コンビニオーナーに向いている人と不向きな人 肝は「人事さい配」 他店と差をつけるのは従業員の力

松田 義人 松田 義人

暮らしに欠かすことができないコンビニですが、そのほとんどがフランチャイズ経営による運営です。コンビニチェーンに加盟さえすれば、誰でも儲かるわけではなく、独特の経営メソッドのうち、絶対に避けて通れない「人事さい配」もまた、その勝敗を分ける肝のようです。

コンビニフランチャイズオーナーを目指す人向けの本があります。『儲かるコンビニフランチャイズの教科書』(長瀬環・著、自由国民社)という本で、コンビニならではのメソッドが中心でありつつ、一般ビジネスシーンにも役に立つ術がたっぷり掲載されています。

「慎重」「従順」「柔軟」「人徳」

本書では、コンビニのフランチャイズにおける経営者として「向いている人」「向いていない人」を、明確に分けています。 

向いている人は、必ず儲かるビジネスは存在しないと知っている人
向いていない人は、加盟すれば儲かると勘違いしている人

向いている人は、マニュアルがあることに安心感を覚える人
向いていない人は、マニュアルに従うのが嫌いな人

向いている人は、キャリアをスライドさせられる人
向いていない人は、全く畑違いのビジネスでやろうとする人

向いている人は、歳下の経営相談員をさん付けで呼ぶ人
向いていない人は、歳下だからといって呼び捨てにする人

向いている人は、面倒見の良い学校の先生のような人
向いていない人は、縦割りの指示で従業員をコントロールしようとする人

コンビニのフランチャイズのための経営者「向き」「不向き」を紹介したものですが、言い換えれば「コンビニは手堅く稼げる」という幻想を持たない慎重さを大前提にしつつ、マニュアルに従順でそれまでのキャリアを柔軟に応用できる人が向いており、なおかつ礼儀正しく、大半がアルバイトで構成されるスタッフの面倒もよく見てあげられる経営者がベターということです。

コンビニチェーンの知名度の高さを笠を着て、マニュアルに従わず、悪い意味で楽観的で、視野が狭く想像力がない経営者は向いていないということです。

これは、コンビニ経営に限らず、一般ビジネスシーンでチームの上に立つ人間の「向き」「不向き」にもそのまま当てはまるように思えました。特に新たな商材、情報を次々と扱う業態においては、判断すべき点の一つのように感じます。

「人」の教育こそ最優先

本書はさらに深く、スタッフ採用のメソッドや評価の仕方などについて以下のように紹介しています。特に強く感じられたことは「人(スタッフ)」の雇用を軽んじるなということです。

■応募が来たら2日以内に面接、その場で採用。次の出勤日もすぐ決める
■経験者を採用する時こそ教育が必要
■作業割り当てが離職率を低減させる
■評価の仕組みはゲームのルール。絶対に、あったほうがいい
■商品力に差がなければ、競合と差をつけるには「人」しかない

一見、画一されたサービスを提供するコンビニなので、悪く言えばスタッフは「駒」にすぎないのかと思うところもありました。しかし、本書ではこの通り「競合と差をつけるには『人』しかない」と言い切っています。

コンビニだけでなく、様々な分野で省人力化、リモート化が進み、「人の顔」が見えにくくなっている今だからこそ、「対面で商品を販売する」であるコンビニをはじめとした業態では、「人の顔」こそが、競合他社との差別化になると言い換えることもできそうです。

著者は以下のようにも綴っています。

その店の客層に合った商品の品揃えをし、選びやすいように陳列を行い、にこやかな接客でお客様を送り出す。それは必ず「人」が行っています。その「人」を教育することこそが経営者の最もやらなければいけない仕事です。店長教育で会社側が用意するべきなのは、従業員教育に必要な時間を確保することです。

運営改善のヒント満載

本書では、著者が社内で具体的にどのような評価を行っているのかを一覧にした「評価シート例」も掲載。例えば、基本的な挨拶の仕方から発注の仕方、売り場管理までどういった行動がスコア獲得につながるのかなどを、点数方式にして分かりやすくリスト化しています。ここまでに紹介した人事さい配メソッドに加え、実用性にも富んだ一冊にまとまっています。

「コンビニなどの店舗ビジネスのフランチャイズにおいて、何をすべきかということがフランチャイズオーナーの視点から、具体的に書かれた一冊です。そもそもフランチャイズビジネスとは何なのかということから、本部の従業員との関係の作り方、従業員教育の仕方など、店舗ビジネスにおいての理解が必要不可欠なことを現場視点で紹介しながら、さらにすぐに運営を改善できるヒントも満載の一冊に仕上がっています」(担当編集者)

本書はあくまでもコンビニのコンビニフランチャイズ経営におけるメソッドを紹介したものですが、群雄割拠のビジネスシーンを勝ち抜くためのメソッドとして活用できる内容が満載です。特に人事さい配面で悩みを抱える方は手にとってみてはいかがでしょうか。

 

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