「話す内容を考えてから…」若い世代の”電話恐怖症” 大学教授が分析「リスクを避けたいのでは」

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 「電話が苦手と感じる人はいますか」と質問すると、教室にいた8人中6人がおずおずと手を上げた。

 京都市北区の京都産業大で11月、伊藤公雄教授(文化社会学)の協力を得て、授業に出た21~22歳の4年生に聞いた。

 「電話はほとんどしない。(文字のやりとりの方が)落ち着いて考えながらできる」と女子学生は明かす。別の学生は「もしかけるとしたら、これを話そうとか、話す内容をちゃんと考えてから」だという。

 電話番号の登録数も少ない。ある女子学生は「6件です。家族とバイト先だけ」。3人は7~15件で、他は30件前後だった。

 近年増加している人工知能(AI)による飲食店予約電話代行サービスをどう思うか。学生は「よいと思う。飲食店への電話も緊張するし」と話した。

 セゾン自動車火災保険(東京都)の2020年調査で「電話恐怖症」の割合は4割に達した。自宅や勤務先の固定電話が鳴ると緊張する、友人らに電話をする際はLINEなどで事前に連絡する、などの各種項目に一定条件下で該当した人を恐怖症と定めた。

 LINEなどで連絡や手続きをできる流れが進めばよいとする割合は、20代の男女がいずれも60%で、60代男女と比べて13~23ポイント高かった。

 京産大の伊藤教授は「文字のやりとりは、読んで考える余裕がある」と指摘。電話は返答を即座に考えないといけないため、「失敗のリスクを避けたい面があるのだろう」と話す。若い世代について「他人を傷つけたくないし、傷つけられたくない。心理的安全性を担保されない、見知らぬ人とのコミュニケーションは苦手」とみる。

 電話が近未来に一掃されるとは少々考えづらい。京産大で意見を聞いた学生は来年には就職を予定する。4人が「会社での電話に不安がある」とし、一部は「研修があれば受けたい」と克服への意欲を示した。

 上の世代が若年層の心情やスタイルに歩み寄る必要もある。昨今では、新入社員らに電話対応を強いれば「テルハラ」と呼ばれかねない。旧来の感覚のままでは若年層の離職などにもつながりかねない。学生たちに、中高年層に求めたい対応を聞くと、こう返ってきた。「電話は、できるだけ、かけてもらわない方がうれしいですかね」

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