買った惣菜を地元陶芸家の器に盛り付け♪ スペシャルな食体験を楽しめるスポットが淡路島に誕生

國松 珠実 國松 珠実

兵庫県洲本市(淡路島)に昨年オープンした「SHIMA DELI」(シマデリ)は、サラダやカレーなど地元食材を使ったメニューをテイクアウトできるデリカテッセンの店。イートインも可能な店内では、淡路島の陶芸家の作品である器に盛り付け、食事を楽しむというスペシャルな体験ができる。家族や友人と器を選んだり、写真をSNSにアップしたり、遊び心をプラスした食体験でリピーターを増やしている。

 

好きな総菜と好きな器を自分流にコラボレーション

国道28号線沿いにあるSHIMA DELIの1階ショーケースには、ポテトサラダをはじめとした数種類のサラダや海鮮マリネ、豆腐ハンバーグなど、地元の素材をふんだんに使ったヘルシーメニューが並ぶ。テイクアウトもいいが、食器好きな人は、買ったら迷わず2階へ上がるべき!なぜなら、淡路島の陶芸作家らが作った器で味わえるからだ。

 

テラス席も含めて35席ほどある2階のイートインスペースでは、淡路産の玉ねぎスープが飲み放題。そして中央にあるテーブルに並ぶのが、淡路島で活動する5人の陶芸作家の手による器たちだ。器はいくつ選んでも良い。好きな器を取り、1階で買った総菜をテーブルで自由に盛り付ける。好きな総菜と好きな器を組み合わせるという他ではできない食体験が楽しめる。

 

「盛り付けひとつにも個性が出ます。ワンプレートにたっぷり盛り付ける人もいれば、小鉢に1種類ずつ盛り付ける人、また1人の作家の器をいくつも選ぶ人や、2~3人の作家から均等に選ぶ人も」

そう話すのはSHIMA DELIオーナーで、食べ歩きが大好きな原田高行さん。コロナ禍前までカレー店を営んでいたが、その後、調理担当者と2人で一からメニュー開発に取り組み、SHIMA DELIを開いた。野菜はすべて淡路島産。人気の欧風カレーには淡路牛を使う。

作家の器を、日常づかいしてほしい

島内の陶芸作家の元へは、ほぼ飛び込み訪問。淡路島の魅力発信のためにと、協力を呼び掛けた。

並ぶ器は、淡路島の土のみで作る作家の器や、スペイン人作家の故郷の空をイメージした深い青色の器など、作家の個性を反映したものばかり。全て手作りだから微妙に形や模様が違ったりして、一つとして同じものはない。

 

日本の三大瓦産地の一つ「淡路瓦」で有名な淡路島は焼き物も盛んで、現在も多くの陶芸作家が活動する。

「日頃から良い器を使っていると、生活が潤います。協力いただいた5人の作家さんたちも食卓で使ってほしいという人ばかり。冊子を置いているので、もし気になる作家さんがいたら訪ねてみてください」

 

障がい者が活躍できる事業をと生まれたSHIMA DELI

現在SHIMA DELIの調理には、4人の障がい者が携わっている。彼らは清掃をはじめ、エビの背ワタ取り、デリバリー用のお弁当の盛り付けやシール張りといった作業をこなす。

原田さんは、同じ洲本市内にある豊生ケアサービスの代表取締役という顔を持つ。障がい者の就労に目を向けたきっかけは、放課後等デイサービスでの子どもたちのずば抜けた集中力だった。そんな能力を持つ彼らも、就労には苦労する。原田さんはその原因の一つが、マルチタスクを求める企業にあると考えている。健常者が簡単にこなせるマルチタスクでも、多くの障がい者にとっては困難だ。

「マルチタスクに対するミスマッチを無くさなければ就労は困難なまま。企業の理解や工夫など、障がい者の能力を最大限に発揮できる土壌づくりが必要です」

一方で障がい者にも、ある程度のスキル修得が必要と考える原田さん。SHIMA DELIでは業務フローを細分化し、10段階の評価基準を作った。「〇〇が〇回できたらクリア」など誰にでも分かりやすいよう、目標を細かく設定して数値化している。

「改善しながら進めています。障がい者の方も、目標達成できたらモチベーションも上がります。私が目指すのは就労継続ではなくて、卒業。一般就労できれば、地域の人手不足の解消につながるかもしれません」

淡路島のおいしい食材で作ったヘルシーメニューを提供する飲食事業に、島の作家たちの器を組み合わせたSHIMA DELI。それは、バックヤードで障がい者のマンパワーを活用する事業をしたいという思いから生まれた店だった。

「この活動が、障がい者と企業とのマッチングのヒントになれば。さらに淡路島の魅力をトータルで発信し、それが地域の活性化につながればうれしいです」

SHIMA DELIインスタグラム https://www.instagram.com/shima_delica.delivery/

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