愛護センターには、様々なバックボーンを持つ犬が収容されています。広島県の愛護センターの場合、元野犬9割、元飼い犬1割くらいの割合とのことですが、2020年11月に収容されていたニコタンという当時生後約6カ月ほどの真っ白のワンコも元野犬でした。
スタッフの家に行く途中、逃げ出そうとしたニコタン
元野犬の多くは、他のワンコとの協調性がある一方、人間には不慣れで、すぐに懐くようなことはありません。ニコタンも人間に対する怖さからでしょうか、愛護センターの片隅で小さく固まっていました。
ニコタンを引き出すことにしたのが、保護犬の譲渡活動を通じ、「殺処分ゼロ」の実現を目指すピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)。これまでに数多くのワンコを救ってきた経験から、「ニコタンにもたっぷりの愛情を注げばいつか必ず心を開いてくれるはず」とスタッフは確信しました。
しかし、当のニコタンはスタッフを前にしてもかなりのビビりよう。ピースワンコの検疫シェルターを経てスタッフの自宅へと連れていった際も、隙あらば逃げ出したがるようなそぶりを見せました。
「悪い人じゃない」と手からご飯を食べてくれるように
最初の数日は、緊張が解けず、抱っこはもちろんなでることも許してくれないニコタン。また、人間が同じ空間にいる間は、ご飯を口にすることもなく、人がいなくなってからやっと食べていました。
それでもスタッフは諦めることはありません。急がず慌てず、ニコタンが信用してくれるまで地道に接するように心がけました。そんな生活が数日続き、スタッフがクレート越しにご飯をあげると、やや疑いながらもパクッとご飯を食べてくれました。さらにその翌日には「この人は悪い人じゃない」と思ってくれたのか、スタッフの手からご飯を食べてくれるようになりました。
「カチッ」という音を合図にご褒美を
さらに、スタッフの家にニコタンが来てから10日ほどがたった頃、今度は首輪の付け替えに向けた練習を始めました。最初は首元を触るスタッフをおびえるように見つめていたニコタンでしたが、首輪を付け替える際の「カチッ」という音を合図にご褒美を与えるようにしたところ、スンナリ受け入れてくれるようになりました。
さらにここから数日後、ニコタンは自らスタッフに甘えておやつをおねだりするようになりました。
ニコタン本来の明るく甘えん坊の性格がやっと顔を出し、スタッフは「やっぱり良い子だった。心を開いてくれてありがとうね」と大喜びしました。
「呼び戻し」もマスターし幸せな第2の犬生をゲット!
ニコタンはすっかりスタッフのことが大好きになり、帰宅するスタッフをお出迎えし、喜んでしっぽを振りました。お散歩にも挑戦し、「呼び戻し」の練習もスタート。「呼び戻し」とは、スタッフがニコタンに声かけした際、ニコタンが自ら考えてスタッフのほうに戻ってくるもの。ニコタンはこれもすぐにマスターし、スタッフとの信頼関係を着実に築いていきました。
気づけば保護してから半年ほど。ついにニコタンの元へ里親希望者さんが現れました。以前、ピースワンコで別のワンコを迎え入れてくれた優しい方です。
里親希望者さんのお母さんが実家で飼っていたワンコに、ニコタンがそっくりだったとのことで、「怖がりなニコタンの全てを受け入れたい」と言ってくれました。
一定期間のトライアルを経て、見事この家にニコタンが迎え入れられることになりました。ピースワンコを卒業する際も、あれだけおびえていたのが信じられないほど、ニコタンは機嫌よく巣立っていきました。
おおいに喜ぶスタッフでしたが、同時にニコタンのようなワンコを、今後も1頭でも多く救っていきたいという思いを新たにしました。
ピースワンコ・ジャパン
https://peace-wanko.jp/