初代のネコ駅長・りょうまは2010年ころ志和口駅に現れ、住み着いた。列車が駅に到着すると改札口で利用者の出迎えや見送りをする愛らしい姿が話題になった。住民の中から「この子は人を怖がらないし、顔も凛々しいから、和歌山のたま駅長のようなネコ駅長になってもらったらどうじゃろうか」との声があがり、2012年11月、志和口駅のネコ駅長に就任した。
以来、「りょうまに一目会いたい」と全国からファンが来訪。志和口駅は1日の乗降者数500人程度の小さな駅だが、当時、同駅長だった中原さんがりょうまの世話をし、記念写真を一緒に撮ったりグッズを配ったりして観光客らをもてなした(現在、志和口駅は無人駅)。
2019年2月、病気で息を引き取るまでに、りょうまはのべ1万9300人を同駅に招いた。「りょうまはたくさんの人を招いてくれただけでなく、りょうまの話題をきっかけに会話が弾むなど、住民同士の交流を深めてくれた存在でもありました」と中原さんは振り返る。
りょうまなきあとも、毎年カレンダーが完売するなど、人気が衰えることなかった。同年7月、地元の人たちの要望で志和口駅前に功績をたたえる石碑を建立。2022年7月には同駅前の民家を改装し、遺品や写真などを展示した「りょうま駅長記念館」がオープンした。今年1月までに2300人が来場している。2代目を待望する地元の人たちの声は年々高まっていた。
やまと&ちどりの2匹が暮らす猫部屋は4畳ほど。キャットタワーやキャットウォーク、隠れ場所なども備え、のびのびと過ごしている。今年1月、2匹がここに移り住んでからというもの、駅を毎日利用する子どもや大人たちが立ち寄ったり、知らない人同士会話が生まれたりといった光景が見られるようになった。
網越しに猫じゃらしで2匹と遊ぶ人、かつて自分が飼っていた猫の思い出を語り始める人、おやつをプレゼントに持ってくる人、猫の俳句を詠みはじめる人なども。また、2匹とここで出会ったことがきっかけで「自分も何かできることをしたい」と中原さんの活動を手伝うようになった地元在住のスタッフも数人いる。猫が繋ぐご縁や輪が少しずつ広がりつつあるようだ。
芸備線は現在、存廃問題で揺れているローカル線。26日には、存続について関係者らが話しあう全国初の再構築協議会が開催される。
「乗って残そう」と呼びかけている中原さんは「このまま乗客が減り続ければ、山間部だけでなく、将来この志和口駅を含む区間も存続が危うくなる可能性は十分ある。先代のりょうまのように、やまととちどりが地域の人たちを元気づけ、たくさんの方が芸備線に乗って2匹に会いにきてくれたら」と話していた。