「運動部活動の地域移行」の波紋…全国的に部活廃止が進行中 中学生親子たちの思いは

長澤 芳子 長澤 芳子

2022年にスポーツ庁が提言した、公立中学校の「運動部活動の地域移行」の一環として、各地で休日の部活動廃止の動きが始まりました。福井県では休日の活動を2025年度末で廃止する方針を示し、静岡県掛川市では2026年夏までに平日も含めた学校の部活動の完全廃止が表明されています。

そもそも「運動部活動の地域移行」とは学校の働き方改革として始まった施策です。これまで教員が担ってきた部活動の指導を、地域団体や指導事業者に担ってもらうことで、地域で子どもの部活動を支える仕組みです。

教育現場では実際に、岡山県赤磐市立磐梨中学校では、平日の業務だけでなく土日の部活動にも関わることで1カ月の残業時間が100時間という教員もいたようです。この仕組みによって教員の勤務負担が軽減される効果が見込めます。

しかし、部活動が教員の手を離れて民間事業者や地域団体に託されることで、ケガなどのトラブルが発生した際の保障や、外部の指導者に依頼することで発生する費用として子どもの保護者への経済的負担増などのデメリットも存在します。

このように、不安要素がいくつかある状態で部活動の地域移行が強いられている状況で、現在中学生の子を持つ親や教育現場の人たちはどう思っているのでしょうか。実際に中学硬式野球クラブチームの副事務局長として部活ではなくクラブチームを選択する保護者や子供の対応に追われているAさんに話を聞いてみました。

—部活動の地域移行についてクラブチームには何か影響がありましたか。

「体験会の参加者が多くなりました。例年では20名ほどでしたが、今年は30名以上参加いただきました。体験会に参加した子どもや親御さんの話では、中学校の入学説明会で部活が廃止になる旨の説明があり、友人を誘ってクラブチームを探していたそうです。今まではこと野球で見れば、部活よりもクラブチームの方が少し敷居が高いというイメージがあったかもしれませんが、今年は部活の影響もあってか敷居が下がったのかなという印象です」

—部活の廃止は土日などの休日だけではなく、平日も含めてということですか。

「そうです。これは親御さんの話しを聞いてみても、地域によってかなり差があるようで、土日のみ廃止という学校もあります。ある地域では来年の秋、つまり今度の新入生が中学2年の秋に部活動を全て無くすというアナウンスがあったそうです。また中学校だけでなく小学校でもすべての部活動を廃止する動きもあるようで、悩んでいる家庭も多いようです」

—親御さんの悩みはどのようなものですか。

「もっとも多い悩みは部活の廃止アナウンスはあったものの、その後どのように対応していくのかのアナウンスがなく、どうすればいいのか戸惑うという悩みです。その他、部活動の体験会で近々部活が無くなるという話があったものの、いつ無くなるのか決まっておらず、どうすればいいのか親子で悩んでいる家庭もありました。

子どもは競技を続けたがっているけれど、クラブチームでやるような練習に耐えられるか、親のお当番はどうなのか不安という悩みもよく聞きます」

—たしかにクラブチームの練習のほうが過酷なイメージがありますね。そのような悩みにはどう対応しているのですか。

「初心者、中級者、上級者でチームを分けて練習するようにしています。試合は各チームから実力差が出ないように組み分けをするなど工夫することが増えました」

また中学校の部活動廃止アナウンスを受けた子どもの保護者たちからはSNS上で「部活でやってたことは『各自習い事としてやれ』って、経済的に出来るか否かが決まるし、可能性が潰されたりしちゃうやん」と子どもの可能性について危惧する声や「息子の入学する中学校では部活動を廃止し、代わりに平日は生徒のみの自主練で土曜日に外部講師に指導してもらうクラブを作るらしい。驚きはしたけど教員の労働環境を考えれば自然な流れだね」と時代の流れとして受け入れる声などさまざまな意見がありました。

筆者自身も小学校や中学校での部活では、クラスとは違う交流があり楽しかった思い出があります。ただ早朝練習や土日の試合にいつも顧問の先生が来てくれていたことを考えると、教員にとってはかなりの激務だったことは間違いありません。

部活を完全廃止するのか、土日のみ廃止とするのか以外にも、外部講師を招いた場合の費用はどのように捻出するのかなど問題が山積みの「運動部活動の地域移行」。また文化部もこの流れで廃止するのかも気になるところです。これらの問題とどのように向き合って対処していくのか、今後も中学部活動の行く先に注目が集まります。

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