「パパ、食器洗った、お風呂洗ったっていちいち報告すんのやめて?ママはそんなこと言わんやろ。報告いらん」「(ママの誕生日で)ケーキはプレゼントにならんのですよ、って1年前に言ったの忘れたん?なんにもわかってないやん」「周り見てみ?横になる時間ちがうやろ」
パパをお説教する、まもなく小学2年生のりおなちゃんの姿が話題となったYouTubeチャンネル『ちいりおちゃんねる』やInstagram。くるくると変わるキュートな表情、鋭く核心を突く絶妙なワードセンス、瞬発力抜群のツッコミ、オモロかわいい魅力にあふれています。
そんなりおなちゃんは、生死を彷徨う状況が幾度となくあり、5歳の時に受けた側弯症の手術の影響で胸から下の感覚が麻痺、現在の98cmから身長は伸びず、歩くことができません。病状を伝えることで、「少しでも生きやすい世界を用意してあげたい」という両親の思いからスタートしたのがSNS発信です。
バズって約1年、すっかり有名になったりおなちゃん。「娘を芸能人にしたくない」というりおなちゃんママの思いから、取材やテレビを断っていた時期もありましたが、今は家族で相談した上で情報発信のため登場することも。先日、書籍も発売されたなか、SNS発信の背景や今の気持ちを聞きました。
パパへのお説教は日常茶飯事「りおなの心からの叫びです!」
「ちゃんとさぁ、自分のことは自分でやってよ。もう私、パパに教えたくないねん」「そこらへんに何個も靴下脱ぎ捨てるのやめて」。次から次へと出てくるパパへのお説教フレーズには、「よくぞ言ってくれた!」「これを6歳の子がわかってるとは!人生何周め?」など共感のコメントが続々。これらの動画で、りおなちゃんのことを知った人も多くいるでしょう。
あまりにも堂に入ったお説教はYouTube動画をきっかけに始まったのでしょうか?気になることを質問すると、ひときわ大きな声で「YouTubeを始めるもっと前からお説教してます!ずーーっと言い続けているのに、聞いてくれない」とりおなちゃんは、バッサリ。
「毎日のパパの行動ひとつひとつがもう全部できてないっ!」とパパを見ているだけで、お説教がつい出てきてしまうそうです。
つい怒ってしまいたくなるパパの行動に対して、思わず笑ってしまうのは、りおなちゃんのトーク力がセンス抜群だから! りおなちゃん自身は「トーク力はもともと持っていたものだと思います。語彙力がない人も鍛えたら上がります。りおなもパパとのおしゃべりで鍛えられたかな〜って。パパが話してる時も、相づち打ちながら、次はこんな言葉で言い返そう、こういう言い方しようって考えてるから」。パパの英才教育とは思わないけど、ちょっとは感謝していると話してくれました。
憧れていたYouTuber「プロじゃないけど…」
YouTube『ちいりおちゃんねる』は2022年末に始動しました。「YouTubeはずっとやりたい、やりたいってママに言っていたから、やろうかってなった時はやったぁって気持ち」とりおなちゃんは振り返ります。
SNSにあまり熱心ではなく、子どもがやるのも反対だったりおなちゃんママは、「YouTuberになりたい」と、以前から度々、りおなちゃんが話していた時には本気で取り合っていませんでした。けれども、「先天性の骨系統疾患疑いによる低身長症や側弯症、下半身麻痺による歩行困難といった病気を抱える娘のことを知ってもらいたい、SNSで発信するのはありなんじゃないかと思うようになったのです」。
開設するにあたり、<親は出ない><娘にとって不利益にならない内容にする><楽しい普段の日常を動画にする>ことを決めたそうです。
ショート動画は穏やかでやさしいお兄ちゃんやお笑い好きのパパと過ごす家族の日常、10分超の動画はりおなちゃんが考えたネタから作ったものと区別。【りおなのおやつ紹介】【りおなのかばんの中身紹介】【りおなの購入品紹介】といった紹介系や【りおちゃんの人生相談!?】【りおなの愛の説教部屋!?】などの深い話系、パパのお説教シリーズなど129本の動画は、「YouTuberっぽいことをしたかった」というりおなちゃんの魅力がたっぷり。
笑いあり、かわいいあり、そして視聴後は元気になれること確実。いっさい台本なしで、りおなちゃんが自由に話しているのを「私自身、あまり長い動画を見たいと思わないので。サッと気軽に見れることを意識しています」と話すりおなちゃんママが編集し、ギュギュッと見応えのある1本に仕上げています。
ショート動画でも、「YouTubeの世界は芸の世界。一生懸命やってもおもろなかったら意味ないから」「YouTubeのプロではないけど〜。おもろさはぶっこんでいくから」とたびたび伝え、芸を磨き続けるりおなちゃん。
動画作成で心がけているのは「自分が笑顔で明るくいること、そして見ている人にも笑顔になってもらうこと」(ここで、パパから「なんやそれ〜」とツッコミが入ったところ、間髪入れず「うるさいから黙ってて!大事なことやんか」と小競り合いが勃発しました)。
良い面も悪い面もあるSNS「あたたかいコメントがあるから頑張れる」
現在、YouTube『ちいりおちゃんねる』は登録者数122万人(2024年2月取材時点)。昨年のYouTube登録者増加クリエイター2位(日本国内)に輝きました。
「こんなに見てもらえるようになるとは思いませんでした」と母娘は声を揃えます。「急に増えて怖かったです。こんなにバズったら、自分たち家族ではもうコントロールできない」と、りおなちゃんママは不安な気持ちに襲われました。
しかし、りおなちゃんは、「たくさんの人が頑張って!と言ってくれて、リハビリなどで辛い時でももっと頑張ろうって思える。本当にありがとうって言いたいです」とコメント。りおなちゃんママも「言葉の力を実感しました。落ち込んだ時でもコメント欄の言葉を読んでいるだけで前向きになることが多々あって。りおなは“頑張る気持ちは応援があってもなくても変わらない”と言いますが、私はたくさんの人からの励ましや応援がなければ、ここまで頑張れなかったかもしれません」。
ただ、世の中は話題になるとアンチコメントが出てくるのも常。「その方なりの正義をバンッとぶつけられて、辛くなった日も。SNSはダイレクトに反応が来るのが良くも悪くもあると思います」。あたたかな言葉がほとんどですが、紛れている辛辣な言葉に捕らわれてしまうこともあり、言葉の持つ怖さも感じています。
そんなこともあり、動画の再生回数が増加し、さまざまなオファーが相次いだ昨春には、「支援や理解を得られる社会を用意してあげたい、可能性のある治療を受けさせたいからSNSをやっているのであって、娘を芸能人にするつもりはないです」と発信。その思いは、今も変わることなく、リハビリや治療が第一です。
「私たち親は、りおなの病気を知ってもらうとともに、その先に自立して生きていって欲しいと願っています。自分で稼ぐという経験をするのは決してマイナスではないので、りおなにとってプラスの経験になると思える依頼だけを受けることに決めています。これからも、そこは揺らぎません」。
1月26日からは『ちいりおちゃんねる』が育児応援アプリ『鬼から電話』とコラボし、育児されている側の経験を踏まえたやさしいキャラクターとして登場。さらに1月31日には、ロングインタビューやパパとの対談、育児奮闘記などを収めたちいりおワールド全開のポジティブブック『今日もさわやかに麗しく生きていきましょう』(KADOKAWA/ちいりお ちいりおママの共同名義)を出版しました。
「病気のことを知って受け入れてくださる人が多いことに感謝の思いでいっぱいです。りおなの存在があたりまえの世の中になることを願っています」とりおなちゃんママ。
「みなさん、いつもありがとうって思ってます」と取材中何度も繰り返していたりおなちゃんも、「私にこのお仕事してください、って言ってきてくれるのはすごくうれしい。でも、今だけだと思ってるから、この特別な今を大切に、自分のできることをしたいです」。
■You Tubeチャンネル ちいりおちゃんねる
https://www.youtube.com/@chiirio
■Instagram https://www.instagram.com/riona3710