AIで作った女児わいせつ画像は「児童ポルノ」か 警察庁、法務省の見解は 学識者「新たに立法化を」

辻 智也 辻 智也

 学習したデータを基に画像イメージを出力する画像生成AI(人工知能)の普及に伴い、AIで作ったとみられる女児のわいせつな画像がインターネットで多数公開されている。実在する児童なら、児童買春・児童ポルノ禁止法(児童ポルノ法)に抵触するが、AI画像が取り締まり対象となるかは不透明だ。警察庁や法務省は「個別に検討するしかない」と回答するにとどまり、規制の要否などが新たな課題となりそうだ。

 ある画像投稿サイトには、AIで生成したとされる幼児や小学生ぐらいの女児のわいせつな画像が公開されていた。実際の写真と見間違う精巧さで、下着や水着姿のほか、裸の画像もあった。会員登録すれば誰でも無料で閲覧でき、過激な画像は有料に設定されていた。投稿者は「AIでロリっ子のかわいい、エッチなイラストを作っています」などと記載していた。

 こうした画像は、高精度の画像生成AIの登場により、急速に広がっているとみられる。児童ポルノ法では、18歳未満の児童の裸や胸などを露出した画像の作成、公開を禁止している。2020年、CGで作られた児童ポルノを巡る裁判で、最高裁は「実在しない児童を描写した画像は児童ポルノに含まない」との判例を示した。漫画など架空の児童は同法の対象外とされる。

 一方、画像生成AIは、実在する児童の写真を基に画像が作れる。そうやって生み出された画像が、児童ポルノに該当するかはあいまいだ。警察庁人身安全・少年課は、AIで作った児童ポルノの摘発事例は把握していないとし、「児童が実在するかが焦点になると考えられるが、新しい技術で、生成方法も複雑なため、個別の画像ごとに検証するしかない」と説明する。

 法務省刑事局は「実在の人物を基にしたAI生成画像は、類似の程度によっては児童ポルノ法違反になる可能性がある」との見解を示す。生成方法や実在の人物かを問わず、わいせつ性が高いと判断されれば、わいせつ物頒布罪が適用される可能性もあるという。

 AIと性表現の規制に詳しい東洋大の加藤隆之教授(憲法)は、児童ポルノ法の保護対象が「裸にされる」などの実害に遭った児童としている以上、「実在の顔写真を基にAIが作った画像でも、その児童の裸体と同一性が認められない限り同法での摘発はできないだろう」と説明する。

 ただ、アイドルの顔と裸の写真を合成した画像のように「AIで生成された画像の顔が、実在の児童と似ていれば重大な人格侵害になる。画像生成AIを念頭に、新たに立法化するべきではないか」と指摘する。

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