ウルトラマンが戦っていたのは…“改造されたゴジラ”だった? リサイクルされる「伝説の怪獣」たち 昭和の特撮、知られざる舞台裏

海川 まこと 海川 まこと

1966年に放送が開始された『ウルトラマン』は、その後もシリーズ化されて数々の名作が生まれています。2023年11月には『ウルトラマン』を生み出した円谷プロダクション(以下、円谷プロ)が、創立60周年を記念して「円谷映画祭2023」を開催。映画『シン・ウルトラマン』で企画・脚本を担当した庵野秀明氏が選んだ『ウルトラセブン』と『ウルトラマンタロウ』のエピソードが公開されました。

そんな『ウルトラマン』を見ていると、他の回や作品で見たことがある怪獣に出会うことがあります。本記事では、1度登場した、あるいは別の作品に登場した怪獣の再利用から生まれた怪獣3体を紹介します。

まず注目するのが『ウルトラマン』の第10話「謎の恐竜基地」に登場した恐竜ジラースです。ジラースは二階堂という教授が15年前にネス湖から持ち帰った生物で、ネス湖に似た環境の北山湖で大きく成長しました。ジラースにはエリマキトカゲのような大きな襟巻がついており、ウルトラマンと対峙した際にもぎとられた姿が、なんと東宝を代表する映画に登場するゴジラにそっくりなのです。

それもそのはずで、実際にジラースはゴジラの着ぐるみを改造して作られていました。襟巻を失ったジラースとウルトラマンが対峙するシーンは、まるでウルトラマン対ゴジラという夢の対決が実現したようでした。

続いて取り上げるのは、第11話「宇宙から来た暴れん坊」に登場した巨大怪獣ギャンゴ。ギャンゴは宇宙から落下してきた隕石が変化した怪獣で、持ち主が思い浮かべた物に変化するという特性をもつ隕石が悪用されて誕生しました。

そんなギャンゴは第1話「ウルトラ作戦第一号」に登場したベムラーを改造した怪獣なのです。

ベムラーとは、ウルトラマンによって宇宙の墓場に護送される途中に脱走した宇宙怪獣。前足が短いために格闘戦は苦手だが、口から吐く光線を操ってウルトラマンを苦しめました。このベムラーの腕や尻尾などを改造して再利用したのがギャンゴなのです。この事実に最初の放送で気づいた人はどれくらいいるでしょうか。

ちなみにベムラーとギャンゴの着ぐるみに入っているスーツアクターはいずれも荒垣輝雄氏でした。ベムラーとギャンゴの違いを演じ分けている姿に注目してみるのも面白いでしょう。

最後は第18話「遊星から来た兄弟」に登場したザラブ星人です。ザラブ星人は、地球侵略という目的を隠して友好的な態度で近づいてきた存在。主人公・ハヤタは彼らの正体に気づいたものの捕えられてしまいます。その後、ザラブ星人はニセウルトラマンに化けて街を破壊するのでした。

そんなザラブ星人は、第4話「大爆発五秒前」に登場した海底原人ラゴンを再利用した怪獣です。ラゴンは日本海溝に棲んでいたが、ロケットの墜落事故で爆発した原爆の影響で巨大化し、ウルトラマンと戦うことになります。ラゴンとザラブ星人を比較すると、頭部と足元は大きく異なるものの、首から下をよくみると再利用の形跡が見て取れます。

ザラブ星人は2022年に公開された映画『シン・ウルトラマン』にも登場し、映画のなかでもニセウルトラマンに化けて自衛隊の基地を破壊しています。ラゴン譲りのボディも継承されており、初代『ウルトラマン』ファンのなかには感激した人もいることでしょう。

1話ごとに怪獣を使い捨てるのではなく改造によって再利用する工夫。これは、時間的にも予算的にも苦しい製作サイドの涙ぐましい努力だったのかもしれません。

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