「高齢者の葬儀の無償化も是非検討してほしい」。京都市長選に合わせ京都新聞が双方向型報道「読者に応える」で行ったアンケートの自由記述欄にこのような意見が寄せられた。小規模な「家族葬」や火葬だけの「直葬」なども浸透してきているとはいえ、いまだに葬儀への出費は少なくない。投稿を元に葬儀の現状や他都市の制度などを調べた。
投稿したのは京都市伏見区のアルバイト男性(66)。男性は「いまのお年寄りは昭和の時代から日本を支えた方々だ。年金は削られるし物価は上がる。子供の支援も確かに大事だけれど、葬儀の一部もしくは全額費用を市が負担できないのか」と話す。
「月刊終活」を発行する鎌倉新書(東京都中央区)が2022年3月に行った「第5回お葬式に関する全国調査」によると、葬儀費用の平均は110万7千円だった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、「通夜振る舞い」などの飲食費や「香典返し」などの返礼品の費用が低減し同社の調査では過去最少の金額だったが依然、葬儀には100万円を超す出費が必要だと分かる。
他都市では、葬儀費用を抑えるための制度を設けている自治体がある。大阪市の場合は「儀式の尊厳をたもちつつ、その出費を少なくするため」として「大阪市規格葬儀」という制度が存在する。大人の場合、約20万円と約35万円の2コースが設定されており、これ以外に1万円の火葬料や6千円~8万円の斎場代が必要となる。大阪市環境局施設管理課によると2022年度は1381件の利用があった。
京都市に隣接する大阪府高槻市は「市直営の事業として、市民の誰もが安心して利用できるように」として「高槻市営葬儀」を設けている。高槻市斎園課によると2022年度には約930件の利用があったという。費用は式場利用料などによって異なるが、高槻市のホームページでは、費用の事例として17万5千円や30万4千円という価格を掲載している。
実は京都市にもかつて似た制度があった。1950年に開始され、2005年4月に廃止された「市営葬儀」だ。当時の京都新聞記事によると、3万9千円で納棺や祭壇の設置、霊きゅう車などの利用ができた。廃止時には年間200~300件程度の利用があったという。市生活福祉課によると、市の財政健全化や利用者の減少を受けて廃止されたという。
市営葬儀は復活の兆しはなかったのか。京都市生活福祉課は「復活への議論がされたことはこれまでありませんでした」とする。
国勢調査によると、市営葬儀が廃止された2005年当時の京都市の高齢化率は20.1%だったが、2020年には28.2%と上昇し、高齢化が一層進展している。92歳を迎えた男性の母親は自身の葬儀費用にと毎月こつこつ貯金しているという。「葬儀費用の一部でも補助があれば、高齢者からは『京都は住みやすい町だ』と言われるのでは」と男性。「今の時代に応じた市による葬儀の関わり方が必要だと思います」と話した。