自民青年局「過激ダンスショー」が浮き彫りにした“昭和のおっちゃん”政治の現実 豊田真由子「極まった国民の不信を払拭するには…」

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

発想が古すぎる/異論を唱えられない

なぜ、こうした“昭和のおっちゃん”的な価値観が根強く残っているかというと、政治では、新陳代謝が働かない、連綿と続く古い価値観に若手も飲み込まれてしまう、厳格な年功序列で異論を唱えられない、といった構造的問題があると思います。

市町村議会では、一選挙区の定数が多い(一選挙区の平均の議員定数は、市議会23.2人、町村議会11.7人)ので、同じ政党に属する議員が何人もいて、新規参入も可能ですが、一方、都道府県議会は、一選挙区の定数が1~2名であることが多く、現職に対して、同じ党の新人が挑む構図というのは、基本的にほとんど見られません(公認は、基本的に現職議員に対して出されます)。

つまり、その政党からは、同じ人が都道府県議会議員の席に座り続けることが多く、新陳代謝が起こりにくい、ということになります(もちろん、国政でも同じことが起こります)。

今回の懇親会の発案や参加者は「若手」の方々だったはずですが、なぜこうなってしまったのでしょうか?政治の世界では長年務めている年配の方が多く、旧来の価値観が支配的で、かつ、極めて厳格な上下関係の中で、抗うことは難しく、場合によっては、そうした価値観に飲み込まれてしまう、ということにもなるのだと思います。そういう中で、異論を唱えたり、新たな時代に即した価値観や行動を果敢に打ち出したりするのは、容易なことではなくなってしまうわけです。

これは、自民党派閥の還付金問題で、「以前からある慣習だった」「派閥から言われたことに従っただけ」といったことにも、通ずるものがあるのではないかと思います。

もちろん、ベテラン議員の方々の経験や見識といったようなものは、政治の世界において極めて重要ですし、すべての年配の方の発想が柔軟でないということもありません。ポイントは、今の日本政治は、年齢やジェンダーのバランスに、あまりにも偏りがある、かつ、厳格な年功序列で、風通しが悪すぎる、ということだと思います。

県政と国政の溝

国会議員と地方議員の力関係について、昔の自民党は、強大な権力を持ったベテランの国会議員が、地元の地方議員を束ねて動かし、権勢をふるう、といったイメージが強かったと思いますが、今は大きく変わっています。一部のベテランの国会議員を除けば、地元では、地方議員の方がずっと力を持っていて、特に新人や若手の国会議員や候補者は、地元ではヒエラルキーの一番下でいじめられる、というような場合も、実は少なくありません。誰に選挙の公認を出すかなどを巡って、都道府県連が、党本部と激しく対立するといったことも、各地で見られるところです。

こうしたことも、「党本部の青年局長なんだから、都道府県支部の青年局に、注意して言うことを聞かせるべきだった」という意見に、私が「実態はちょっと違うんだよな…」と思う理由でもあります。

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今回の懇親会問題には、政治の世界の旧態依然とした価値観、ジェンダーのアンバランス、年功序列、国政と県政の溝などの問題が、如実に表されていたと思います、だからこそ、一人ひとりが根本的に意識を変える努力が必須であるとともに、制度的強制(クオータ制や定年制など)を含めて、具体的に変革を形にしていくことを考えないことには、極まった国民の政治不信を払拭するような成果をもたらすことは到底できないだろうと思います。

【参考】
・内閣府「国会議員、直近の国政/統一地方選挙の候補者・当選者に占める女性割合」
https://www.gender.go.jp/policy/seijibunya/pdf/hiritsu.pdf
・全国市議会議長会「市議会議員定数に関する調査結果(令和4年12月31日現在)」
https://www.si-gichokai.jp/research/teisu/__icsFiles/afieldfile/2023/04/24/r4_teisu_tyousa.pdf
・全国町村議会議長会「町村議会実態調査結果の概要(令和5年7月1日現在)」https://www.nactva.gr.jp/html/research/pdf/69_1.pdf

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