10月2日から連続テレビ小説『ブギウギ』がスタートした。大ヒット曲「東京ブギウギ」で知られ、「ブギの女王」として一世を風靡した笠置シヅ子をモデルに描いた、シリーズ第109作目となる本作。大阪の下町・福島で銭湯を営むで家庭に育ち、歌が大好きな主人公・花田鈴子(澤井梨丘/趣里)が「梅丸少女歌劇団」に入団し、やがて歌手・福来スズ子となり、歌の力でたくましく生きていく。毎朝「ズキズキワクワク」してしまうこと間違いなしのこのドラマの見どころを、制作統括・福岡利武さん、チーフ演出・福井充広さん、演出・泉並敬眞さんに聞いた。
どんなに踏まれても生き抜いていく、雑草のようなヒロイン
──笠置シヅ子をモデルにした朝ドラを制作することになった経緯と、ドラマの見どころを教えてください。
制作統括・福岡利武さん(以下、福岡) 「明るくて、力強い女性の物語を作りたい」ということを原点に、スタッフ間でいろいろアイデアを出していく中で、「笠置シヅ子さんが面白いんじゃないか」という話になりました。笠置さんは「東京ブギウギ」をはじめとした、明るくて楽しくて、力強い歌を歌われていますが、調べてみたらすごくドラマチックな人生を送った方だとわかりました。そして、「生活の人」という印象を強く受けました。笠置さんがスターとして立つステージの華やかさと、人情深くて愛情深い日常生活という2つの側面が、とても面白いなと。
チーフ演出・福井充広さん(以下、福井) 今までの朝ドラにないくらい、エネルギーにあふれるドラマを作りたいという思いで撮影しています。柱となるのは、「エンターテインメントの力」「雑草魂」「母と娘」という3つのキーワード。大きな見どころのひとつであるレビューのシーンはとにかく華やか。その反面、鈴子の人生は波瀾万丈で、いろんな不幸も経験します。そして、歌の力を借りてそれを跳ね除けていく。たとえるなら鈴子は、レストランに飾られている綺麗な花ではなく、どんなに踏まれても踏まれても生き抜いていく、雑草のようなヒロイン。やがて恋をして子どもを産み、歌いながら娘を育てていきます。
少女時代の鈴子役・澤井梨丘は「判で押したような芝居」をしない
──鈴子の少女時代を演じた澤井梨丘さんの抜擢の理由と、魅力を教えてください。
福井 ひと目見て、目の具合が趣里さんにそっくりだと思いました。オーディションでピカイチに光っていたんです。本作がドラマ初出演の澤井さんの演技は、子役子役した「判で押したような芝居」じゃないんですよ。初めてであるということが功を奏したというか、とても自然で。初出演のドラマで、柳葉敏郎さん(鈴子の父・梅吉役)や水川あさみさん(鈴子の母・ツヤ役)という大先輩を前にしたら、普通緊張して、自分の実力を存分に発揮できなかったりすると思うんです。でも、澤井さんはまったく臆することなく、そのままのピュアな佇まいで芝居に臨んでくれる。「自然で純真無垢で、無邪気な女の子」を、そのままカメラに収めることができたのが、「少女時代編」にとってはとても大きかったですね。
「少女時代編」では鈴子の人格が形成された「基礎」をしっかりと描きたい
──鈴子の父・梅吉(柳葉敏郎)と母・ツヤ(水川あさみ)は、鈴子にとってどんな存在でしょうか。
福井 脚本家の足立紳さんとは、「この親あってこの子あり」という面白おかしい夫婦を作りたいと話していて。第1週・第2週では、この両親のもとで鈴子のエネルギーあふれる人格が形成されたという「基礎」の部分をしっかりと描きたいと思いました。梅吉役の柳葉さんには大阪ことばのレッスンをかなりみっちり積んでいただいて、大阪のノリツッコミの世界に没頭していただいています。現場ではけっこうアドリブ合戦ですね。
演出・泉並敬眞さん(以下、泉並) 梅吉さんは一見ダメ親父に見えるんですが、とても可愛らしくて愛情深くて、人間味があるんですよね。僕は梅吉さんにどことなく、脚本の足立さんの空気も感じていて。足立さんってこんなことを考えてるのかなって、勝手ながら思ってしまうときがあります。
福井 ツヤ役の水川さんは大阪のご出身なので、大阪らしいテンポと間の素養がおありです。足立さんが書かれる台本の世界にすんなりと入っていける、懐の深いお母ちゃんですね。第1週・第2週の、鈴子に対するツヤの「目線」が、とても大きなポイントになっています。とにかくどんなことがあっても子どもの存在を認めて、受け止めてあげる、愛情いっぱいのお母ちゃん。鈴子というキャラクターの象徴的な仕草である「ゲラゲラ笑い」は、ツヤゆずりだと思います。
泉並 ツヤさんは家族だけでなく、あの小さな町の大きな肝っ玉母ちゃんなんですよね。水川さんが見事にそれを体現してくださいました。「はな湯」の休憩所に集まる常連さんたちからも絶対的に信頼されています。
草彅剛さん演じる羽鳥善一のシーンは、見ていて心から楽しくなります
──第1話冒頭から登場した、作曲家・羽鳥善一役の草彅剛さんの演技も楽しみです。
福岡 羽鳥善一はとても重要な役で、歌手・福来スズ子にとってキーパーソンとなる人です。音楽の力を信じていて、とにかく歌を作って人を楽しませたい、みんなで一緒に楽しみたいという人。僕は大河ドラマ『青天を衝け』(2021年)で草彅さんとご一緒したのですが、『青天を〜』では徳川慶喜という、時代の転換点で大きな決断をしなければいけない、非常に難しい役柄を演じていただきました。その中で、今度ご一緒する機会があるなら、草彅さんが本来持っている「明るさ」を表現できる役があるといいな、面白いんだろうなと思っていました。
『ブギウギ』のキャスティングを考えていたときに、いつも歌の力を信じて、明るく前に進んでいく羽鳥善一のキャラクターが草彅さんに合うんじゃないかなと思いました。実際に演じていただいたところ、最高に明るくて、想像を超えてピッタリでした。羽鳥のシーンは見ていて、心から楽しくなります。
BK朝ドラの「お楽しみ」、なつかしの小道具の“再登場”
──大阪局制作の朝ドラでは、『舞いあがれ!』(2022年)に『まんぷく』(2018年)の「まんぷくヌードル」や『カムカムエヴリバディ』(2021年)の「BUSHIDO COLA」が登場するなど、歴代のBK朝ドラの小道具が再登場するという「お楽しみ」がありますが、今回も登場しますか?
福岡 今回もあります。第1週では「はな湯」のどこかに『カムカムエヴリバディ』の“あれ”が登場しています。今後も「小道具の再登場」はいくつかあり、放送後のSNSと連動していますので、楽しみにしていてください。
──最後に、視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。
福岡 華やかなステージと、その裏の人情渦巻く世界。スズ子がスターへの階段を駆け上っていくターンでは、豪華で楽しい歌と踊りのステージが見どころです。その裏で、いろんな人と関わり、助け合いながら展開される「愛する人との物語」もとても見応えがあります。これから半年、楽しんでいただけたらうれしいです。
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『ブギウギ』
【出演】趣里 水上恒司/草彅剛 蒼井優 菊地凛子 小雪 水川あさみ 柳葉敏郎 ほか
【主題歌】「ハッピー☆ブギ」中納良恵 さかいゆう 趣里
【脚本】足立紳 櫻井剛
【音楽】服部隆之
【語り】高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
【放送時間】
▽NHK総合
毎週月曜~土曜 前8:00~8:15/(再)後0:45~1:00(※土曜は一週間を振り返り)
毎週日曜(再)前11:00〜11:15
翌・月曜(再)前4:45~5:00(※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送)
▽BSプレミアム・BS4K
毎週月曜〜金曜 前7:30~7:45
毎週土曜(再)前9:25〜10:40(※月曜~金曜分を一挙放送)