【漫画】ほぼ毎日、来店し「まずい」と言って帰る年配客…その真意とは?ラーメン店のエピソードに感動

竹中  友一(RinToris) 竹中 友一(RinToris)

「うまくいかないラーメン屋さんのお話」

漫画家のなるあすくさん(@naruasuku)は、そんなテーマの漫画をTwitterに投稿。その感動的なストーリーが注目を集めました。

主人公はとあるラーメン店の若い店主。彼が経営するラーメン店には、毎日のように来る年配の男性客がいました。しかし、その人、毎日のように来て、ラーメンを平らげる割に、決まって「まずい!」と叫んで帰っていきます。

そんな客に対し、従業員から「出禁にすべきでは?」という声も。しかし、店主にはそれができない事情がありました。実は、彼のラーメン店、開店当初はものめずらしさからたくさんのお客さんが来てくれたものの、最近は客足が減り経営が厳しい状況でした。失礼な客でも、あてにしないとやっていけなかったのです。

自分なりに努力はしているつもりでした。いろいろな人の嗜好に合わせて、さまざまなメニューを開発し、SNSでも積極的に告知。それでも客はなかなか来ず、最近ではアルバイトも一人、また一人と辞めていく状況。同じくラーメン店を経営していた自分の父親に、「親父の店はもう古い。俺は俺のやり方で成功してみせる」と大見えを切って家を出てきたのに、格好もつきません。

そんな窮地に立たされていたある日のこと。相も変わらず「まずい」と言ってくる年配客に、店主は思わず怒って詰め寄ります。

「俺のラーメンのどこがまずいんだ!」

すると、その年配客は意外なことを口にしました。

「あんたのラーメンは正直うまいとは思う」

矛盾した言葉に戸惑う店主。そんな彼に、それでも“まずい”と言われる理由は、自分で気づかないとどうにもならない――そのようなことを客は言って、店を後にします。

言われたことの意味も分からず、もう限界だと感じていた帰り道、彼は一台のキッチンカーを見つけます。中に入ってみると、店には一人の少女が。

「ここは想い出の料理をお出ししております」

そう言って、少女が出してきたのは、彼が最も嫌っていた“父親の店のラーメン”でした。

果たして、謎のキッチンカーと少女の正体とは?そして、そこで自分の父親のラーメンが出てきた、真の理由とは…?

大切なことに気づかせてくれるヒューマンドラマ

父親のラーメンを食べた店主は、今まで見落としていたある大切なことに気づきます。

それは、単なる商品の味の良し悪しではなく、客側の気持ちに寄り添って対応すること、つまり「接客」に関する部分でした。

そして、今までまずいと言っていた常連客の真意、父親の思いなど、次第にさまざまなことが明らかになり、物語は感動のラストへと向かっていくのでした。

リプ欄にも多くの反響が。

「泣いた」
「あたたかいなぁ」
「はぁぅ…何か心に染みる…(ラーメンだけに)」
「味も接客の内に入るとは思うけどお客も神様じゃないのを忘れてはいけない」
「何気なく『旨いっすね』って言ったら『そうでしょ?』って得意げに笑うラーメン屋は何度も足を運んだもんだ」

なお、この漫画、実はなるあすくさんが以前「GANMA!」にて連載されていた『やすらのキッチン』という作品に収録された一編。『やすらのキッチン』とは、思い出の料理が出てくる不思議なキッチンカーと、そこに現れる少女「やすら」を軸に描かれるヒューマンドラマ作品です。

作者のなるあすくさんに、今回のラーメン店のお話や『やすらのキッチン』について聞きました。

――今回の話を思い付いた理由について教えてください。

なるあすくさん:過去に味がよくても居心地のよくないお店を何度か経験したことがあって、それがヒントになりました。

――接客業についての大切な心構えについて描かれているようにも感じました。ご自身でも飲食店など、接客業のご経験があるのでしょうか?

なるあすくさん:漫画に出てきたような飲食経験者ではないのですが、レジの接客や調理などの仕事はしたことがありました。

――人とのつながりを感じ、あたたかくなる作風にも感銘を受けました。ご自身の体験なども作風には含まれているのでしょうか?

なるあすくさん:明確な体験談というとすぐには思い出せないのですが、思い返すと「居心地がよい」「また行ってみたい」と思えるようなお店は、やはり接客が良いところが多いので、その辺りが作品に活かされたように思います。

――今回のお話も収録されている『やすらのキッチン』ですが、作品に対する想い、伝えたかったことは?

なるあすくさん:「自分が好きだったこと」「自分が大切にしていたこと」を思い出すきっかけにしてもらえたら嬉しい、という気持ちで描かせていただきました。もし今大変な目にあったり、つらい目にあったりしていても、その「思い出」が少しでも元気を出すことにつながれば、という想いもあります。

  ◇  ◇

本作をはじめ、数々の漫画を発表されてきたなるあすくさんですが、フリーになった現在も精力的に活動を続け、日々作品を公開。現在、Twitterのフォロワー数も8.6万という人気の漫画家さんです。

「いつもいつも本当にありがとうございます…!!これからもより楽しい作品をお届けできたらと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします」(なるあすくさん)

また、作品にはKindleインディーズ等で無料で公開されているものもあり、「もしよかったらご覧いただけたら嬉しいです」とのことでした。

■なるあすくさんのTwitterはこちら
 →https://twitter.com/naruasuku

■書籍『やすらのキッチン』(Kindle版)はこちら
 →https://www.amazon.co.jp/gp/product/B086KQMSKX

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