現在放送中の連続テレビ小説『ブギウギ』。第3週「桃色争議や!」では、慢性的な不況が続き、梅丸少女歌劇団(USK)にも“リストラ”の危機が。そんな中、鈴子(趣里)の同期・和希(片山友希)が劇団を辞めたいと言い出す。花咲歌劇団から移籍してきた後輩で、同じ男役の秋山(伊原六花)の才能には、どうあがいても勝てないというのだ。
新しい演目の演出を任された娘役トップスターの大和礼子(蒼井優)は「誰も辞めさせたくない」と和希を引き止める。ちょっと昔の朝ドラならば、ヒロインが「熱い台詞」を言いながら、先頭を切って和希を引き止めることで“見せ場”を作るところなのだが、そうはしなかった。そこで鈴子は、
「ええんちゃいますか。逃げても」
「どうにもならんことって、ありますねん」
と礼子に言い、和希の事情に寄り添うのだった。そして鈴子は、娘役トップスターである礼子や、同期で有望株のリリー(清水くるみ)のような才能はないけれど、怖いけれど、「好きで好きでしゃあない」歌と踊りを、とにかく続けていくしかないのだと涙ながらに語る。
「本音で喋って、本音でやり取りする」ヒロイン
「『才能のない側』として設定されたヒロイン」というのが斬新だ。このシーンについて、制作統括・福岡利武さんに聞いた。
「普通ならヒロインが『皆でがんばっていこう!』とかなんとか言って、肩を組んで……となりそうなシーンですよね。でも鈴子は、おせっかい焼きではあるけれど『本音で喋って、本音でやり取りする』というベースの上での『おせっかい』なので、その鈴子のキャラクターで押していきたいという思いで、このシーンを作りました。
映画の脚本を何回応募しても通らないお父ちゃん・梅吉(柳葉敏郎)の、『続けるのがいちばん難しいねん』という台詞がその前にあって、鈴子自身、すごく揺れているところでもあります」
「USKのシーンは“部活のノリ”」
鈴子による涙の訴えのあと、「私だって、どうにもならないことはある」と、完璧に見えた礼子も「不完全で脆い一人の人間」であるのだと吐露する。男役トップスター・橘アオイ(翼和希)による「ほな稽古しよか。うちら続けていくしかないんや。それでひとつひとつ壁を乗り越えていく。永遠に修行や」という、噛みしめるような言葉に、鈴子たちは「嫌やなあ」と泣き笑い。そして全員で団訓「強く、逞しく、泥臭く、艶やかに」を叫ぶ。USKの皆のパッションが最高潮に達した名シーンだ。このシーンの撮影風景について、福岡さんはふりかえる。
「難しいシーンですが、撮影はとてもスムーズでした。事前に立ち位置の確認を行なったぐらいで、ほぼ一発撮り。皆さん台本をとても深く理解して、集中してくださって、心から撮影を楽しまれていたのがうれしかったです。非常に“熱い”場面なんですけれど、裏では皆、和気藹々と、楽しくやっていたのが印象的です。USKの稽古場のシーンは『部活みたいなノリだよね』と皆さんよくおっしゃっています(笑)」
熱く、泥臭いエンターテインメントの世界で、これから鈴子はどう成長していくのか。今後の展開が楽しみだ。
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『ブギウギ』
【出演】趣里 水上恒司/草彅剛 蒼井優 菊地凛子 小雪 水川あさみ 柳葉敏郎 ほか
【主題歌】「ハッピー☆ブギ」中納良恵 さかいゆう 趣里
【脚本】足立紳 櫻井剛
【音楽】服部隆之
【語り】高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
【放送時間】
▽NHK総合
毎週月曜~土曜 前8:00~8:15/(再)後0:45~1:00(※土曜は一週間を振り返り)
毎週日曜(再)前11:00〜11:15
翌・月曜(再)前4:45~5:00(※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送)
▽BSプレミアム・BS4K
毎週月曜〜金曜 前7:30~7:45
毎週土曜(再)前9:25〜10:40(※月曜~金曜分を一挙放送)