威嚇の合間に悲しそうな表情 多頭飼育崩壊から救出したまっ白な犬は多くの疾患を抱えていた 治療を支えるのは支援者のサポート

松田 義人 松田 義人

愛知県名古屋市を拠点に、行き場を失ったワンコのレスキューを行う動物愛護団体・一般社団法人SORA小さな命を救う会(以下、SORA)。2023年春、同団体に一件の連絡が入りました。

岐阜県の収容施設の職員さんからのもので、地元で多頭飼育崩壊によって複数のワンコが収容されたとのこと。これを受けたSORAのスタッフはすぐにその施設に急行。ワンコの引き出しを行うことにしました。

威嚇の合間に、ときおり悲しそうな表情も見せた

当初聞いていた通り、岐阜県の収容施設には複数のワンコが収容されていましたが、そのうちの1頭で、真っ白の毛並みが特徴のワンコ、みたらしくんを保護することにしました。

保護当初のみたらしくんは、ケージの中からスタッフをかなり警戒している様子でした。歯を剥きながら「ガルガルガルッ」と強く威嚇してきます。一方、威嚇する合間に、ときおり悲しそうな表情をみせ、ひどくおびえる様子もうかがえました。

岐阜県の収容施設の職員さんによれば、施設に収容した際もみたらしくんは同様の様子を見せていたと言います。しかし、職員さんがみたらしくんに日々声がけをし、優しく接すると、職員さんに対しては心を開くようになり威嚇する素振りを見せなくなったそうです。

これらのことから、本来のみたらしくんはいたって温厚で人懐っこい性格なのに、恐怖から威嚇しているのではないかとスタッフは思いました。

多頭飼育現場の劣悪な環境を想像させる、体中の疾患

スタッフがみたらしくんを引き出し、車に乗せて名古屋まで帰ろうとすると、みたらしくんはお腹を下していました。収容施設で過ごした仲間のワンコたちと離れてしまった不安からなのか、知らない人に連れていかれることが不安だったのか、相変わらずみたらしくんの緊張は解けない様子です。

そんなみたらしくんにスタッフは「大丈夫だよー。怖くないよー」と優しく声をかけながら、まずは動物病院に連れていき、健康診断を行うことにしました。

まずスタッフが気になっていたのがみたらしくんのひどい皮膚病。そして、足が脱臼しており、不安定にしか歩けないこと。さらに、事前に聞いていた頻尿気味の症状と、前述の下し気味のお腹の様子。

適切なケアをされていなかった多頭飼育現場の劣悪な環境を想像させましたが、スタッフはまず動物病院でみたらしくんに適切な処置を施してもらうことにし、特にお腹の面では点滴もお願いすることにしました。

点滴でも体調が改善しないみたらしくん

しかし、みたらしくんのお腹は改善せず、そして食欲のない状態が続きました。「このまま良くなることはない」と判断したスタッフは、再び動物病院にみたらしくんを連れていき再検査をお願いすることにしました。

動物病院では、長期的なことを考えれば総合的な検査が必要と言われましたが、しかし保護されて間もないみたらしくんです。できるだけストレスを抱えないよう、まずは基礎体力をつけることを最優先とし、食事をしっかり摂れるようスタッフがまずお世話をし、時期を見て再び総合的な検査を実施することにしました。

やがて、人間を信じてくれるように

当初こそスタッフに対し、歯を剥いて威嚇していたみたらしくんですが、こういったやり取りの中で、スタッフや獣医さんたちからの「みたらしくんを攻撃するわけではない」「むしろ、みたらしくんに健康になってほしいのだ」といった思いが伝わったのか、次第に表情が柔らかくなっていきました。極度に怖がったり、逃げようとする素振りを見せなくなり、治療している間にはベロを出して応じるお利口さんぶりを見せてくれました。

スタッフはこんなことを語ってくれました。

「みたらしくんが抱えた心をの傷を計り知ることはできません。しかし、私たちが保護した以上、精一杯のケアをしたっぷりの愛情をかけて、みたらしくんが1日も早く健康を取り戻し、心を開いてくれることを願っています。そのための努力は惜しみません」

また、スタッフや獣医さんのケアのほか、みたらしくんのような病気を抱えた保護犬の治療に欠かすことができないのが全国の支援者からのサポートです。スタッフは最後にこうも語ってくれました。

「どんなに少額でも良いです。多くの方からのサポートによって、救われる命があります。どうか皆さまにご支援いただき、1頭でも多くの命を救い、幸せな犬生へと繋いでいきたいと思っています」

一般社団法人SORA小さな命を救う会
https://sora-chiisana.org/

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース