近鉄、阪急、阪神は11月2日に各社が管轄する全駅にてクレジットカード等のタッチ決済による乗車サービスを開始することを発表しました。サービス開始は2024年内とのことで、交通系ICカードに加え、新たな選択肢が増えることになります。
近鉄、阪急、阪神でクレカによるタッチ決済が可能に
近鉄、阪急、阪神でスタートする新サービスは三井住友カードが提供する公共交通機関向けソリューション「stera transit」を活用し、タッチ決済対応のカード(クレジット・デビット・プリペイド)やタッチ決済対応のカードが設定されたスマートフォンなどによる鉄道乗車サービスです。
ようするに、クレジットカードやスマートフォンをJR西日本が発行する「ICOCA」などの交通系ICカードのように、自動改札機の読取部にかざすことにより、改札機を通過できます。
対象駅は各社が管轄する全駅です。一方、自社の電車が乗り入れているものの、他社が管轄している駅、たとえば近鉄の竹田駅や柏原駅は対象外になります。
サービス開始は2024年内を目指します。阪神では駅長室や各駅係員窓口への専用リーダーの設置からはじめ、2025年春頃から全駅の一部自動改札機でも利用できるようにします。
他の関西私鉄では2021年から南海が実証実験という形で、クレジットカードのタッチ決済対応の読取部を設置した自動改札機を導入しました。現在は子会社の泉北高速鉄道も含め、全駅での導入を進めています。また、大阪メトロも2024年度からVisaのタッチ決済とQRコードに関する実証実験を行います。
交通系ICカード「PiTaPa」はどうなる?
近鉄、阪急、阪神のタッチ決済による乗車サービスは交通系ICカードを持っていない訪日観光客からすると、大変助かるサービスかと思います。一方、気になるのは既存の交通系ICカード、特にスルッとKANSAI協議会が展開する「PiTaPa」です。
「PiTaPa」は2004年に誕生したポストペイ(後払い式)の交通系ICカードです。ところが、「PiTaPa」は苦戦が続いています。
2023年8月末時点で「ICOCA」の発行枚数は約3000万枚にのぼります。一方、「PiTaPa」の会員数は約330万人にとどまっています。また、JR西日本は3月から「モバイルICOCA」のサービスを開始。スマートフォンからどこでもチャージができるようになりました。2023年11月現在、「PiTaPa」にはモバイルサービスはありません。
ところで、「PiTaPa」は三井住友カードが関わっています。先述したように、今回のタッチ決済サービスも同じく三井住友カードのサービスを活用します。すでに「ICOCA」が関西大手私鉄でも使え、新サービスが「PiTaPa」と同じ三井住友カードの技術を用いるところはなかなか興味深いポイントだと思います。