乗降客数が少ないのに…なぜ? 阪急・岡本駅に特急が停車する不思議 実は中間駅の利用者にも気を配った“一石二鳥”の策でした

新田 浩之 新田 浩之

一般的に特急が停車する駅は利用客が多いのですが、必ずしもそうとは限りません。これに該当するのが阪急神戸本線の岡本駅です。岡本駅は二つ隣の六甲駅よりも乗降客が少ないですが、特急をはじめ全種別が停車します。なぜ、岡本駅に特急が停車するのでしょうか。

岡本駅と六甲駅の現状

岡本駅は神戸市東灘区にあり、神戸市の東端に位置します。1995年6月より特急停車駅になり、神戸三宮駅まで7分、大阪梅田駅まで20分でアクセスできることから、利便性の高い駅といえます。1日の乗降客数は23603人です。

六甲駅は神戸市灘区にあり、岡本駅から4キロ西に位置します。六甲駅は1日の乗降客数が24672人と岡本駅よりも多いのですが、特急停車駅ではありません。準特急、急行、通勤急行が停車しますが、日中時間帯に優等列車は止まりません。

JR西の駅との関連性が重要

岡本駅に特急が停車する理由として、以前から指摘されているのがJR摂津本山駅の存在です。摂津本山駅は岡本駅から徒歩5分ほど。同駅は各駅停車しか止まりませんが、1990年代に利便性がアップした駅です。

摂津本山駅から二つ東隣りの駅は芦屋駅です。1990年、日中時間帯に限り芦屋駅に新快速が停車するようになり、複々線を活かして同駅で新快速と普通が同時に発着する「同時接続」が行われました。この改正により、摂津本山駅から大阪駅へのアクセスが飛躍的に向上したのです。

1995年以前の岡本駅は特急停車駅ではなく、日中時間帯は優等列車は停車しませんでした。梅田(現大阪梅田)へは西宮北口駅で特急に乗り換えるわけですが、JRのように同時接続ではありません。

そのため、JRに対抗するために特急を岡本駅に停車した、というわけです。一方、六甲駅の南にはJR六甲道駅がありますが、岡本駅~摂津本山駅間ほど至近距離ではありません。

六甲駅の通過待ちの解消が大きかった

岡本駅に特急が停車する理由として、もう一つ考えられるのが六甲駅での特急通過待ちです。

六甲駅は新幹線駅のように、特急などの優等列車が普通を抜かせる構造になっています。しかし、西宮北口駅のように特急・普通の相互乗り換えはできません。六甲駅が現行の構造になったのは1968年のことで、それ以前は相互乗換えが可能な駅でした。

1995年以前、平日昼間ダイヤでは六甲駅にて普通が特急に追い抜かれ、同駅での特急通過待ちは夙川~春日野道間の利用者をイライラさせていました。余談ですが、筆者の祖母も「三宮へ行くのに、阪急は六甲駅で待つからイヤ」とぼやいていたものです。

特急が岡本駅に停車することで三宮(現神戸三宮駅)への所要時間が延び、普通は三宮まで逃げ切れることに。よって、昼間時間帯の六甲駅での特急通過待ちは解消することになりました。沿線では特急の岡本駅停車と同じくらい、六甲駅での昼間時間帯の通過待ちの解消はインパクトがありました。

「もし」は禁句かもしれませんが、六甲駅が西宮北口駅のように特急・普通の相互乗換えができる構造だったら、また違った結果になったかもしれません。

その後、2006年にJRさくら夙川駅開業に対抗する形で、夙川駅が特急停車駅に。同時に、特急の最高時速は110キロから115キロにアップ。大阪~神戸間の速達性を維持しながらも、中間駅の利用者にも気を配る姿勢を貫いています。

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