救助犬になぜ「靴」を履かせないの?
救助犬の活躍について報道されると、「なぜ犬に靴を履かせないのか?」といった心配の声が多くあがる。言うまでもなく、救助犬たちの安全を誰よりも考えているのは、犬たちの飼い主でもあるハンドラー自身だ。
災害現場の危険性を鑑みて、捜索救助犬は、「活動靴」を履いて作業をする訓練を受けている。だが、犬の足裏のパッド(肉球)は運動時の衝撃を吸収し、バランスを取って体を支えるスパイクのような役割を果たす。そのため、シリコンや布で出来た「靴」で肉球を覆ってしまうと、肉球と爪で地面をしっかりと掴めず、滑落などの危険が生じてしまう。
また、肉球には多くの神経や血管があり、痛みや温度など、触った場所の情報を得るセンサーのような役割も持つ。さらに、肉球は犬が「汗」をかく器官であり、「靴」で覆われると体温調節が難しくなるばかりか、泥などで足を取られた際は「靴」が容易に脱げてしまうという。
「災害現場には犬たちにとって危険な物が散乱しており、受傷する犬も少なくありません。バランス保持のために素足での活動が望ましいのですが、もし素足のように犬の足にシンデレラ・フィットする活動靴があるなら、ぜひ活用したいと考えています。研究・開発してくださる企業様、ご協力くださる企業様がいらっしゃいましたら、私どもまでご連絡いただけますと幸いです」(「捜索救助犬HDSK9」杉原さん)
民間の救助犬団体に対する公的制度の見直しを
今回、捜索救助犬のリッターくんが発見したのが生存者ではなかったことを受け、「救助犬は生存者が発見できないことが続くと、ストレスで元気がなくなってしまうと聞いた」というコメントも寄せられた。
「人それぞれの感じ方や捉え方があると思いますので、犬たちが落胆するかどうかについては言及しかねるのですが、私たちハンドラーは、出動先であっても犬たちと遊んだり散歩をして、できるだけいつも通りに接しています」(「捜索救助犬HDSK9」杉原さん)
被災地では、我々と同じ民間人であるハンドラーの方々にも、帯同する救助犬たちと同じく多くの危険が伴う。
だが現在のところ、民間の救助犬やハンドラーが出動した被災地で身体的・心的外傷を受けた場合であっても、国や自治体による公的な補助や補償はない。自然災害が多発する国として、救助犬の育成や団体の運営に対するサポート体制の早急な見直しが求められる。
現在、「HDSK9捜索救助犬」では、捜索救助活動継続のためのクラウドファンディングを実施中だ(※支援募集は2024年2月8日23:00まで)。集まった支援金は「災害への準備」「支援に伴う事務局運営費」「犬や隊員の安全を守る装備の拡充」「現地への燃料費、食料、衛生用品等」に充てられる。
※令和6年能登半島地震でお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみを申し上げます。一日も早い復旧復興と、被災された皆さまに平穏な日々が戻りますことをお祈り申し上げます。
■「捜索救助犬HDSK9」のクラウドファンディング「令和6年石川能登地震 捜索救助犬派遣」