世知辛い世の中になってきたなあと思うこともしばしばありますが、いやいやまだまだ捨てたもんじゃないよと思うことも。
パセリンさん(@9936677705pase)は、心温まる出来事をXに投稿しました。
「聞いて欲しい。凄かった。夜勤明けのつい1時間前。研修前に何かお腹に入れておこうと立ち寄った松屋。店内には私とその他中年代のおじ様方が4名。急に高齢の男性が呻きながら倒れた。すぐに駆け寄って声をかけるが眼球上転、除脳硬直(※)していて確実に脳疾患。そこに1人のおじ様が素早く駆け寄ってきて、
『僕。警察官です』と。
そこで私も名乗る『私は集中治療室の看護師です』と。」
警察官と看護師が同じ場所に居合わせた偶然にも驚きますが、それだけではありません。
「ここからめちゃくちゃ気持ちよくテンポよくことが進む。
私は意識の確認から。JCS:Ⅲ-200(※)、痙攣、瞳孔散大、舌根沈下によるいびき様呼吸あり、脈は橈骨触れず鼠径僅かに触れる程度。気道確保。
警察官さんは男性の荷物を確認し身分証明書から名前を特定。靴を脱がしベルトを緩める。
そして凄かったのは周囲のお客さんと店員さんも。
1人はAEDを探して走って外へ。(店内には無かった)
1人は店員さんと救急車に連絡。
1人は救急隊が店内に直ぐに入ってこられるよう椅子や机を退かして動線作り。
そうこうしてるうちにさらに呼吸が怪しくなり、頭部後屈顎先挙上するも首が硬直により上手くいかず。そこで警察官さんが躊躇いなく男性の口に直接手を突っ込み開口▶︎舌を押して気道確保。」
「そこから声をかけ続け、数分後に意識レベルがⅠ桁まで回復。名前、年齢、見当識OK。手は握れるか、左右OK麻痺無さそう。瞳孔も散大してたのが戻った。
そしておじ様たちの誘導により無事迷うこと無く救急車が到着。
倒れた時の状況説明、そこからの処置、病態説明。
搬送されるまで見送り、5人+店員さんで深呼吸。
終始誰も座ってなかった。
一人一人が出来ることを全力でやってた。
みんなただ牛丼食べに来ただけ。
知らない人の集まりが、こんなにも団結出来たことにただただ胸が熱くなった。
みんなでお互いにありがとうを言い合って解散。忘れられない日になった。
そして男性を乗せた救急車は
私の職場へとサイレン鳴らしながら走っていった。
私とはまた会えるね………」
※除脳硬直:脳出血や脳腫瘍のほか、脳幹上部の機能を抑制する肝性昏睡、低血糖、無酸素症などから起こる症状。
※JCS(Japan Coma Scale):脳血管障害や頭部外傷の急性期における患者の意識レベル
緊迫の牛丼店内、そのとき何が…?
集中治療室の看護師というパセリンさんに詳しいお話を伺いました。
ーーすぐに脳の病気だと思われましたか。
「はじめ、倒れられて駆け寄った際に意識が無かったこと、眼球上転(白目を向くこと)、瞳孔散大してたことから脳疾患を疑いました。
除脳硬直は低血糖や無酸素症等でも起こりえますが、私の経験では脳疾患で起こることが多いとは思います。てんかんか、脳出血または脳梗塞かなぁと思いました」
ーー警察官の方もすぐに動いてくださったのですね。
「相当の経験を積んでこられたベテランさんのようでした。『脳っぽいね』と仰っていたので、こういう方を見たのが初めてではなかったのかもしれません。正直、手を直接入れて気道確保するのはあまりおすすめ出来ません。噛まれる可能性もあります。しかし、今回のような、道具も何も無い咄嗟の救命が必要な現場では、大変正しい行動だったと思います。コロナ禍、躊躇いもなく知らない人間の口腔内に手を突っ込むという行為は、みんながみんなできることではありません。心から尊敬しました」
ーー残る3人の男性は、すぐに動いてくれましたか。
「AEDを探しに行ってくれた方は自発的に動かれていました。人が倒れた=AEDという思考回路が定着しつつあるのかもしれません。店内にAEDが無いことを確認後、店外まで走って行かれました。救急車を呼んでくださった方は、お店の方に『救急車呼んでください』と声をかけ、お店の方と一緒に救急隊に電話してくれました。動線作りをしてくださった方は、救急隊がいざ入ってくるという時も店の自動でゆっくり閉まるタイプの扉を手で押え、救急隊がスムーズに出入りできるようにしてくださっていました。
一般の方がこれだけ協力して動いて下さるという光景に、緊急時ながら感動しました。誰か一人だけが頑張るのではなく、その場にいる一人一人が出来ることを見つけて動いて下さり、私も警察官の方も非常に助かりました」
ーー5人の連携プレーが素晴らしいですね!
「今回のことは、非常に好条件であったと感じています。人が倒れても、すぐに動ける人は少ないのですが、『救急車へのいち早い連絡』『倒れて意識がない=AEDを探す』などしてもらえると、医療者としてはとても助かります。
いくら資格を所持していても、1人では限られたことしかできません。あの場にあのメンバーが居合わせた奇跡と、警察官の躊躇いのない行動の凄さ、一般の方の素早い協力が実を結んだのだと思います。感謝の気持ちでいっぱいです」
投稿には、
「こんなお話を目にすると、世の中捨てたもんじゃ無いなって嬉しくなります。胸が熱くなるお話をありがとうございました。私も人のために何かできるかな」
「全員かっこいい!似たような現場に遭遇したら、自分も何かしよう!と、これを読んだみんなが思えたらいいな。誰かのためになにかできる自分でありたい」
「倒れたおじさん。運を持ってますね」
というコメントが多数寄せられ、「いいね」は21万件にもなりました。
同じような場面に遭遇したら、このお話を思い出して動いてみたいですね。