海外旅行で「クレジットカードは必須」という文言をよく目にします。しかし、筆者の経験から言うと「タッチ決済対応のクレジットカードが必須」と声を大にして言いたいです。
なぜなら、コロナ前においても、多くのヨーロッパの人々はタッチ決済対応のクレジットカードを持ち、筆者が暗証番号を入力する際に、後ろから「まだか」というプレッシャーを感じたからです。
とは言っても、実際に使われている現場をみないと納得できない人も多いと思います。そこで、筆者が今夏に訪れたチェコとポーランドの鉄道を例に挙げ、タッチ決済のクレジットカードの利用実態について解説します。
最後に日本の鉄道におけるタッチ決済クレジットカードの現状にも触れます。
クレジットカードのタッチ決済について
まず、クレジットカードのタッチ決済について確認します。日本クレジットカード協会によると、タッチ決済とは国際ブランドが展開している非接触型の決済を指し、対応マークが付いているカードでタッチ決済が利用できます。「タッチ決済」の他に「コンタクトレス」と呼ばれることもあります。
タッチ決済が主流になるヨーロッパ
ヨーロッパでの地下鉄の乗り方をチェコの首都、プラハを例に説明します。駅にある自動販売機で切符を購入し、エスカレーター前にある刻印機に刻印すればOKです。
問題は自動券売機です。確かに地下鉄駅では暗証番号の入力や紙幣に対応する券売機も存在します。一方、クレジットカードのタッチ決済のみに対応する券売機もあり、将来的にこの類の券売機が主流になることでしょう。
プラハ市交通局は今年に入り、市内を走る全ての路線バスにタッチ決済対応の券売機を設置したことを発表しました。一方、筆者が訪れた地方都市のオストラヴァ市内のバスにも設置されていました。
次にポーランドの主要都市のひとつ、ヴロツワフの路面電車を確認しましょう。ポーランド・ヴロツワフの路面電車では車内に自動券売機が設置されています。
しかし、対応するのはクレジットカードのタッチ決済のみ。しかも、地下鉄のように券は発行されません。「タッチすれば終わり」そんな感じです。
ヴロツワフ市の公共交通機関がクレジットカードのタッチ決済を導入したのは2018年のこと。ポーランドの主要都市では初の試みでした。
中欧では10年ほど前は電停の近くにあるキオスク(商店)で切符を販売していたものでした。しかし、電停近くのキオスクを探しても、なかなか見当たりません。タッチ決済対応のクレジットカードを持っていないといった理由でも、料金を支払わなければ不正乗車になります。
日本でも導入相次ぐ
日本の場合は各社の交通系ICカードの普及を優先し、外国と比較するとクレジットカードのタッチ決済の導入は遅れていました。それでも近年は導入が進んでいます。
直近ですと、東京メトロは8月にクレジットカードを改札機にタッチし、通過するサービスを2024年度中に導入することを発表しました。2024年度に実証実験を行い、その後の本格導入を視野に入れています。
このサービスは三井住友カードが手掛ける公共交通向けソリューション「stera transit(ステラ トランジット)」を活用。利用者は専用サイトで事前に企画乗車券を購入すると、クレジットカードを改札機にタッチするだけで通過できます。
ところで、世界的な半導体不足により、6月に交通系ICカード「Suica」「PASUMO」のうち、無記名カードの発売の一時中止を発表。さらに8月2日から記名式カードも発売一時中止になっています。カードに必要なICチップの調達が困難な中で、クレジットカードのタッチ決済は国内でもますます普及するのではないでしょうか。