台頭する中国への焦り 保護主義に傾く米国に日本は追随すべきか 経済安全保障の枠内で独自の政策を

治安 太郎 治安 太郎

軍事安全保障上、日本にとって日米同盟は根幹となる。それなくして日本の安全保障は維持されない。しかし、近年、日本は経済安全保障の分野でも米国との連携を強化している。8月18日、日米韓3カ国の首脳はキャンプーデービットで会談し、日米韓がかつてない強固な関係を構築する時代に入ったとし、半導体などのサプライチェーンの強じん化、AIやスーパーコンピューターなど先端技術分野での連携を広げていくことを確認した。また、対中国で安全保障と経済の両面から共同で備えるため、安全保障と経済の大臣級会合を年1回以上開催することで一致した。

また、激化する先端半導体分野での覇権競争の中、先端半導体が中国によって軍事転用される恐れを警戒するバイデン政権からの要請に応える形で、日本は7月下旬から半導体製造装置など23品目で対中規制を開始した。バイデン政権は経済や貿易、先端技術の分野から中国への規制を強化しているが、日本や韓国などの同盟国や友好国を巻き込み、多国間で中国に対抗する姿勢を重視する。それによって、中国も貿易分野での規制を強化する方向にあり、8月から半導体の材料となるガリウム・ゲルマニウムの輸出規制を強化したように、米国と共同歩調をとる国々への態度を硬化させている。

経済安全保障分野での米中対立が、今後も続くことは間違いない。しかし、ここに来て日本はもう1つのリスクを認知するべきだろう。経済安全保障における日本人の考え方は「米国と協力しながら中国に対峙する」というものであるが、リスクは中国だけではない。

最近、米国ではバイデン政権が中国への半導体輸出規制を強化していることに対して、米大手半導体企業のCEOらが政権高官と会談し、対中規制を緩和するよう要請したのだ。バイデン政権は安全保障上の枠内で規制を強化しているというが、米半導体企業は自由なビジネスが脅かされ、返って国際的な競争力が低下し、国内の半導体産業が衰退しかねないと危機感を抱いている。

また、最近行われた世論調査によると、回答者の約66%が、来年の大統領選挙で中国からの輸入品への追加関税を支持する候補者を応援する可能性が高いと答えた。また、米国は中国からの軍事的脅威への備えで取り組みが必要との割合が同様に66%に達し、共和党支持者の81%だけでなく、民主党支持者の間でも58%に過半数を超えた。

要は、今日、対中国で強硬な姿勢を示すことが支持拡大に繋がるという状況になっており、バイデンが再選を目指すかどうかにせよ、両党の候補者たちが中国で厳しい姿勢を続けることは間違いなく、それによって貿易摩擦はいっそう広がることだろう。

ホワイトハウスや米国民の中には、中国への警戒感や焦りが広がっている。これまで世界秩序を主導してきた米国の地位が脅かされているのである。経済力や軍事力で他国に抜かれるなど、今日の米国は想像が付かないことかも知れない。米国はそれを阻止するべく、中国への態度を硬化させ、貿易面において中国以上より先制的な攻撃モードにある。

米大手半導体企業がホワイトハウスに懸念を伝えたように、中国への警戒感や焦りを強める米国は、今後経済安全保障の範囲を超え、保護主義的な動きを顕著に示すようになる恐れがある。バイデン政権自身はそれを公に口にすることはないが、中国への警戒感や焦りが自然にそれを助長することだろう。

日本にとって、中国が主要な貿易相手国であることは現実論変えられない。軍事安全保障において日米同盟は必須だが、我々は経済安全保障上の日米同盟は避けるべきだ。経済安全保障の枠内において米国と同調することは当然重要だが、日本は日本独自の経済安全保障を考えるべきであり、米国の経済と貿易での保護主義な動きには追随するべきではない。

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