高齢の飼い主が認知症で施設へ 残されたシニアのトイプードル 福祉担当者と近所の人が守った命、保護団体や獣医師に託された 

松田 義人 松田 義人

2023年8月、東海エリアで一人暮らしをしていた高齢者が認知症になり施設に入ることになりました。この高齢者が飼っていたメスのトイプードル・ミトンちゃんが行き場を失うこととなりました。

高齢者の福祉担当者は「ひとりぼっちになってしまったミトンちゃんを、なんとか幸せへと繋いであげることができないか」と模索。愛知県を拠点に多くのワンコの保護・譲渡活動を行うSORA小さな命を救う会(以下、SORA)に連絡。SORAのスタッフは、迷わずこのミトンちゃんを引き取ることにしました。

高齢者の自宅でひとりぼっちで過ごしていた

ミトンちゃんは、高齢者が施設に入ってからひとりぼっちになり、この福祉担当者と近所の人がエサと水を与え続けたそうです。「なんて優しい人たちだろう」とスタッフは胸が熱くなりましたが、この依頼を受けたのは真夏の夜間でした。エアコンはつけているようですが、熱帯夜です。スタッフは高齢者宅へと保護に向かい、連絡を受けた福祉担当者も予定を調整して高齢者の自宅へ来てくれました。

高齢者の自宅には、白い毛並みにクリクリの目をしたミトンちゃんが元気そうに過ごしていました。心ある福祉担当者にはすっかり懐いている様子でしたが、初めて見るスタッフにはキョトンとした表情。それでも警戒する様子は見せず「あなたは誰ですか?私と遊んでくれるんですか?」といわんばかりに穏やかな表情です。

 

一時は里親希望者が現れたが、持病を理由に戻された

高齢者が施設に入ることが決まった際、ミトンちゃんの新しい里親さん探しを福祉担当者自身が行ったそうです。「早く優しい里親さんが見つかると良いね」と自力でミトンちゃんのトリミングも実施。その甲斐あってか、一時は里親希望者が現れ、福祉担当者も多いに喜びました。しかし、この家に迎え入れた後、ミトンちゃんの胸部に腫瘍が見つかり再び戻されてしまったそうです。

「シニア犬で持病もあるミトンちゃんの里親探しは素人には難しいかもしれない。ここは専門の団体にお願いしたい」とSORAに依頼したとのことでした。

「命のバトン」の連携で元気を取り戻した

この福祉担当者から、「命のバトン」を受け取ったSORAのスタッフは、保護後すぐにミトンちゃんを懇意の獣医師に診てもらいました。

心雑音が確認され僧帽弁閉鎖不全症、心肥大という診断。シニア犬という不安もありましたが、投薬治療で状態は安定。心配された胸部の腫瘍についても手術で摘出し、あらためて家族探しを始める一歩を踏み出しました。ミトンちゃんはスタッフにもすっかり懐き、スタッフの行く先々をくっついて歩いてくるかわいい素ぶりを見せてくれるようになりました。

高齢者の育児放棄は珍しくない

ミトンちゃんはSORAで世話をしてもらいながら、里親希望者さんとのマッチングを目指しています。ミトンちゃんにピッタリの「新しい家族」が見つかることを願うばかりですが、スタッフは「こうした高齢者の家庭からのワンコの保護は珍しくない」とも言います。

定年退職を機にワンコを飼い始める人が増えており、ワンコがシニア犬になる頃には、同時に飼い主自身も高齢となるケースが多くあります。しかし、その飼い主自身が高齢となりで病気や入院、場合によっては死亡などで飼育放棄になるケースも多いのだと言います。今回のように心ある福祉担当者や近所の人がミトンちゃんの世話を続けてくれたことは好例ですが、こういった善意の人がおらずワンコだけが家に残され死んでいたというケースもスタッフは経験しています。

「ワンコを飼いたい」と思っても、その飼い主の身に何かが起きた際のことを踏まえてでなければいけません。このこともあらためて強く感じさせたミトンちゃんの救出劇でした。

一般社団法人SORA小さな命を救う会
https://sora-chiisana.org/

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