東京消防庁や大阪市消防局が連日のように「救急出動体制が逼迫」とX(旧ツイッター)にポストしているが、軽症者の出動要請などが後を絶たない。そんな中、救急隊員の本音@フォロバ100%さん(@PEZoKThJBhMwM3g)の投稿が話題を呼んでいる。
「救急車有料化に反対する人って、軽症者が救急車を呼びまくるせいで、心肺停止でも救急車到着まで40分とかの逼迫状況で、過重労働の救急隊員が事故を起こし、病院も疲弊し、救急体制を維持できず増税待ったなしの今の現状でも良いってこと?世界的にも救急車無料なの日本くらいだぞ。日本人甘ったれ過ぎ」
確かに救急車有料化については、平成27年度救急業務のあり方(消防庁)で議論されている。また、令和3年中の軽症者搬送割合は全体の44.8%にもなる(総務省令和4年度救急・救助の現況)。
救急隊員の本音@フォロバ100%さんは、いらだちを隠さない。
「こうしてツイートしてみても有料化への反対意見は多くあるが、有料化以外でこの現状の解決策を書く人はほとんどいない。みなさん現状維持で増税まっしぐらでも良いってことですか?」
この投稿に対しては、
「絶対に有料化すべき。フリーライダー多すぎ」
「一律有料というよりも、本当に必要な場合は良しとして、必要のない救急搬送は有料と区別する方がいいと思います」
「タクシー代わりに使ってる人もいるって聞きます。119を直電にしないのがいいと思います。海外ではオペレーターがいますから」
など、さまざまな意見が寄せられた。
救急車の出動件数は年々増加
実態について、救急隊員の本音@フォロバ100%さんに話を聞いた。
ーー「軽症」とは、どの程度なのでしょうか。
「救急搬送における軽症とは、入院不要のものになります。中等症は3週間未満の入院が必要なもの、重症とは3週間以上の入院が必要なものと定義されています。これらは重症度と表現されます。しかし、中等症でも自分で歩いて病院に行ける場合など(緊急度低)もあり、必ずしも重症度と緊急度は一致しません。日本の救急車は誕生経緯的にも『今すぐ病院に搬送しないと生命が危ない』緊急度が高い傷病者の搬送を目的としております。つまり、手の骨折等があったとしても、今すぐ生命に関わる可能性は低いため、厳密に言うと救急車を呼ぶことは不適正となります」
ーー救急車の出動体制は常に逼迫しているのでしょうか。
「救急車の出動件数は年々増加しており、平成16年には全国で年間500万件、平成27年には600万件を超えており、実はかなり昔から逼迫状態でした。コロナや熱中症が拍車をかけ、東京大阪で救急車到着まで40分以上待ちといった事態となったのは、令和4年からです。令和4年は700万件を超え、過去最多。今年はさらに令和4年を上回るペースで増加しています」
ーーコロナの影響だけではないのですね。
「昔から逼迫状態であったため、総務省では救急車の適正利用を呼びかけ、各消防本部で救急隊増隊等の対策は行っていました。しかし、それにも限度があります。去年今年はコロナ禍で件数は急増したものの、年々増加することは昔から分かっていたことであり、いずれ救急体制が破綻することは目に見えていました」
24時間、徹夜で出動
ーー救急隊員の方の負担も大きいのでは。
「過重労働の原因は明らかに出動件数の増加によるものです。勤務形態は消防本部によりますが、ほとんどは2交代または3交代の24時間勤務になります。つまり、1度出勤すれば24時間は消防署に拘束されることになります。間に休憩や仮眠時間は設定されていますが、出動が重なると休憩や仮眠は取れず、24時間徹夜で延々と出動、事務処理に追われることになります」
ーー事実上休憩できない?
「出動隊員の交代等で負担を軽減している消防本部もあるそうですが、人員に余裕のない消防本部ではそうした負担軽減策がとれないのが現状です。私個人の場合、残業時間で言うと月40時間程度ですが、休憩は毎回ほぼ取れていません。休憩をほぼ取れず仮眠も取れない状況で、深夜に救急活動を行ったり、救急車を運転したりしている状態が続いています」
ーー有料化すると、「お金を払えばいいだろう」という考えになるのでは?という意見もあります。
「無料の今でも『税金払ってんだから早く運べ!』と言う人もいます。『タクシー呼ぶお金がないから救急車呼んだ』と堂々と言う人もたくさんいます。生活保護受給者が明らかにタクシー代わりに救急車を使うことも多いです。有料化すれば、こうした事案は減ると考えます。また、病院間での転院搬送や、高齢者施設が利用者を病院受診させるため、タクシー代わりに救急を使う事案も非常に多いです。これらも有料化するだけでかなり減少するでしょう。なので、『お金を払えばいいだろう』という人が救急車を呼ぶことで、救急要請が増加するというのは、現場を知る者からするとあり得ないです」
ーー重症なのに救急車到着まで40分ということがあると問題ですね。
「救急隊員は、人の生命を救いたいという思いから志望する人が多いです。本当に救急車が必要な人の元に行けないとストレスを感じます。助けられたかもしれないのにという思いです。もし助けられなかった人が自分の子供や家族、友人だったとしたらどうでしょう。軽症の人や酔っ払いの救急要請に振り回され、大切な人を救えなかったとしたら。そうならないよう少しでも多くの人に現状を知ってもらいたいと思います」
総務省消防庁では、119番に電話をかけた時点でトリアージする「救急業務におけるトリアージ」も検討しているが、それ以前に、明らかに軽症の場合は救急車を呼ばない、熱中症のように予防できるものは予防しなければならない。