「赤ちゃんしか預かりたくない」ファミサポ登録会で耳にした言葉に絶句 育児経験がなくても? 女性労働協会に仕組みを聞いた

太田 真弓 太田 真弓

「ファミサポになるための研修を受けているのですが、60代育児経験なし保育士等資格なし赤ちゃんしか預かりたくないですっていう人が複数人いて衝撃を受けている。研修っていっても実技ないから何の指導もなくその人達の家に赤ちゃん来ることもあるってこと?怖すぎるでしょ」

2歳の双子の母であるヘレン桜さん(@pHVZn5SJP1UlKnq)がXに投稿したエピソードに多くの関心が次々と寄せられました。そこで、実情はどうなのか、実際に研修を受けたヘレン桜さんと、ファミサポ運営を支援する女性労働協会に取材しました。

「こども家庭庁」が、こども・子育て支援の一環として取り組んでいる事業の一つである「ファミリー・サポート・センター事業」。子どもの送迎や預かりなど子育ての援助を受けたい人(依頼会員)と援助を行いたい人(提供会員)が会員となり、ファミリー・サポート・センターのアドバイザーが間に入って会員同士を繋ぎ、有償による「相互援助活動」を行っています。

この度のヘレン桜さんの投稿に同じように不安を感じる人からの意見が続々。

「うちの地域もシルバー人材の方でやってますと言われてちょっと躊躇してます」
「我が家は4人年子で実家も義実家かなり遠方・旦那激務でワンオペです。市役所からファミサポさん使ってねって何度も言われてますが、その誰に当たるかわからないから恐怖で使ったことないです。私、保育士でしたが自宅で他人の赤ちゃんとか怖くてムリ!資格があるからこそ怖いです…」
「私が通院するため利用するつもりでした…。自治体からくるお知らせの中に入ってたいたし、ベビーシッターより安いし、、利用するの躊躇しますね」

それに対して、実際に利用している人の声もありました。

「ファミサポは地域差が凄くあると思う。長らく利用していましたが、子どもにも私にもとても丁寧な接し方で有り難い対応していただきました」
「1回だけ頼んだことあって、預ける前は面談して注意して欲しいところを話したり、私が頼んだ人はすごくしっかりしたおばあちゃんで体力もあったから当人による」
「運営側の判断できっとそういう方は派遣されないし、預かり前には面談もあるので、預ける側は不安な気持ちにならないでほしいです。私はファミサポ制度ですてきな先輩ママに0歳児を預かってもらってます!」

「ファミサポ」について考えるきっかけになれば

双子を育てているヘレン桜さんは、提供会員に登録して6時間×2日間の研修(エリアにより異なる)を受けたとのこと。詳しくお話を聞きました。

――投稿を読み「そんな方が登録に…?」とびっくりしました。

自己紹介の内容と講習の最後に行われた受けたい依頼内容の申告からそういう方々がいるのかと判明しました。その他にも「コロナで仕事がなくなったのでバイト感覚でやりたい」とおっしゃっている方もいらっしゃいました。

気になったので、私のエリアのファミサポに「高齢者や育児経験なしの提供会員に実務が行くことがあるのか」と問い合わせたところ、「マッチングによる」とのことでした。登録はあるけれども提供会員として実動しているのは一部の会員のみのようです。

――現在、双子の母として日々育児やお仕事に奮闘されておられるかと思いますが、元々ファミサポへの登録は?

最初は依頼会員に登録しておりました。

――実際に活用は?

「親の手伝いなし&双子」というハードケースなので、妊娠中から登録を済ませていました。しかし、出産してみるとファミサポへの電話もできない日々でした。「多胎育児経験がある方が提供会員にいない」というのも結局、利用しなかった理由の一つです。

――ファミサポへの電話もできない日々…多忙さがうかがえます。

0~2歳までの子育てが本当に辛かったので、提供会員で多胎育児経験がある方がいないなか、他の方のお手伝いができればと思い、提供会員に登録したのが最近です。託児サービスを利用しながら研修を受けています。

――研修の現場はどういった世代の方々が多い印象でしょうか?

60代が1番多く、現役ママが数人でした。

――依頼会員さんと提供会員さんの思いや条件が合致するケースが増えていくと良いのですが。

ボランティアに近い制度なので、プロの方を望むのであればベビーシッターを使えば良いと思っています。ただ「相互扶助の制度だから誰でも提供会員に受け入れます」というのはやや無責任ではないかと…。実際に投稿した育児経験なし60代の方にお仕事が回ってくることはないのかもしれませんが、そう言った方の「赤ちゃんしか受け入れない」という希望をそのまま受け取るのもいかがなものかと感じました。

個人情報は隠しつつもどんな方が提供会員にいるのか情報が公表されていると依頼する側も安心できるのではと思っています。

――今回の投稿に、様々な立場の方からの意見やコメントが寄せられていました。

私の同じように驚いている方には「驚くよね!」と共感を。「ほぼボランティアだから仕方がない」「ベビーシッターを使えば良い」という意見もあり、これについては少し考えさせられました。

私自身も安全はお金で買うべきと考えていますが、助産師訪問などでもしきりに利用を勧められる半ば公的なサービスなのに「ほぼボランティアなのだから期待するな」というのは矛盾しているように感じたからです。子の育児に神経質になりつつある社会的な問題と相互扶助サービスの限界、行政の子育て支援の限界がきているのかもしれませんね。

全ての方がシッターや一時保育を使える財力があれば良いのですが、中々使えない方もいらっしゃる現実があります。全ての社会福祉がそうであるように「子育て支援としてのファミサポも安いから安全ではない」という位置付けであってはならないと思い、講習など定期的に行うのが望ましいのかもなと感じました。

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