さまざまな事情から飼い主がいない犬猫を救い、世話をする保護団体。世話をした犬猫の大半は迎え入れてくれる里親さんへ譲渡することが多いですが、規模の大小を問わず、団体を運営する上で避けて通れないのが「お金」です。
保護活動の運営費は寄付や支援金などで賄われることが多いものです。また、保護犬・保護猫を里親希望者さんが迎え入れる際に、無料で譲渡されるケースはあまりなく、大半が「譲渡金」という費用がかかります。保護した犬猫の世話や医療ケアを施した上で要した費用や今後の活動の支援金が含まれます。
収益の大半は「寄付金」「募金」「譲渡金」
東京都足立区舎人で活動する保護犬猫カフェPETS(以下、PETS)は、一般から手厚い支援を受ける中規模クラスの団体。ブログでは収支だけでなく、保護状況や保護犬・保護猫の状況などを公表しており、まさに「開けっぴろげ」。クリーンと親しみやすさが信頼につながっているのだと思います。
PETS代表に運営にまつわる「お金」事情を聞きました。
ーーPETSの運営は。
「保護団体ごとにお金事情はそれぞれ違うと思いますが、PETSの収入の大半は保護犬・保護猫の『譲渡金』、活動に賛同いただける方々からの『寄付金』『募金』です。これらに加え、ペットフードなどの物資支援をいただくこともあります。保護団体の中にはボランティアで活動するところも多いですが、PETSではスタッフのバイトさんには給料をお支払いしています。ボランティア募集していた時期もありましたが、1回で来なくなったり、『来る』と行っていた日の直前に来なくなったりなどがありました」
ーーきちんと支払うことが大切なのですね。
「犬猫は『命』ですし、特にPETSでは扱いが難しい犬も引き受けているため、日々のお世話をする人員にはきちんと給料を払うことにし、責任を持ってシフトに入ってくれる人にお願いしています。ただ、PETSの役員は私を含めて保護活動にかかわる報酬は0円です」
1ヶ月のPETSのお金事情の中身
代表は保護活動と合わせて犬猫カフェを運営したりトリミングサロン、ペットホテル、ペットシッターなども運営しており、こういったところから自身の収入を得ています。つまり、行き場を失った犬猫の世話をしながら、同時に事業を切り盛りすることで自身の収入も確保するという合理的な考えです。
2023年の9月は以下のような収支です。
【令和5年9月度収支報告】
前月繰り越し ¥1,737,652
〈収入〉¥548,380
内訳
・譲渡金 ¥490,000(犬×7)
・寄付金 ¥24,000
・募金 ¥34,380(¥譲渡会9,500)
〈支払〉¥428,413
内訳
・医療費 ¥192,390
・フード ¥28,220
・雑費 ¥10,013
・人件費 ¥177,990
・搬送費 ¥19,800
次月繰越し ¥1,857,619
中型犬1匹を保護すると「年間50万円」かかる!?
「こういった収支を経理がまとめて算出するのですが、このうちペットフードにかかる経費がかなり少ないのは、一般の皆さまから物資支援を多くいただけるようになったからです。これは本当にありがたいことで、おかげでPETSの犬猫たちはみんな美味しいゴハンを食べられています。また、犬猫を譲渡する際の『譲渡金』は団体によって高額なところもありますが、PETSでは一律『7万円』としています。譲渡先が決まりやすい子、決まりにくい子がいますが、『その子だけの譲渡金』という考えではなく、こういった全体の犬猫のバランスを考え、わかりやすく一律制にしています」とPETS代表は話します。
心ある保護団体の多くはこういった収支状況を定期的に公開し、お金の理由も明確にしているものです。また、保護活動の状況や保護後の犬猫の動向なども公開しているものです。
一方、これらが曖昧で、活動状況もいまいちわからないという保護団体もあります。「恵まれない犬や猫のお世話ができないが、せめて寄付をして間接的に、犬や猫の命を助けたい」と思う人は、特に金銭的にクリアな団体にこそ寄付し応援すると良いでしょう。代表は最後にこう話してくれました。
「コロナ禍が開けて喜んだのですが、物価高騰で犬猫のゴハンも高くなり、ガソリンも高くなり、不妊化手術の費用も上がっています。一説に『中型犬を1匹保護すると、年間50万円かかる』と言われていますが、これだけのお金をなんとか工面し、犬猫のお世話をし続けられているのは、全て皆さまからの支援のおかげで、これは本当にありがたいことです。これからも皆さまの温かい気持ちを受け、犬猫たちの第二の『おうち』に繋げられるよう活動を続けています」