極めて重視してきたはずが…「G20」中国・習近平氏の欠席に広がる憶測 各国からの批判回避か、米国への不満表明か

治安 太郎 治安 太郎

インドのニューデリーで9日から10日にかけてG20サミットが開催された。G20はG7の先進国に中国やロシア、それにインドやブラジルなど新興国が加わり、20カ国で世界の諸問題を議論する。今年の議長国はインドとなったのだが、中国の習国家主席は今回G20への参加を取りやめた。欧米主導の国際秩序の現状打破を進める中国にとって、G20は中国の存在感を国際社会にアピールするために重要な機会で、これまで習国家主席はG20を「極めて重視」してきた。それにも関わらず、今回欠席したことで国際社会に物議を醸している。

欠席の背景について、中国政府は何もコメントを発表していない。1つに習国家主席が70歳となり、急務な外交日程に身体が付いていかなくなっていると健康説を囁く声も聞かれる。しかし、政治的な側面からいくつか背景が考えられる。

まず、今回のG20が中国にとってタイミング的に都合が悪いという理由だ。最近、中国当局は「新たな世界地図」を発表したが、これがインドやASEAN諸国から相次いで反発を招いている。

同地図では、南シナ海のほぼ全域が中国の領海として記され、中国が南シナ海の領有権問題に関して一方的に主張する「九段線」がそのまま描かれている。南シナ海の領有権を争うベトナムやフィリピンなどASEANは早速反発した。また、その延長で中国の領海を示す境界線が台湾の東側にも記され、九段線から十段線となり、台湾でも波紋が広がっている。さらに、中国とインドが争うヒマラヤの係争地でもそれが中国領土として描かれ、インドも強く反発している。

こういった状況でG20に参加しても中国批判が飛び交う可能性は十分に想定され、このタイミングで参加することにメリットはないと習政権が判断した可能性がある。

もう1つが、中国の抱える対米不満だ。今日、習政権が抱える“二大不満”は台湾と半導体だ。昨年8月に当時のペロシ米下院議長が台湾を訪問し、中国はそれに反発して大規模な軍事演習を行ったが、現在でも中国による軍事的威嚇は定期的に続いている。

そして、バイデン政権が昨年秋に先端半導体分野で対中輸出規制を強化し、先端半導体の製造装置で世界シェアを持つ日本とオランダが米国の要請に基づき対中規制を始めたことで、中国の対米不満はさらに膨れ上がっている。

バイデン政権の高官らが訪中するなど、米中間での対話も行われているが、それは習政権の不満を解消するものには全くなっていない。安全保障から経済だけでなく、先端技術や人権問題など、習政権の対米不満は多岐に渡っており、今の段階でG20に参加し、米中首脳会談を行っても何も得るものはないと判断した可能性もあろう。

今後の米中関係では、11月に米国で開かれるAPECでバイデン大統領と習国家主席による対面会談が実現するかがポイントになる。仮に、ここでも習国家主席が欠席という判断を下せば、来年1月には台湾総統選挙もあるが、来年の米中関係に大きな暗い影を落とすことになる。

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