普段は救急車を受け入れて治療する側の医師が、自身の妻が倒れて「呼ぶ側」になった―。そんな実体験をまとめた投稿が、SNS上で話題になっている。妻が頭痛で意識を失って大きないびきをかき始めたといい、「寝落ちではなく、医学的に危険なサインだと知っていたので、一瞬で血の気が引きました」と医師。救急車到着が20分以上掛かると言われ、死も覚悟する中、119番や救急隊への容態の伝え方、役立ったメモ、搬送の動線確保、荷物準備など「やってよかったこと」をつづっている。
X(旧ツイッター)名「おると整形外科医さん(@Ortho_FL)」。関東在住の30代。日本整形外科学会専門医で、仕事の傍ら、医療を分かりやすく解説した投稿をしている。
妻が産後退院して数日後、医師の日勤中に「頭が痛い」とLINEが入ったという。偏頭痛持ちのため内服薬で経過を見ていると、医師の帰宅時には症状が軽減。しかし、しばらくして「救急に行きたい」と言い、数分後には「ごめん救急車...」と言い残し、意識を失って大きないびきをかき始めた。大声で呼び掛け、痛みや刺激を加えても全く反応なし。「頭の病気を疑いました。意識障害の中で1番状態が悪い分類でした」と振り返る。
真っ先に住所「1秒でも早く駆け付けるため」
すぐに119番。オペレーターの質問に救急である旨と、住所を答えた。住所を先に聞かれる理由は、救急車が1秒でも早く現場に駆けつけるためという。役に立ったのは、救急車が来るまでに殴り書きしたメモだ。頭痛のLINEをもらった時間、飲んだ鎮痛薬と時間、頭痛が増悪した時間、意識障害が起きた時間、既往歴、内服歴、手術歴…などを記したといい、「パニックになると時系列が分からなくなったり、情報の伝え忘れに繋がったりするので、補完することができたと思います」とする。
その後、保険証、お金、お薬手帳、本人の靴を準備。搬送しやすいように、ペットのネコの脱走防止ゲートを撤廃し、ネコは軟禁。ダイニングテーブルを排除し、妻が横になっているソファの向きを変えたという。情報をしっかり伝えたため、救急隊はくも膜下出血を疑い、サイレンを鳴らしつつ「ゆっくり搬送」に。振動などでの再出血を防ぐために実施されたという。
妻はオペを終え、退院までこぎ着けることができ、現在はリハビリ中。「若くても死ぬ時は死ぬことを再認識しました。医師でも焦るのならば、一般の方はどれだけ不安に医療にすがるのだろう、と思います。僕の経験が、救急搬送時の役に立てば」と初動の大切さを説いた。
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