5月2日に東京ドームであったプロ野球・巨人ヤクルト戦で、「ホームランボールを少年から奪い取った」として、観客の男性がSNSで誹謗中傷を浴びている。これを受け、男性の代理人弁護士が同8日に声明を発表。「決して少年のキャッチしたボールを奪い取ったという事実はありません」として、著しい中傷の投稿などに対して法的措置を検討していることを明らかにした。弁護士は取材に対し「座席から身を乗り出してボールを取っていることなどへの批判はもっともだと思うが、かと言って過度な中傷やプライバシー侵害は許されるものではない」としている。
場面は6回表ノーアウト、ヤクルトの攻撃中。山田哲人選手が放った打球が、ヤクルト側のレフトスタンド最前列に飛び込んでいった。動画で確認できる限りでは、ホームランボールを取ろうとしたのは、メガネの男性と野球帽を被った少年の2人。最終的にボールを手にしたのは男性だった。
この動画がSNSで拡散し「子どもからボールを奪った」「もぎ取っている」と、男性を批判する投稿やコメントが相次いだ。男性のツイッターアカウントだけでなく、本名や顔写真、居住地や親族を特定した投稿もあった。
代理人弁護士の中川素充氏は「動画をコマ送りで見てもらえれば、男性がボールを奪ったわけではないことは分かってもらえると思う」とする。座席から身を乗り出してボールを追うマナー違反に対する批判については「それはもっともだと思うし、行動として良くなかった。(男性が)ボールに目が釘付けになってしまっていた」としつつ「だからといって、男性の住所や甥っ子の写真までSNSに投稿するような重大なプライバシー侵害はあってはならない。それは、ホームランボールを子どもに渡してあげるべきだといった行動の是非に関する議論とは別の問題」とする。
中川氏の声明は以下の通り。「実際のところ、『もっちー』氏(※編集部注…当該男性を指す)がホームランボールを手でキャッチしようとしたところ、同氏の手にあたりボールがバウンドし、手すりに当たり、さらにバウンドしたところを最終的に『もっちー』氏がキャッチしたのです」「決して『もっちー』氏が少年のキャッチしたボールを奪い取ったという事実はありません」とする。また、誹謗中傷やプライバシー侵害が著しい投稿については保存活動などを行っているとし「法的措置を検討しています」とも言及している。
ツイッターでは、「俺なら子供に渡す」「いずれにしても大人げない」「自分の席を離れるルール違反してまで取りに行くのは批判されても仕方ないと感じた」といった声が引き続きあった一方、「誹謗中傷はダメだと思いますしプライバシーを晒すのも犯罪」「(ネットの中傷は)ちょっとやり過ぎ感は確かにある」「ファンの方も童心に帰って野球を見ているわけでホームランボールも欲しいですよね…親としては譲ってくれたら嬉しいけど、強制は出来ないなと」と理解を示す意見もあった。