東京・足立で、行き場を失ったワンコの保護・譲渡活動を行う保護犬カフェ・PETS(以下、PETS)。2023年春、心ある方から1本の連絡が入りました。
聞けば、近所のある高齢者の家の外に、狭いケージの中に入れられっぱなしのワンコがいて、雨の日も風の日も糞尿まみれで過ごしているのをずっとかわいそうに見ていたとのこと。ある日、意を決して、この高齢者に掛け合いワンコを救い出しました。
「お前が飼うなら、まあいいよ」
名前はげんちゃん。雨が降ってもズブ濡れで糞尿まみれでドロドロ。不衛生な状況からか、頭部は毛が抜けてしまい、体の具合も悪そうに見えました。近所の方は飼い主の高齢者を訪ね、「このワンコ、私にちょうだい」と話を持ち掛けたそうです。すると飼い主は「お前が飼うなら、まあいいよ」と譲ってくれることになりました。
げんちゃんを救い出した近所の方は、すぐに病院に連れていきました。げんちゃんはガリガリに痩せており瀕死の状態。頭がハゲているのは、ばい菌のせいでした。やはり劣悪な環境が体をむしばんでいたのです。
一連の事情を知った病院スタッフは、げんちゃんの命をなんとか救おうと連携。来る日も来る日も治療とケアを続けました。入院中のげんちゃんは多くの人たちのサポートを受け、命の危機を乗り切り少しずつ健康を取り戻すことができました。
病院スタッフが書いたげんちゃんへのメッセージ
げんちゃんを救った近所の方は、自分の家ではワンコを飼うことはできないため、どこか新しい譲渡先がないかと模索していました。そこで知ったのがPETS。PETSのスタッフはそれまでの経緯と、救い出した近所の方、病院のスタッフの思いに胸を打たれ、すぐに迎え入れることを決意しました。
退院が決まった際、スタッフは「引き取りだけに行きますので、あとは何も要りません」と近所の方、病院のスタッフに伝えていました。
しかし、いざ病院に迎えに行くと、近所の方からはフィラリアの薬ほか様々なケアグッズ、そして、病院のスタッフからはげんちゃんへのメッセージが書かれた寄せ書きが用意されていました。
スタッフは目頭が熱くなりました。げんちゃんを救い出した近所の人、病院の多くのスタッフの思いを強く感じるのと同時に「大切な命のバトン」を託されたとも感じました。そして、「げんちゃん新しい家族のもとへと繋ぎ絶対に幸せにしてあげたい」という思いを強く抱きました。
「大切な命のバトン」を受け取ってくれる里親さん募集中
これまで満足なケアもされず、甘えさせてもらうこともなかったとおぼしきげんちゃん。PETSに来てからもしばらくコミュニケーションが独特で、ときにカプカプ甘噛みをすることもありました。
しかし、スタッフや他のワンコとの交流から「自由に過ごして良かったんだ」と気づいてくれたのか、今ではすっかり甘えん坊になっています。頭部の脱毛も一時より良くなり、体もより健康に近づいています。
そして、ついにげんちゃんに素敵な里親希望者さんが現れ、現在トライアル中。この方とうまくマッチングできれば、げんちゃんは幸せな第2の犬生を迎えることができそうです。これまで長きにわたって辛い思いをしてきたげんちゃん。多くの人たちがつないできてきた「命のバトン」、ゴールのラインはあと少しです。
保護犬カフェ・PETS
https://ameblo.jp/pets-adachi203/