実際に注文住宅をするなら、雑誌やテレビなどで紹介されているようなおしゃれな家に憧れて、それと近いことをする方も多いかと思います。しかし、デザイン性重視で注文住宅を建ててしまうと、後々困ったことも起きてしまうようです。
友人の家に招かれて
Kさん(埼玉県在住、30代、専業主婦)は夫(40代、大学教授)と子ども二人(小学2年生、小学5年生)の4人家族です。賃貸マンションの広い部屋に4人で住んでおり、家賃も16万円ほど毎月かかっていました。
ある日、大学の時の友人のSさんが、注文住宅をして家が完成したというので遊びに行かせてもらうことになりました。新築の友人の家は、白を基調とした壁に、無垢の建具やフローリングを組み合わせた、ナチュラルなデザインで落ち着いた空間になっていました。
キッチン一つとっても、大型の食洗機や、オーブンや大きなカップボードの収納などもついていました。断熱性能も良く、少し肌寒い日ではあったのですが、家の中は暖房器具がついていなくても暖かかったです。
このくらいの注文住宅はいくらかかるのか?と、気になって仲の良い友人でもあったので聞いてみたら、家だけで6000万円ほどかかったとのことでした。それは確かに立派な家が完成する訳だと納得してしまいました。
夢の注文住宅
友人の家に遊びにいってから、注文住宅への憧れが強くなったKさんは、自分で色々調べて見ることにしました。大手のハウスメーカーから地元の工務店など様々なところにお願いできることを知りましたが、自分の好きなデザインがありそうな、大手メーカーに話を聞きに行くことにしました。
後日、夫と子ども達を連れて、住宅展示場に行き実際に展示場を内覧させて頂きました。
そこは、友人の家とはまた違ったデザインで、ホテルのようなかっこいい空間に仕上がっていました。
営業担当者曰く、こだわりたいところにこだわり、そうでもない所はお金をかけないようにすれば、予算内で進めていくことができると教えてもらいました。元々、インテリア関係の仕事をKさんはしていたので、おしゃれな家に住みたいという気持ちが強く、そういった提案をしてもらいながら進めていけるならありがたいなと思い、他にも色々なところに話を聞きに行きましたが、最初のハウスメーカーにお願いすることにしました。
完成してから気づいた問題点
それからの打ち合わせはとても楽しく進んでいきました。予算も3500万円と限られた中で、こだわるところはとことんこだわり、削ってもいいかなと思うところは予算を落としていきました。
そして初めて話を聞きにいってから約1年後に、家が完成しました。仕上がりは、自分がイメージしていた通りのマイホームでとても満足する仕上がりになり、家族4人で幸せに暮らし始めました。
しかし、住んでみると予算を削った部分が気になるようになりました。
1つ目は、収納の扉を付けなかったことです。寝室だからお客さんが来るわけでは無いから良いかな?とも思ったのですが、やはり見えることによりごちゃごちゃしてしまい気になります。
2つ目は、ベランダの屋根を付けなかったことです。費用がかかってしまうところではあったので、削ってしまいました。問題点は、雨の日は洗濯物はもちろん干せなくなり、雨が降った後はベランダがすごく汚れてしまいます。
3つ目は、洗面台をデザイン重視にしてしまったことです。デザインは間違いなく良いのですが、子ども達が手を洗った後は床が水浸しになってしまいます。一見おしゃれに見える物も毎日のことを考えたら、機能性重視で選ぶべきだったと後悔しています。
全体的には今回の注文住宅は満足していますが、Kさんはおしゃれな家に住みたいという気持ちが強かったのを、もう少し利便性にむけれたら、もっと良いマイホームが出来たと思うと教えてくれました。
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注文住宅で注意するべき点はどこなのでしょうか?アルファホーム名古屋株式会社で不動産仲介や注文住宅のアドバイザーをしている川本麻登さん聞きました。
ずっと住み続ける家…慎重に考えて
ーーデザイン重視は、住むときに不便することが多いのでしょうか?
私はKさんのように、おしゃれな洗面にするということは注文住宅の醍醐味でもあるので良いかとは思います。しかし、その分「こんな問題が起きるかもしれない」といったようなことを、設計士の方から教えてもらえたりすると良かったのかもしれませんね。
一般的な建売住宅などでは、設備系はおしゃれというより、性能が良いものを入れることが多いです。それは万人受けする方が販売しやすいからです。ですので、こだわりのある方には、どちらかと言えば我慢しなければいけない場所になってしまいがちですね。
ーー注文住宅で注意するべきところはどういったところでしょうか?
注文住宅は、一生に一度の大きな買い物です。土地選びから、今のライフスタイルにあっているかや将来不便しないかなど慎重に考えて選びましょう。
家を立てるときは、デザイン重視にするのも良いですが、どちらかというと私は、ずっと住み続ける家になると思うので、日々の家事動線をしっかりイメージして間取りを決めて行くことが大事だと思います。
最後に一番重要だと思うのは、無理のない返済プランを組めているかしっかり確認することです。打ち合わせをしているとつい理想が高くなり、借入金額も増えてしまうことが多くなりがちですので、打ち合わせの途中で一回冷静になって内容を精査して決めていきましょう。
◆川本麻登(かわもと・あさと)アルファホーム名古屋株式会社 マンションコーディネーター
https://alphahomenagoya.jp/