飼育放棄の大型犬「タダで持ってきなよ」いきなり耳を疑う言葉→汚れと臭いがひどく衝撃、「この子を置いておけない」と家族に

渡辺 晴子 渡辺 晴子

「ちょっと飼いきれなくなったのがいて、それと同じ犬なんだ。タダで持ってきなよ」

元飼い主から飼育放棄された大型犬を保護した愛犬家のエピソードがInstagramで話題になりました。

投稿したのは、愛犬家のグラ家さん(@guradayo)。グラ家さんがとある場所に3匹の飼い犬を連れて娘さんとともに出掛けた時のこと。グレートピレニーズのグラくん(雄・2歳9カ月)を歩かせていると「それ種類なに?」と男性から声を掛けられました。「グレートピレニーズ(以下、ピレニーズ犬)です」と返事をすると、「それと同じ犬いるんだけど持ってかない?」「それより大きいよ」「タダでいいよ」と言われたとか。突然の申し入れに驚いたというグラ家さん。聞き間違いだと思いつつも、男性は「あそこにいるんだけど」と指を差しました。差した方向を見たらピレニーズ犬の姿が…3歳くらいの男の子でした。

とにかくグラ家さんはその子に会ってみようと「あの子を見せてもらってもいいですか?」と聞くと、「いいけど、そんなきれいじゃないからね」と男性。グラくんをいったん車に戻し、案内してもらったところ、屋根のない柵に囲まれた4畳半くらいのスペースに1匹のピレニーズ犬。コンクリートの地面にはふんがいくつかあり、水が入った寸胴鍋などが置いてありました。グラ家さんたちが来たのが分かるとすぐに近寄ってきたといいます。

「ひと目見てめちゃくちゃ汚れているのが分かりましたし、こんなピレ見たことないと衝撃を受けました。でもとってもかわいいなと思い『どうしたのー?おりこうだねー』と声を掛け、持ち上げてきた頭とおでこをなでると、柵に前足をかけてもっと近づいて来てくれました。かわいそうだなと思いました。その時は胸がいっぱいで…『おりこうだねー』と声を掛けてなでることしかできなかったです。おとなしそうで優しそうだな、かわいい子だなというのが第一印象でした」

大型・小型犬6匹飼う愛犬家 その場で汚れた毛をカット、犬を車に乗せて連れ帰った

しかし、グラ家さんのおうちには大型、小型犬合わせて既に6匹いたこともあり、もう1匹の大型犬を受け入れることに迷い悩みました。ただ、グラくんとドーベルマンのデュークくん(雄・1歳)、ミニチュアダックスのきゅーたくん(雄・8カ月)たちを柵越しにピレニーズ犬と会わせてみたところ、グラくんたちは穏やかに全く問題なくあいさつができたといいます。

そんな先住犬たちとの触れ合いを見て、グラ家さんは「この子をここに置いておけないし、この子ならうちに来ても大丈夫かも」と思い立ち、おうちに連れ帰ることを決意。とにかく尿が染み付き汚れと臭いがひどかったため、ピレニーズ犬を車に乗せる前にハサミを借りて大まかに汚れた部分の毛などをその場でカットして。背中の毛にハサミを入れると、茶色いゴマのようなノミの死骸と思われるものが付いていたりと…1時間半ほどかかって汚れた毛を切ることができました。そして帰宅途中に、グラ家さんはピレニーズ犬を耳の大きさが特徴的だったことから「ダンボ」くんと名付けました。

家に着いたのは夜。犬たちにご飯をあげた後、グラ家さん家族は小型犬用の小さいバリカンで少しずつ刈っていく係と、毛玉をハサミで切る係に分かれ作業に。その日は深夜まで切った後、残りの毛刈りは翌朝に持ち越し、昼過ぎにようやくシャンプーができるようになりました。

「もつれた毛にバリカンが入りにくく、とても大変でした。トータル11時間の毛刈りとシャンプーは3回しましたが、短くしなかった頭の毛と手足のベタつきと黄ばみはとれませんでした。コンクリートの上にずっといたからなのか、お手入れされていたのかは分かりませんが、爪はすごく短かったのが印象的でした。口の中を見ると年齢のわりには歯石が溜まっており、歯茎も少し腫れていて口臭もありました。歯にコケのようなものもついていて水入れの鍋の内側をコケのようなものが覆っていたので、その水を飲んでいたからかなと思いましたが、今は取れました。歯石に関しては去勢手術の時に取ってもらう予定です」

耳が大きい「ダンボ」との出会い…愛犬家「動物と暮らす限りは最後まで責任を持って迎えることは当然」

ダンボくんはグラ家さんのおうちにやって来て、ようやく汚れていた体をきれいにしてもらえました。

「とても賢い子だと思います。ダンボという名前もすぐに覚えた様子でうちに来て2日くらいで呼ぶと近寄ってきました。ただ、寂しい思いをしていたからなのか、うちに来てしばらくはずっと誰かの後追いをして、顔をぐーっと近づけて常に誰かに触れていました。他の子がボールやおもちゃで遊んでいるのをじっと見ていたので、目の前にボールを転がしても音が鳴るおもちゃもじっと見るだけで興味がなさそうで。それよりもなでてほしい仕草をしていました。そもそもフードを食べる時以外ほとんど口を開けなかったので、口の中が痛いのかと心配でしたが、今考えると緊張のせいだったようです。

また数時間おきに庭に連れて行きおしっこをするように促していましたが、なかなかタイミングが合わず、家の中そこらじゅうにおしっこをしていました。成犬にしては回数も多くおしっこシートの場所を覚えるまでは本当にずっと床を拭いていましたが、おしっこシートにすることを覚えるのも早く『天才だね』と家族で感動したり。うちに来て2カ月になろうとしていますが、だんだんと自分を出してきているようで、フードの袋を破って食べようとしたり、トイレシートをめちゃめちゃに破ったり。『保護犬は大きいパピー』と聞いていましたが、まさにその通り。やんちゃでおちゃめなところもかわいいです。人間は大好きなので、以前かわいがられていたのかなと思いました」

今回飼育放棄をした元飼い主から保護したダンボくんとの出会いについて、グラ家さんはこう訴えます。

「今年の3月にも友達から声がかかり、ブリーダーの多頭崩壊の所からダックスの親子を連れて帰ったこともあり、世の中には知らないだけでつらい思いをしている動物たちが意外にも身近にいるんだなと感じていました。ですが、保護活動に携わっていない私たちが、1年も経たないうちに次はダンボを保護することになるとは思いませんでした。ダックスの時は親子を連れ帰り、子犬は前日産まれた子たちでした。玄関前に立っただけで悪臭がひどく、その中でひとりで出産した母犬がとてもかわいそうで。きゅーたはこの時連れ帰った子犬4匹のうちの1匹で、里親に出しましたが『やっぱり育てる自信がない』とうちに戻ってきた子。その時のこともあり、保護犬でもショップからのお迎えでも、最後まで面倒を見れるのかよく考えてお迎えしてほしいなと思いました。ブリーダーでも一般の人でも、動物と暮らす限りは最後まで責任を持って迎えることは当然だと思います。

ダンボのように体の大きい子は運動量もたくさん必要ですし、ごはん代や医療費もかなりかかりますし、理想と現実が違うことも多々あります。ダンボを連れ帰る時も自分たちが最後まで責任を持って育てられるのか、もし病気になったらどうするのか、散歩やお世話や掃除など今まで通りやっていけるのかなど、とても不安に感じていました。その気持ちを元飼い主に伝えたところ、『病気になんかなんねーよ』と言われ、やっぱり置いては帰れないと覚悟を決めたんです。ダックスの時も今回も、『そうやって救う人がいるから棄てる人がいるんだ』とか、『犬より人間優先でしょ』などと言われました。世の中いろんな人がいるので、賛否両論あるのは当然です。でもきっと犬猫には人間と同じような感情があると思うので、自分がされたら嫌だなということはやらないでほしいです。ダンボは優しく賢い子ですが、いまいち社会のルールをわかっていないと感じるので、その辺のルールを教えながらこれから一緒に楽しく暮らしていきたいです!」

グラ家さんのおうちには、保護したダンボくんをはじめグラくん、デュークくん、きゅーたくんのほか、トイプードルのブリちゃん(雌・16歳)とポメプーのリクくん(雄・8歳)、ポメラニアンのハニちゃん(雌・5歳)の7匹のワンちゃんが暮らしています。

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