「同じブランドばかり・・・」客の厳しい言葉も糧に バレンタイン催事をどう差別化するか、人気企画を生み出す百貨店担当者に聞いた

Lmaga.jpニュース Lmaga.jpニュース

男性用のチョコレートではなく、ご褒美チョコとして女性自身が楽しむイベントとなって久しいバレンタイン催事。「知らないチョコが食べたい」とスイーツ好きのハードルが年々高くなっている模様、独自の企画で人気を誇る大阪の百貨店に取材しました。

かつては初登場のブランドなどが「目玉」でしたが、今や世界の人気ブランドは一般的となり、世界のローカルな人気店も注目される時代に。都市部では、他店とのバレンタイン催事とどう差別化するのか難しい時代へと突入しています。

そんななか、大阪・梅田では「阪急うめだ本店」の様々なテーマで展開するチョコの企画力、隣の「阪神梅田本店」は2019年から女性に人気の「いちご」を主役に、「大丸梅田店」は地元関西の人気スイーツ店に着目し、クッキー缶特集を設けるなど、梅田エリアではしごしてもそれぞれの魅力が楽しめるようになっています。

今回は、チョコレート好きから熱い支持を得て、新しい提案をし続ける「阪急うめだ本店」の『バレンタインチョコレート博覧会』を16年間も担当する高見さゆりさん(高ははしごだか)、催事に参加するシェフに話を聞きました。

チョコのマニアを生み出した!?

2024年度は国内外で約300ブランド、約3000種。9階にある催場だけでなく1フロア全体、各階でもバレンタイン用の売り場を設ける同店。2023年度は過去最大規模となり、過去最高の約29億円の売上を達成。2013年度が約10億と考えると驚異的な飛躍です。

ブランドのセレクト力、いちはやくチョコのソフトクリームをバレンタインで打ち出したことでも有名ですが、チョコマニアの客が増えたきっかけのひとつが、2014年にシンプルな板チョコ(タブレット)を特集したこと。種類の豊富さ、カカオの濃度や産地で味が違うのかという驚きとともに、カカオの魅力を「タブレット・ミュージアム」として発信したのです。

そして、2016年には「カカオワールド」と名前を変更し、現地の生産者にも光を当て紹介。これを機に、コーヒー豆と同じようにカカオの産地にも着目する人が増えていきました。「チョコレートの川上であるカカオに本格的に着目するようになり、その辺りから阪急は他の百貨店とは違うとお客様にも認識いただけるようになったかと・・・」と、高見さんは振り返ります。

今年、滋賀県大津市から訪れた30代女性は、「毎年しっかり下調べしてから来ています。今年は初登場の『イヴァン・シュヴァリエ』がお目当てだったのですが、欲しい商品が完売していたので、これから『ショコラトゥリー ドゥ マリュー』、『ジャン=ポール・エヴァン』へ向かいます」と話し、予算は2〜3万ほどとのこと。覚えづらそうなブランド名をスラスラと言えることも、この予算もここでは珍しくはありません。過去に取材にした人の中では「予算は決めていません」と、思う存分に買うという人もいました。

チョコだけじゃない、焼き菓子パラダイス!

また同百貨店の催事として新たな特徴は、焼き菓子も豊富なこと。2023年度は、フィナンシェ、クッキー、マドレーヌなどで埋め尽くされた「焼き菓子の森」が登場。開店と同時に消えてしまうほど人気のものもあったほどです。

今年も、その人気を踏まえた上で、アイテム数を絞って展開し、「アイテムは減でも、味のバリエーションは増です。結果、展開アイテム数は変わっておりません。今年は、焼菓子の中でも「フィナンシェ好き」「ティグレ好き」「クッキー好き」など、自分の好きを推されるお客様にハマっていると思います」と高見さん。

なぜチョコの祭典でこんなにも焼き菓子が…と思ってしまいますが、これも長年お客の動向を見つめ続けた結果。「2015年から毎年地下1階のツリーテラスで、焼菓子だけを集めたイベントを開催しており、大変好評をいただいていました。また、『オードリー』や『クラブハリエ』をはじめ、バレンタインでもチョコ菓子は人気。いろんな焼菓子を集めたコーナーが実現すれば絶対にお客様に楽しんでいただけると思っていました。準備も運営もかなり複雑で大変なので、中々踏み切れませんでしたが、やっと展開ができたのが昨年というタイミングでした」。

今年の注目したいテーマはキャラメル

日本酒、各都道府県のローカルチョコ、フルーツ&ナッツ、去年はかんきつのピール(皮)や輪切りをチョコでコーティングした「オランジェット」など、他店にない切り口のコーナーも毎年、ファンは注目。今年の企画タイトルは「chocolate meets Caramel ~極めるキャラメル~」です。

「ここ数年、バレンタイン期間中に行列のできるブランドさんをリサーチしていると、キャラメルアイテムが人気かも?と感じていました。昨年、ボンボンショコラブランドを魔術師に見立てて編集した際も、キャラメルの魔術師として取り上げていたブランドもあり、やっぱり行列ができていました。なので “キャラメルはいける”と、今回は特集をしてみました」と、お客の流れから潜在的なニーズを察知した高見さん。

2023年に新ブランドとして登場し、昼過ぎには売り切れるほど人気となったキャラメルが主役の「CARAMEL et CACAO(キャラメル エ カカオ)」、若林繁シェフは、「ル ショコラ ドゥ アッシュ」にて長年統括シェフを務めた実力者。「昨年は想定外の反響で、製造が追いつかないほどでした。朝開店前の1時間以上前から並ばれる方もおり、僕は申し訳ない気持ちでいたのですが、みなさま笑顔で! ここのお客さまの熱情と愛情が違うと実感しました」と、話してくれました。

ちなみに若林シェフが、キャラメルに特化したチョコブランドへとたどりついたのは、 2009年クープ・デュ・モンド飴細工部門賞を獲得して、自身が砂糖を焦がしてつくる飴細工が得意なこと、またチョコレート専門ブランドで得た経験やノウハウを活かすためだったそうです。

キャラメルは砂糖の焦がし具合で食感や風味が変わるため塩、生姜、ブラッドオレンジ、紅茶などさまざまな味のキャラメルを、だれに任せることもなく、すべて若林シェフ自らが炊いていると言います。いろんなフレーバーのガナッシュ(チョコクリーム)ともスッと口になじみ、これまでのキャラメルの印象を覆します。今年は、去年から商品の味を一部変更し、「また同じものを食べたいと思われる方もいるかもしれませんが、僕なら新たな味を楽しみたい。お客様目線で考えていきたいと思います」。今年は4粒入り1651円などのほか、新登場のプラリネタイプ6粒2551円。

まいどなの求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース