「1日でも長く楽に過ごして」鼻のがんで闘病中の元繁殖犬 嗅覚はなく目も見えないが…余命を家族と穏やかに「とても良いお母さんだった」

渡辺 晴子 渡辺 晴子

「元繁殖犬で、盲導犬一頭、繁殖犬二頭を産み育てました
1日でも長く楽に過ごしてくれるよう、家族みんなで過ごしています」

闘病中の元繁殖犬とともに過ごす家族の投稿がInstagramで話題になりました。

投稿したのは、家族のかばさん(@iekabak)。元繁殖犬は、ラブラドールレトリバーのつぼみちゃんといいます。11歳7カ月の女の子。現在、鼻腔内未分化癌(がん)を患い闘病しているとのこと。嗅覚はなく、鼻が通っていないため口呼吸、目も腫れてしまいほとんど見えていないそうです。そんな懸命に生きるつぼみちゃんにたくさんの励ましやいたわりの声などが寄せられています。

「つぼみちゃん、お母さんとして頑張ってくれてありがとう 子供ちゃんも盲導犬として誰かのお役にたって頑張ってくれてるんですね」
「なにもできませんけど辛くないよう願ってます」
「飼い主様に愛情たっぷりうけて、穏やかに過ごされてるのを感じます。応援してるね」
「盲導犬は人間のために一生懸命働き、そして犬も人のために役立てることに喜びを感じてると私は思っています。繁殖犬についての是非は別として、役目を終えたつぼみちゃんは今度は病と戦っていますが、幸いにもこんなご家族とともに過ごせて幸せです」
「偶然つぼみちゃんの事を知り余りの可愛さと頑張っている姿を見て自分の病気が何でも無い様に思えて…本当に元気を貰っています」

多くの人たちからエールを送られたつぼみちゃん。これまでの”犬生”や闘病中の様子などを、ともに生活を過ごしてきた家族のかばさんに聞きました。

【追記】12月15日に記事を作成後、つぼみちゃんは19日に虹の橋を渡りました。家族に支えられながら懸命に生きた在りし日のつぼみちゃんについて読んでいただければ幸いです。

2021年に繁殖犬を引退、2年後の今年2月に鼻血が出てがんが発覚

――つぼみちゃんをおうちにお迎えした経緯を教えてください。

「我が家でパピーウォーカー(※)として預かり、繁殖犬適性検査に合格したのでそのまま繁殖犬ボランティア(※※)に移行しました」

※パピーウォーカー:盲導犬候補の生後2カ月前後の子犬を約1年間、一般家庭の中で飼育する里親ボランティアのこと。
※※繁殖犬ボランティア:盲導犬になるための子犬などを産んでくれる犬たちを預かるボランティアのこと。

――現在闘病中のつぼみちゃんは、元繁殖犬とのこと。

「パピーウォーキングが終わると、盲導犬適性検査か、繁殖犬適性検査を受けます。つぼみの場合は盲導犬は受けず、繁殖犬適性検査を受けて合格。その後2回出産し、そのうち他県や他国に行った子もいます。繁殖犬に2頭、盲導犬に1頭合格し、子どもたちは活躍してくれています。そして、つぼみは2021年に繁殖犬を引退しました」

――つぼみちゃんが鼻腔内未分化がんになったのはいつ頃?

「今年の2月頃に鼻血が出て、でも最初はたまにだったので様子を見ていたのですが、4月に頻繁になり、精密検査を受けてがんが発覚しました」

余命3ヶ月〜半年と宣告されたが…大学の治験を受け、進行を遅らせ8カ月経った

――病状は。

「鼻腔内にがんが『スポンジに含んだ水のように』広がり、それが頭蓋骨を溶かして前の方に進んできました。前に広がるか、後ろ(脳の方)に広がるかパターンがあるようですが、つぼみの場合は主に前に広がっています。現在前の方の頭蓋骨はほとんど溶けてなくなってしまい、腫瘍と分泌液が皮膚の下にあります。まぶたや鼻筋にも広がっているので、鼻は通っておらず、目もふさがってしまいました。口呼吸で頑張っています。見えないし、かげないので食欲はゼロでそこが苦労しています…」

――どんな治療を受けていますか?

「手術や放射線、抗がん剤治療は時すでに遅しだったのですが、幸い某大学の治験を受けることができ、進行をかなり遅らせることができたと感じています。余命3ヶ月〜長くて半年と言われてから、8カ月経ちました。現在は緩和ケアで、週に一度分泌液を抜きに通院し、鎮痛剤等を家で飲ませています」

――闘病中のつぼみちゃんの様子をお聞かせください。

「食べる気力がなくて強制給餌のため、必要なカロリーをとることができず、どんどんやせてしまっています。そのため寝てることが増えました。普通は鼻呼吸できないと苦しくて大変みたいですが、つぼみは口呼吸が上達したので良いポジションになると熟睡できています! 明るい時間に目が覚めてたらお散歩に誘うようにしています。カートに乗せますが、歩きたいときは歩かせています。パピーウォーカー時代からしつけておいたリードコントロールのおかげで、リードの指示と声掛けで目が見えてなくてもさほど不安がらず歩けています。ちゃんとしつけておいて良かったなと思っています」

――つぼみちゃんは、どんなワンちゃんですか?

「パピー時代は『前向きな自己中』と言われました。よくいえば動じず自分を保つのが得意、悪く言うとガンコで、繁殖犬に向いていると言われました(笑)。とてもマイペースで、ベタベタした関係が嫌いてドライ! あまりアクティブな方ではなく、水が大嫌いで地面が少しでも濡れていると歩きたくない、砂利道キライ、ぐちゃぐちゃな布団はイヤ、と繊細な面もありますが、とても優しく穏やかで、賢いです。産後は子煩悩でしたね〜! とても良いお母さんだったと思います」

――かばさんご家族は、つぼみちゃんとこれからどのように過ごしていきたいでしょうか。

「とにかくつぼみが1日でも長く『楽に』いてくれたらなと思っています。敏感に家族の気持ちを察するので、私たちはなるべく明るく楽しく普段通りを心がけ、よりマイペースになったつぼみの意思を理解しながら、のんびり穏やかに過ごしたいですね」

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