災害級猛暑で奈良の鹿もピンチ! ミストのこぼれ水を舐める雄鹿に「可哀相」「なんとかなりませんか?」

東寺 月子 東寺 月子

猛暑で人間界も熱中症搬送者が続出していますが、この暑さは奈良の鹿界へも打撃を与えているようです。

「ミストのこぼれ水を舐める雄鹿さん」というコメントと共に、川地祥介さん(@ncbutwDsL0UC6np)がSNSに投稿した「水を求める鹿」の姿が話題となっています。「県庁前の登大路園地には池や川やお土産物屋さんがなく鹿たちが喉を潤すところがありません。この危険な暑さをしのげるよう水飲み場を整備してあげて欲しいです」と川地さんは続けます。

「水は生物の生命線、なんとかならないかなー」
「鹿さんにお水を…」

リプライには、心配する声がたくさん集まりました。なかには「鹿が水分を取れていなくて(鹿せんべいが)食べれなかったみたいで、外国人の方が2リットルのペットボトルの水を鹿に飲ませてあげていたのを友人が見たと言っていました」など、水を求める鹿に遭遇した人のコメントも。

一方で、「可哀想と思うのは分かりますが野生ですから喉が渇けば水がある所まで鹿自身が行くのが本来の姿です。牧場ではありませんので可能な限り過保護にすべきではない様に思います。但し熱中症になる鹿が続出し始めた場合は何らかの対策を考えるべきかもですが」、「どうしても野生の鹿が可愛いと言う人達で、基金を募って水飲み場の設置をお願いします。間違っても税金を使うのはやめて貰いたい。涼しい森の中を離れ、わざわざ太陽の光の元に出て来るのですから、熱中症など関係ないでしょう」などの意見も。

とはいえ、今年は災害級といわれる猛暑だけに、鹿たちも例年とは違う日々なのかもしれません。奈良公園の鹿の写真を撮り続け、鹿たちのことを見守っている川地さんに、現状を伺いました。

暑さのあまり、鹿も熱中症に?!

ーー今年の夏は特に暑いですが、こうした様子を見るのは初めてですか?

「奈良公園に行った時は、鹿の誤食を防ぐため奈良公園にある休憩所の放置ゴミを回収をしているのですが、この写真は、その時に撮影したものです。登大路園地にある休憩所は夏の間ミストが出ていて、毎年ミストの下で休んでいる鹿はよく見かけます。休憩所中にいた1頭はかなり喉が乾いていたのか、ベンチに溜まっていたミストのこぼれ水を隅々まで舐め尽くすようにしていました」

ーー随分と喉が乾いていたのでしょうね。今年の暑さは災害級と言われていますが、鹿たちの様子は例年に比べどうですか?

「確か昨年の夏は、熱中症と見受けられた鹿がいた記憶があります。今年の暑さは例年以上に過酷ですが、鹿たちはかなり堪えてると思います。今年に限ったことではないのですが、鹿たちは暑さを凌ぐために、川や池の中に入ったり、出来るだけ日陰に座って体力を温存しているようです。ただ一部のエリアでは、どんぐりの木が伐採され木陰が少なくなってしまっていて……。この猛暑の中、伐採されたエリアの鹿たちは、少なくなった木陰に身を寄せ合っていたので、心が痛みますね。

あと、鹿たちが日陰で休んでいる時に、無理に鹿せんべいをあげようとする姿を見かけますが、鹿が食べたがらない時には無理に食べさせようとしないで、そっとしておいて欲しいですね」

ーー熱中症でダウン!さらに、樹木伐採で日陰が減るとは辛い……。水分不足で食欲が落ちている鹿もいるようですね。他のエリアの鹿たちはどうやって水分補給しているのでしょう?

「奈良公園内には川や池があり、鹿たちはそれを飲んでいるようです。ただ池の水は濃い緑色になっていて、水質が良くないように見えますね……。公園の真ん中くらいに吉城川(よしきがわ)が流れていて、多くの鹿たちがよく利用しています。

他にも春日山から流れている川があるんですが、これらの川から水のないエリアに水を引っ張ってこれたらいいのにな……と思いますが、奈良公園内の管轄は奈良公園事務所さんや春日大社さん、東大寺さん、興福寺さんなど複数にまたがっているので、いろいろ調整が難しいのかもしれませんね。でもせめて、県庁前エリアには水飲み場をつくってあげて欲しいです」

ーーそもそも、奈良公園内には鹿用の水飲み場ってあるのでしょうか?

「特に鹿用水飲み場というものはありません。公園内の一部のお土産物屋さんでは、お店の前にバケツに水を用意して下さっていて、これを飲んでいる鹿もいます。鹿たちにとっては大変有難いことです。奈良公園内には何カ所か溝がつくられているのですが、ここへ常に綺麗な水が流れるようになっていれば、人も涼しさを感じられるし鹿も喉を潤せていいのになぁ……と思っています」

ーー本当ですね。人にも鹿にも優しい環境が整うことを願います! 川地さんはいつも奈良公園のゴミ拾いをされているのですか?

「奈良公園の鹿が命を落とす原因の主なものに、交通事故とゴミの誤食があります。どちらも人間によって引き起こされるという、つらい事実で。

奈良公園内は、ほぼゴミ箱がないため、さまざまなゴミがポイ捨てされているんです。鹿は特に食べ物の匂いがついたビニール袋や容器などが気になるようで、お菓子の袋などを食べてしまいます。それらは消化されずに胃に溜まり、通常の食事が出来なくなって、やがて衰弱して死んでしまうんです。

人がゴミのポイ捨てをしないことはもちろん、鹿が開けることができないゴミ箱を設置してもらいたいです。あと、鹿を追いかけ回したり、お菓子やパンをあげる人もいて。これらも鹿の交通事故や健康不良につながるのでやめてほしいですね。特に夜間にはそういった行為をする人が多いので、出来れば見回りの強化や防犯カメラを設置するなど対策がされると良いのではと思います」

奈良公園の鹿は、国の天然記念物に指定されている野生動物で、公園に生えている木の実などを食べて暮らしています。しかし、鹿せんべいだけは餌として与えることが認められており、それが観光の楽しみにもなっているだけに、いろいろな線引が難しいところ。「人と鹿が共存する公園」という、唯一無二の場所で、人も鹿も居心地良く暮らせる環境が整うことを願うばかりです。

川地祥介さん
https://twitter.com/ncbutwDsL0UC6np

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