【プロが解説】売却した自宅に賃貸で住めると話題の「リースバック」 向いている人、そうでない人の違い教えます

國松 珠実 國松 珠実

自宅売却後も、家賃を払いながらそのまま住み続けることができる「リースバック」が人気です。ところが不動産会社によると、リースバックをお勧めしたい人とそうでない人がいるそう。どんな人にお勧めしたいのでしょうか? そもそもリースバックとは? 不動産売却一筋15年で「売り主のミカタ」のIESUKU代表・田端梓さんに聞きました。

最近よく聞く「リースバック」って?

――最近「リースバック」という言葉をよく聞きます。

リースバックとは、売却した自宅にそのまま家賃を払いながら住み続けられるものです。売却資金を一括で手にでき、しかも引っ越さず住み慣れた家に居続けられるのがメリットですね。実は以前からあったのですが、大手不動産会社が宣伝したことで人気が出ました。 

――良いことばかりみたいですね。

もう少し詳しくお話しましょうか。
リースバックの特徴の1つ目は、家の売却相手が一般の人ではなく、不動産業者や投資家などのビジネス目的の人たちです。かなり条件に左右されますがリースバックの買取り価格は、市場価格の7~8割です。

――あれれ?高く売れないんですか?

そうですね。でもまとまった資金が一括で手に入ることに変わりはありませんよ。

特徴の2つ目は、家賃が売買代金によって変わることです。市場の相場は関係ありません。例えば売買価格が1000万円の場合、そのうちの10%が年間家賃の目安。この場合10%は100万円で、それを12カ月で割って月約8万円の家賃という計算です。

――最近マンションを買った友人がいますが、月々10万円以上払っているのに、隣の部屋が9万円で賃貸に出されているとぼやいていました。相場に関係ないなら、もし月々の支払いを安くしようとリースバックしても、9万円にならないかも?

そうですね。家賃は売買代金を元に算出するので、ご友人の部屋の価値が高ければ、9万円以上の家賃になるかもしれません。

他に、地域性もあります。都市部だと住宅の価値が下がりにくいので、年間家賃も10%より低くなる傾向がありますが、地方だと都市部より家の価値が低いため10%より高くなる可能性があります。

――やっぱり高く売って安い家賃に、というのは難しいそうですね。

家賃の額は変えられるかもしれませんよ。特徴の3つ目は、売買代金と家賃をカスタマイズできることです。

先ほどリースバックで、売買価格1000万円の家の家賃8万円の例を紹介しましたが、売り主が「売買代金は多少下げてもいいから、家賃を安くして」と希望した場合、「では800万円で買い取るから、家賃を5万円に」といった交渉が可能です。

――そんな話し合いができるんですか?

はい。売買代金を下げれば家賃も下げられます。売る側と買う側の互いが将来を見越して、なるべく損のない交渉ができます。

高齢者やまとまった資金が必要な人は、リースバックがお勧め

――リースバックは、どんな人にお勧めですか?

まずご高齢の方です。子どもへ相続する予定がなく、ご夫婦のうち1人が入院や施設に入るなど、まとまったお金が必要なのに捻出できないといった場合ですね。この場合、自宅を売却して資金を作るよりもリースバックを勧めます。

――引っ越しの負担もないから良いかも!

住み慣れた家を離れるのはお辛いでしょうし、賃貸にすれば固定資産税やマンション管理費も必要ありません。

もう1つが、いろいろな理由でまとまった資金が欲しい方です。例えばカードローン。300万~400万円も借りれば、月々の返済は15万~20万円になるでしょうし、元金もなかなか減りません。そこでリースバックして、例えば持ち家が500万円で売却できたら一括返済できますよね。家賃が7万~8万円なら生活を立て直す目途も立つでしょうし、何より気持ちが楽になるはずです。

――ちなみに将来、売却した自宅を買い戻せますか?

はい。買戻し特約を付けておけば、手続きもスムーズですよ。

あとは、生活保護を受けたい人です。現在の制度では、持ち家があると生活保護を受けられません。しかし高齢者や障がいのある家族の介護や、親から家を相続した住民に障がいあるなどで、生活が困難な人がいます。条件さえクリアすれば、リースバックをご検討いただいています。

家の資産価値が高い人は、リースバック以外の方法を

――逆にリースバックを勧められない人は?

家の資産価値が高い方です。リースバックは売買価格が高いと家賃が高くなります。また住宅ローンが残っていると、売買価格で相殺する必要があるため売却価格も高くなり、売買価格のカスタマイズもできません。

――じゃあ、家を購入したての人には勧められませんね。

ええ。先ほどのご友人のように、月々の支払い額を押さえる目的でリースバックを検討する人も多いのですが、条件が合わず、普通に売却した方が良いケースがほとんどです。

――リースバックで気を付けることはありますか?

売却して賃貸の手続きをするとき、覚書も交わさず「定期建物賃貸借契約」を行う業者には気を付けましょう。普通の賃貸借契約は2年契約で自動更新されますが、「定期建物」が付くと2年で出なければならないからです。

不動産会社によっては定期建物賃貸借契約と、再契約に応じる旨の覚書を交わします。これは業者が、家賃を滞納されたときのリスクに備えるためです。でも中には覚書すら交わさず、相場より安く買い取った住宅を2年後に転売し、利益を得ようとする不動産会社もあります。

――「定期建物」の文字が出てきたら気を付けます!

リースバックを扱う不動産会社は増えていますが、マンションは扱うけど戸建てはしないとか、エリアを限るという業者も多いです。事前にチェックしておくことをお勧めします。

――ありがとうございました。

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