山の上ホテルと学士会館 昭和の雰囲気を東京の名建築 実は滋賀県ゆかり

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 滋賀県ゆかりの建築家が手がけた東京の歴史ある建物が今年、相次ぎ休館する。いずれも経年による施設の老朽化が理由だが、首都圏を中心に長く親しまれてきた街のシンボル的存在だっただけに、関係者からは営業再開までの別れを惜しむ声が上がっている。

 東京・お茶の水の高台に建つ「山の上ホテル」は、連合国軍総司令部(GHQ)による戦後の接収を経て、1954年に創業した。周辺の神田神保町には出版社が集まり、池波正太郎や三島由紀夫ら多くの文豪が執筆で利用したことで知られる名ホテルだ。

 1937年に完成した建物は、滋賀県近江八幡市を拠点に活動した米国人建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計した。外観や内装には幾何学模様などを基調とした「アールデコ」の装飾が施され、ヴォーリズ建築の代表作の一つに数えられる。

 ホテルは老朽化への対応を検討するとして、2月から休館に入った。期間は「当面の間」で、再開時期は未定。最終日には別れを惜しむ人が訪れ、雄姿を写真に収めていた。

 近くにはヴォーリズが創業した医薬・化粧品メーカー、近江兄弟社(近江八幡市)が営業拠点を構えている。同社の一人は「食事や接待で利用したり、東日本大震災の際は一時避難させてもらったりしたので、寂しい」と思い出を話す。

 山の上ホテルと同じ千代田区では、国の有形文化財に登録されている学士会館も再開発計画に伴い年内いっぱいで営業を終了し、休館する予定だ。

 会館は1928年、京都大など旧7帝大の卒業生らが交流する場として整備され、現在は誰でもレストランなどを利用できる。開業時に建設された旧館は、帝国ホテル東京の新本館などを設計した滋賀県彦根市出身の建築家高橋貞太郎が担当。再開発では旧館は保存され、2029年度には新棟が完成する見通し。

 これに合わせ、京大の同窓会や教職員が会議などで利用する会館内の事務所も一時休館となる。会館側は「シンボリックな建物を後世につないでいきたい」としている。

 会館が立地する場所は、東京大と日本野球発祥の地とされるほか、付近の安中藩江戸屋敷で生まれた同志社の創立者・新島襄にちなむ生誕の地の記念碑も建つ。会館によると、記念碑も旧館と同じく保存される予定だ。

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