『絵画で感動できないコンプレックスの話』
漫画家の秋野ひろさん(@16_akino)が、学生の頃に抱えていた芸術に関する悩みについて漫画で紹介。その内容に共感の声が続出しています。
ずっと悩んできた芸術鑑賞に関するコンプレックス
漫画は秋野さんの大学時代のエピソード。教育学部に所属していた秋野さんは、美術教育に関する講義を受けていました。それは、美術の歴史や現代における美術の役割について学ぶ授業だったといいます。
その講義では毎回、学生の前回の授業内容の振り返りについて、教授が返答するところからはじまっていました。
ある日の授業で読まれたのは、秋野さんのコメントでした。
「僕は、皆が言うほど絵で感動したことがありません」
前回の授業では“作品鑑賞”に関する話があったそうです。このコメントは、その時の授業内容から浮かんだ、秋野さん自身の悩みでした。
例えば、“名画”と言われるような芸術作品を見た時、誰もが一様に素晴らしいと感じ、「作者の感情がこめられている」、「絵が鑑賞者に語りかけてくる」などと表現する人もいます。しかし、秋野さんは名画を見ても、「すごい」「かっこいい」などと思いはするものの、そこまで強く心を揺さぶられる感覚がよく分からないのでした。
「絵を見るセンスがないことに悩んできたのですが、改善できるものなのでしょうか?」
秋野さんがずっと抱えてきたコンプレックス。それに対して、先生ははっきりと見解を述べていきます。その言葉はナイフのように容赦なく秋野さんに襲いかかってくるのでした。しかし、先生はむやみに厳しい言葉ばかりを投げるだけでなく、このようにも言いました。
「“名画”という概念は、美術鑑賞が苦手な人にとって、『呪いの言葉』かもしれません」
他人と同じ感情を抱けなくても悩む必要なんてない
「作品について理解する際、それがなぜ価値があると言われているのか、どのように扱われてきたのかを学ぶことは重要です。と同時に、鑑賞者自身がその作品をどう捉えたのかも重要なわけです。そしてこれは人によって違って当然ですよね」
このように先生は続けます。そして、この“知識”と“感じ方”、二つの軸を混同させてしまうから、名画は正しい感じ方があるように語ったり、そういう価値観を押し付けたりしてしまうのだといいます。
そのような持論を、身振り手振りをつけたり、合間にため息をはさんだりしながら話す先生。このように締めくくりました。
「他人と同じ感情を抱けなかったことで、悩む必要なんてまったく無いんですよ」
さらに先生は、こんなことも付け加えました。
「それを言い訳に自分に分からない『よさ』を放棄してほしくはないけどね。特にこれを書いた人は」
この言葉は秋野さんの胸にクリティカルヒット!
しかし、歯に衣着せぬ物言いで自身の信念を語る先生の言葉は、当時の秋野さんの心にしっかりと留まったようです。
このような講義の一場面が描かれた漫画。公開されたツイートのリプ欄にも多くの反響が。
「そうなんすよ、絵で感動するかどうかは人それぞれなんですよ」
「名作と呼ばれるマンガでも、人によっては『面白くない』と言われますものね」
「読書感想文全部コレ。昔からある名作だから、読んで先生が気にいる感想文書けよって感じ」
「美術館に行くとザーッとみて目に止まるものを探すタイプです。自分の感覚に合うものが自分にとっていいものなのかな」
「美術館とかギャラリー行く時は勝手に『このなかから一つ貰えるとしたらどれにするか』を最後に決めることにしてます。自分の中の好きを大事にするためかなぁ。。」
「興味は無いけどよく美術館って連れていかれたことあって、何枚かに1枚は無心でずっと眺めてたりしたなぁ」
「僕は語りかけてくるのを待つ派ですね。ボーッと暫く眺めてみて、なにか気になったりすることがなければ次の絵に移ります。そういう見方で、一つの展示会でいくつか消化できない感じのワダカマリのようなものが残ればいいかなって思っています」
自身の芸術の感じ方について書かれている方も多くいらっしゃいました。