待できます」としています。
【番外編:夏の睡眠時のエアコンは、「切タイマー運転」と「つけっぱなし運転」どちらがおすすめ?】
夏場の睡眠時にエアコンを使う際のおすすめを「切タイマー運転(設定温度28度、22:00~2:00就寝後3時間でエアコンOFF)」と「朝までつけっぱなし運転(同28℃、22:00~朝まで)」とで暑さ指数(WBGT)の観点から調査しました。
なお、検証は横浜市にある鉄筋コンクリート造りのマンション(6階建て、築18年)の実生活空間・環境で実施されました。
その結果、「つけっぱなし運転」の場合、睡眠時の「暑さ指数(WBGT)」は一般的に危険性が少ないと言われる「23℃」ほどに抑えられる結果となりました。一方、「タイマー運転」の場合では、明け方には熱中症への警戒が必要とされる「25℃」近くにまで達しました。
この結果について同社は、「夜間の温度上昇は、夜中の目覚め、睡眠の質の低下にもつながる可能性もあることから注意が必要です。気温や湿度が高い日は、朝まで『つけっぱなし』運転の方が快適といえるでしょう」とコメントしています。
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調査を実施した同社は、「普段、エアコンを使う際に節電のつもりでしていることでも、逆効果になってしまう場合があります。また、エアコンの使用時間を無理に抑えると、熱中症リスクが高まることもあります。その日の気温や湿度、体調などに合わせて、節電にも配慮したエアコンの適切な使い方を意識してみましょう」と述べています。