「売り物にならない」とブリーダー ぬいぐるみのような犬に判明した心臓の病気 600グラムの体で手術に耐えた

松田 義人 松田 義人

2023年初め、ブリーダーのもとで生まれたかわいい子犬がいました。まるでぬいぐるみのようにかわいいワンコですが、後に心臓病を患っていることがわかり、ブリーダーは「この子は売り物にならない」と判断しました。結果ペットショップに渡さず、3月にとある動物保護団体に引き渡しました。この話を知った福岡県の動物保護チーム「わんにゃんレスキューはぴねす」(以下、はぴねす)がこの子犬の保護を引き受け、スタッフは懸命に生きようとする小さな命のサポートに立ち上がりました。

体が大きい先住犬にも臆せず

子犬の名はこつぶ。2023年1月生まれのメスで、4月時点で生後3カ月になります。ポメラニアンとマルチーズのミックス犬です。まだまだ小さい体で、しかも心臓病の持病があるということで、はぴねすの預かりスタッフさんは細心の注意を払いながら、連れ帰りました。

当のこつぶちゃんは、小さい体にして元気ハツラツ。預かりスタッフさんの家でも部屋の中を駆けまわり、これだけを見れば「心臓病を患っている」とは思えないほどだったといいます。

気が強い性格なのか、預かりスタッフさんの家にいる自分より体が大きい先住犬たちに吠えるしぐさを見せ、あるワンコの鼻部の頭をかみついたりする始末です。

「元気なのはいいけど、仲良くしてね」と優しくこつぶちゃんに語りかける預かりスタッフさんでしたが、やはり気になるのは心臓病の件。北九州にワンコの心臓病に詳しい専門医がいるそうで、そこの動物病院に診察してもらうことにしました。

ペットショップで命を落とした可能性も

検査後に告げられた病名は「動脈管開存症(どうみゃくかんかいぞんしょう)」。さらに獣医師は「肺高血圧症の合併症状も現れている」と言いました。

動脈管開存症は犬でよく見られる先天性の心疾患です。全身に循環する血液の流れに異常が起き、進行すれば死に至ります。本来ならば生後3カ月ほどになるまで待ち、体力がついてから手術を行うのが理想ですが、こつぶちゃんの場合はかなり病気が進行しており、今すぐに手術を受けなければ危険な状態でした。もし、この病気に気づかれずに売られていたら死んでいたかもしれません。「早い時期に保護することができて本当に良かった」と預かりスタッフさんは思いました。

わずか600gの体重で大手術に挑んだこつぶちゃん

2023年4月3日。こつぶちゃんの手術が行われ、無事に終えることができました。この手術のときのこつぶちゃんの体重はわずか600g。その小さな体で手術に耐え抜いたこつぶちゃんはやはり「強い子」でした。

ただし、術後も経過観察のために数日間を酸素室で過ごすことになりました。術後のこつぶちゃんは弱った体力と痛みのせいか、グッタリとした様子でしたが、獣医師さんによれば、後に元気を取り戻すとのことで、預かりスタッフさんは胸をなで下ろしました。こつぶちゃんにその気持ちが伝わったのか、入院中の面会時にスタッフさんが声をかけると、「心配しなくて大丈夫。私なら元気だよ」と言わんばかりに立ち上がり尻尾をふって見せてくれました。

獣医師さんによれば、退院後は約1カ月間投薬治療を行うことになり、経過が良ければこのまま投薬を減らしていけるとのことでした。

退院後、再び預かりスタッフさんの家に戻ったこつぶちゃんは、大手術をした後とは思えないほど、室内を走り回りました。預かりスタッフさんはヒヤヒヤし、またこつぶちゃん特有の向こう見ずな性格から、けがなどをしないかと全く目が離すことができませんでした。

健康になって、縁を掴んで幸せになって

こつぶちゃんの病気は完治したわけではないため、まだ里親募集をかけられる状態ではありません。また、健康になっても適切な人なれトレーニングも必要といいます。

こつぶちゃんのこれまでの元気っぷりと、少々強めの性格からすると、きっとこの病気にも打ち勝ってくれることでしょう。そして、預かりスタッフさんは「こつぶちゃんが健康になったら、縁をしっかり掴んで幸せな犬生を歩んでいってほしい」と願っています。

 わんにゃんレスキュー はぴねす
https://ameblo.jp/happines-rescue/

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