アイドル女優とは一線を画す木竜麻生 俳優業を支える3つの「新」 「自分と向き合った新体操は俳優業にも通じます」

石井 隼人 石井 隼人

『菊とギロチン』『わたし達はおとな』『Winny』とツウな映画への出演が目立つ。そのフィルモグラフィーと強い目力を見れば、木竜麻生(29)がアイドル的な俳優とは一線を画す本格派であることは一目瞭然だ。

関東大震災発生100年という節目の9月1日に公開される映画『福田村事件』では、流言飛語を発端にした殺戮が繰り広げられる社会の中で、真実を伝えようと葛藤する女性新聞記者役を演じ、新境地を開拓した。シンではなく「新」。木竜を取り巻く3つの新が、今の彼女を支える大きな屋台骨だ。

キャリア7年の新体操

第1の新は競技歴7年の「新体操」。小学3年から中学卒業まで続けた。木竜に数多くの新人賞をもたらした『鈴木家の嘘』(2018年)や写真集で見事なリボンさばきを披露。「授業にないスポーツ」という物珍しさから始めた新体操が、俳優業に活きていることに本人が一番驚いている。

「このお仕事をしていてカメラの前に立つと孤独を感じることもあります。でも新体操で友達やコーチが見守ってくれているのと同じように、撮影現場で監督やスタッフの皆さんと同じところに向かって作品を作っているのはすごく心強いです。カメラの向こう側には作品を楽しみに待ってくれている方たちもいますので」。

地元・新潟はすべて美味しい

第2の新は地元・新潟。しかも新発田市出身というダブル新だ。「お米、水、空気、食べ物すべてが美味しくて温泉も気持ちがいい」と高校卒業まで過ごした地元愛はやまない。木竜の最大の応援団である家族もそんな地元から娘の活躍を見守る。

「うちの家族は冗談好きな人たちばかり。兄は新潟で行われた舞台あいさつに夫婦で来てくれて、Q&Aで誰よりも先に手を挙げていました」と照れつつ顔をほころばせる。

その一方で、愛情あればこその厳しい言葉もある。「私が仕事で悩んで泣き言をこぼすと『それ毎回言っているよ?目の前のことを全力でやるだけだよ』と冷静にアドバイスをくれる。家族は忘れてはいけない初心を思い出させてくれる存在であると同時に、仕事をする上での大きな心の支えです」。

インナーマッスルを鍛えたい

第3の新は「新たな挑戦」。1923年9月1日に発生した関東大震災から5日後、千葉県福田村で起こった行商団9人の殺害事件を題材にした『福田村事件』では女性新聞記者を演じた。

「村人、行商団、自警団、社会学者と様々な登場人物がいますが、私が演じた新聞記者は事件の渦中にいる当事者でありながら全体を俯瞰して見なければいけないキャラクター。自分にとっては新しい挑戦で、観客の立場に一番近い視点でいることが求められた役柄だったかもしれません。演じる上では中立の立場を意識しながら、揺れる心で事象を見つめていました」と新境地を自覚している。

俳優という体力勝負の職業ゆえに、2024年に迎える30代を見すえた新しい挑戦も計画中だ。

「自分の筋肉の使い方を熟知している先輩たちは上達も早い。私もそれを見習って今年中にはピラティスに挑戦したい。インナーマッスルを鍛えると同時に筋肉の上手な使い方も学べるそうで、俳優を続けていくうえで役に立ちそう…と思いつつ半年以上経ってしまいましたが」。

ピラティス経験を経た木竜の変化に乞うご期待だ。

木竜麻生(きりゅうまい)
1994年7月1日生まれ、新潟県出身。『菊とギロチン』(2018)で300人の中から花菊役に選ばれ映画初主演。同年公開の『鈴木家の嘘』でも400人の中から選ばれ、鈴木富美役を射止めた。この2作品が評価され、毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞やキネマ旬報ベスト・テン新人女優賞など数々の映画新人賞を受賞した。最近の主演作品『わたし達はおとな』(22/加藤拓也監督)では北京国際映画祭フォーワードフューチャー部門にて最優秀女優賞を受賞。その他の出演作として『ヘルドッグス』『Winny』などがある。

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