飼い主から意図的に捨てられるワンコが後を絶ちません。行き場を失ったワンコの大半は、全国各地にある動物愛護センターに収容されることが多く、そして一定期間を過ぎても引き取り手が現れない場合は、殺処分対象になってしまいます。
2023年7月に埼玉県の動物愛護センターに収容された丸っこい外見がかわいいパグのワンコも飼い主から捨てられた1匹でした。
一定期間飼い主や引き取り手からの名乗りを待ちましたが、連絡はありませんでした。動物愛護センターの職員は、これまでに多くのワンコを引き出してもらってきた犬保護団体restartdog LIEN(以下、リアン)に依頼。リアンのスタッフは迷うことなく、このパグのワンコを引き出すことにしました。
スタッフがトイレに行くだけでも寂しがる
保護されたこのパグは後に「ずんだ」と名付けられました。推定年齢7歳ほどのオスで性格は極めて穏やか。パグ特有のしわくちゃな顔、そしておでこと耳の一部が黒いかわいいワンコです。
いずれ新しい里親さんとのマッチングを目指すわけですが、いったんリアンに所属する預かりスタッフさんの家で暮らすことになりました。この家には先住犬がいますが、ずんだは他のワンコとの協調性を持っており、すぐに仲良しになりました。
預かりスタッフさんの家に溶け込むにつれ、保護当初は見せなかった一面も見せるようになりました。後ろをくっついて歩いたり、姿が見えなくなると「どこにいったの? 置いてかないで!」と言わんばかりに寂しそうに鳴いたりと、本来のずんだは寂しがりやの甘えん坊のようでした。トイレにもついて来て、ドアをカリカリと掻いて「早く出てきて!」と催促することも。
「そんなに寂しがらなくても大丈夫だよ。ずっとそばにいてあげるからね」と優しくずんだに声をかけてあげると、安心したような表情を浮かべ、そしてまた体を寄せて「なでて!」とおねだりしてくるのでした。
人間の食事をジッと見つめ続ける食いしん坊
ずんだは甘えん坊なだけでなく、人間の食事にも興味を持つほど食いしん坊。自分のエサを食べ終えていても、預かりスタッフさんが食事をしていると他の保護犬と一緒にテーブルの方を見つめてきます。「食欲があるのはよいけれど、人間の食べ物はあげられないんだ。ごめんね」と優しく声をかけてあげますが、当のずんだはそれでも諦めきれない様子。預かりスタッフさんの食事が終わるまでじっと見つめています。
ずんだの問題点らしきものはこの程度で、体も健康、性格も良好であることからリアンでは程なくして里親募集をかけることにしました。
ずんだが着させられたTシャツに込められた思い
それから約1カ月後、リアンに「ぜひ、ずんだに会ってみたい」と連絡がありました。
里親希望者さんは、若い夫婦で旦那さんが「パグが大好きだ」とのことでした。面会の際、スタッフは旦那さんの真面目で優しい雰囲気に「この人なら信頼できる」と感じたそうです。
この里親希望者さんの家でトライアルすることになったずんだでしたが、その初日、旦那さんはずんだにTシャツをプレゼントしました。このTシャツは「いつか家族にパグを迎えられることがあったら」と、奥さんがパグ好きの旦那さんへと贈ってくれたものでした。
里親希望者さんは「いつかパグを迎え入れたい」と強く願っていたというわけですが、その「パグ愛」を感じ取ったずんだは、また思いっきり甘えん坊ぶりを発揮。見事、この里親希望者さんの家に「ずっとの家族」として正式に迎え入れられることになりました。
良い縁と巡り合えたことを、リアンのスタッフはおおいに喜び、そして巣立っていくずんだにこう声をかけてあげました。「いつまでもずっと幸せにね。でも、甘えすぎは少しだけ直してね(笑)」と。
犬保護団体restartdog LIEN
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LIENインスタグラム
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