青い首輪の迷い犬 名乗り出る人はいなかった 眼球摘出を乗り越えトレーニングを積む日々 第二の犬生への大きな一歩

松田 義人 松田 義人

行き場を失い動物愛護センターに収容されるワンコは、「元野犬」と「元飼い犬」の2つに大別することができます。このうち元飼い犬の中には、首輪やリードがついたまま放浪しているところを保護されるケースも少なくなありません。

2023年春に岡山県動物愛護センターに、推定7歳ほどの柴犬の血が入っているとおぼしきオスの令くんも、保護時は青い首輪が付けられた状態でした。人馴れしていることもあり、元飼い犬とみられました。

岡山県動物愛護センターでは、収容犬全てに一定期間の公示情報を出し、飼い主や引き取り手の名乗り出るのを待ちます。しかし、残念なことに令くんには飼い主は現れませんでした。少し前まで令くんと一緒に過ごしていたはずなのに、飼い主はどこへ行ってしまったのでしょう。まだ、どこかでこの犬を探しているのでしょうか。

いずれにしても、このまま時間が過ぎると、殺処分の可能性が出てきてしまいます。そのため、地元・岡山で活動をする保護団体・NPO法人しあわせの種たち(以下、しあわせの種たち)では、令くんを引き出し、ゆくゆくは新しい里親さんを見つけ、第二の犬生へと繋いであげられるよう世話をすることにしました。

痛みを取り除くための眼球摘出を実施

スタッフが令くんを引き出し、動物病院へと連れていきました。獣医師による検査の結果は、左目が緑内障、垂れている耳には耳血腫(耳の軟骨に血液がたまってしまう病気)があるとのこと。特に緑内障の影響で視力が薄く、そして相当な痛みを伴っているとも言います。

当面は眼圧コントロールによって現状維持を続けていましたが、後に令くんの左目の眼球摘出を決意。手術を実施することにしました。また、この手術の際、令くんには多くのアレルギーがあることもわかりました。麻酔導入薬なども通常の手術で使うものとは別のものを採用してもらい、さらに麻酔時間もできるだけ短いものにするなど、獣医師も繊細な配慮をして手術を実施しました。

手術前後は不安気な表情を浮かべていた令くんですが、なんとかこの手術を乗り越えてくれ、2日目の退院の際には、看護師さんに「ガウッ!」とかわいく威嚇するほどの元気が戻りました。

極度にスタッフに甘えてくる

手術を無事に終えることができ、胸をなで下ろすスタッフでしたが、もう一つうれしかったことがありました。

動物愛護センターからの引き出し後に過ごしていたスタッフの家を、令くんが「自分の家」と思ってくれているように感じられたこと。手術後、家に着いた際は本当にうれしそうにはしゃぎ回り笑顔を見せてくれた令くんを見て、スタッフも笑顔になりました。

令くんはこの家で、根っからの甘えん坊ぶりも発揮するように。家の中で自分の相手してくれる家族の後ろをずっとついてまわり、体をすり寄せてくっつけてくるようにもなりました。

幸せへの第一歩を踏み出した

そこまでは「もう、しょうがなんだから!」として笑えるものですが、ときに甘えが過ぎて、甘噛みしてくるも。さらに、柴犬の血からくるのでしょうか、散歩の際などに大型犬とすれ違うと相手に威嚇することもあります。この点は、きちんとしつけなければいけません。

それでも大好きだったであろう飼い主と離れ離れになり、ひとりぼっちで彷徨っていたことを考えれば、このように自由に過ごせる環境を与えてあげられていることは「令くんにとってはすごく良かった。引き出して本当に良かった」とあらためて思うスタッフでした。

現在、令くんは術後のケアを行いながら、問題行動を改善するためスタッフの元でトレーニングを積む日々を過ごしています。

もともと「人間大好き」な令くんですから、問題行動さえクリアすれば、新しい里親さんの元で、「家庭犬」として過ごすことができるように思います。いつか訪れるその日のために、令くんとしあわせの種たちスタッフは、充実した毎日を過ごしています。 

NPO法人しあわせの種たち
https://shiawasenotanetachi.amebaownd.com/

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